二次創作小説(紙ほか)

I‘m not crying anymore(その1) ( No.397 )
日時: 2025/02/15 17:27
名前: 桜 (ID: Hyf7mfn5)

今回はバレンタイン2025から繋がる、サンソン君メインのちょっとしたサプライズ的なお話です。ずっとお話にしたかったのがやっとできました・・・






「はぁ・・・はぁ・・・」


拝啓、いつかの君へ。


ギィ・・・


君は今、何を思って過ごしていますか?


「ああ、安らかにお眠り下さい。もしあなたが許さないのであれば、僕のーーーーー」






I‘m not crying anymore

I‘m not crying anymore(その2) ( No.398 )
日時: 2025/02/15 17:29
名前: 桜 (ID: Hyf7mfn5)

以蔵の誕生日パーティがそろそろ終わりへ向かう頃、ランはこんなことを聞いていた。


ラン「そういえば、他のサーヴァントのみなさんは誕生日は存在しますか?」
騎士王「え?」


ランの悪意なき質問にサーヴァント達は時に悩みつつもそれぞれの答えを出してくれた。


トリスタン「我らブリテンが繁栄したのは6世紀なのであまり・・・」
うしお「私達が生きた頃は数え年だったので誕生日は存在していませんね」
モードレッド「オレはあったような気がするが忘れたな。多分原典見ればわかるんじゃねーのか?」
斎藤「僕達が生きた頃はちゃんと誕生日は存在してるよ?ほら、あの浮かれ気味の岡田君と同時代で生きてるんで」
以蔵「あ゛ぁん!!?」


サンソンはランからの質問に悩みながら答えた。


サンソン「僕達が生きた頃は誕生日はあるけど古い故に本当かどうかわからない記述があるからね。ちゃんと復元すればあるはずだけど」
ラン「そうなんですか!それならドラリーニョ達に頼んでそれを復元してもらうというのは?」
サンソン「うーん。考えておくよ」


サンソンは微笑っているが、アルルと話している最中の花の魔導師は何か疑問を持ったような表情で見ていた・・・


カレン「・・・」
アルル「カレン、どうしたの?」
カレン「いや、なんでもないわよ」


その数十分後、以蔵の誕生日パーティがようやくお開きになってから率先して後片付けをしている最中のサンソンは何かの足音に気付いた。


サンソン「キミは、カレン嬢・・・」
カレン「レディって呼んでちょうだい!そんなことより」


カレンはサンソンに先程の出来事について話した。


カレン「あなたでも嘘をつくのね」
サンソン「なんのことかな?」
カレン「だって、あなたは自分の誕生日をどこかに置いてきているような感じがしたんだもの」


カレンに矛盾を指摘されたサンソンは少し言葉を黙った後、静かに呟く。


サンソン「そうだよ。座の僕が有することではないけど、この世界に召喚された僕は何かが原因で自分の誕生日を忘れてしまっている。誰も知らないし、読もうとしてもぼかされるから全くわからない。万一に思い出そうとしても、その方法がないんだ」
カレン「・・・」


サンソンの言葉を聞いたカレンは彼の手を握る。


カレン「花の魔導師である私が思い出させられるとしたら?」
サンソン「えっ!?でも、キミは魔導師でも人間だ!」
カレン「こう見えても他の魔法を使えないわけじゃないからね。ただこの魔法は一か八かの確率で成功するのかということなんだけどね・・・試しとしてやる他はないと思うわ。ここであなたが望まないなら、今すぐこの手を離すわ」


カレンのまっすぐな瞳を見たサンソンは折れたと言っているかのようにため息を吐いた。


サンソン「いいだろう。できるならだけど」
カレン「じゃあ、決まりね。ほら、行くわよ」


カレンはその魔法に関する詠唱を唱えた後、呪文を唱えた!






カレン「花よ、澄み渡る空よ。その身に刻め、黒に塗り潰された記録を白に変えろ。舞え」


パァァァァァ・・・






サンソンは気付けば、中世時代におけるフランス・パリにいた。そう、この場所は・・・


サンソン(ああ・・・やはり、ここは生前のパリか・・・)


向こうから罵倒と泣き声が聞こえてきた。その内容は・・・


子供「人を殺してる死神と友達だなんて死んでもごめんなんだよ!」


処刑人「良いか?私達がやっているのは決して人殺しではない。国民の安寧のために必要なんだ」


サンソン「・・・」


幸いにも自分の姿は見えてないのでサンソンはしばらく歩くことにした。気付けば、何かの催しで民衆の一人として立っていた。


民衆A「おー、頑張れよ若いの」
民衆B「緊張すんなよー」
サンソン(あの時は言われなくとも。だけど・・・)


またしばらく歩いたら、何かのパレードがあった。他国からやってきたお姫様の結婚式だ。


お姫様「ご機嫌よう!」
サンソン(あの時のキミも麗しい。そちらからは見えないのが残念だが)


患者「ありがとうございます、おかげで治りました」
サンソン(医者としては感謝されている。これはこれで良かったはずだ)


またしばらく歩くと、サンソンはようやく何かを見つけた!


フランス国王「どうだ?そなたが、罪人には苦しみを与えぬよう余が考案したものなのだがーーーーー」






サンソン(陛下。貴方が後に僕のために自ら考案してくれたギロチンにより処刑されるなんて皮肉なものだ・・・)






サンソンは自嘲するが、後の首飾り事件をきっかけに起きたフランス革命による激動の時を巡ることになった。


サンソン(今度はあの革命か)


これまでの王政に激怒した多くの民衆で構成された市民軍がバスチーユ監獄を占領。


市民軍「俺達は自由だ!もう貴族や教会の言いなりにはならないぞ!」
サンソン(やめろ)


パリ市民の女性達が武器を手にヴェルサイユ宮殿へ行進した「ヴェルサイユ行進事件」。
それに由来される、あのお姫様が言ったとでっち上げられた言葉。


お姫様?「パンがなければおやつを食べればいいのに」
サンソン(やめろ)


囚われた国王一家、国外に逃亡を図るもヴァレンヌで捕まったことにより決定的になったフランス中からの憎悪。


革命軍の中心人物「我らは今まで散々苦しめてくれた王政を、全て廃止することが決定した!」
サンソン(やめろ!)






国王ではなくなった陛下の処刑、そして後の処刑台に立ったのは処刑人であった役人の足を踏んだことで上品に謝ってくれた、髪を短く切られた、あのーーーーー


足を踏んでしまった女性「ごめんなさい。わざとじゃありませんのよ」






サンソン(やめろ!お願いだからもうやめてくれ!!)


カツーンーーーーー・・・

I‘m not crying anymore(その3) ( No.399 )
日時: 2025/02/15 17:31
名前: 桜 (ID: Hyf7mfn5)

サンソンは気付けば、教会らしき場所にいた。


サンソン(ここは・・・)


彼は横を見たら、青年が祈る姿を発見した。よく見たらあの時に髪を短く切られていたお姫様を処刑した役人。彼の手には白百合を持っていた。


サンソン(何を・・・)


ああ陛下、安らかにお眠り下さい。私には何もいりません。もしもあなたが少しでも私を許さないのであれば、






私が生まれた日を、これからを受け継ぐ人々からも忘れるようにして下さい。






サンソン(ああ、そうか。あの時に僕は陛下へのミサで祈ってしまったんだ)


サンソンは自分の目の前にいる「彼」は座の本体ではないとしても、それが通じてしまったのかここにいる自分は自分の誕生日を忘れてしまった。
このまま気付かないフリをしていても、自分を平等に扱ってくれたマスターのエージェントや仲間達はそんなことでは揺らがない。


サンソン(ーーーーーだけど、それではダメだ。陛下だけでなくエージェント様の気持ちや、今までずっと一緒に戦ってくれた仲間達の気持ちを無駄にすることになる・・・)


サンソンは気付けば、歩き出した。「彼」ーーーーー泣いている自分に向かって。


サンソン「ダメだ。それでは陛下も悲しむだろう」


・・・なぜそう言えるのだ。そんな確証はどこにもないというのに。


サンソン「いや、あるんだ。ここになくともちゃんとある」


ならば、はっきり答えてみろ。なぜそれを言えるのかを!


サンソン「・・・それは陛下を始めとした人達の気持ちを無駄にするから」


・・・?


サンソン「僕はキミと違ってサーヴァントだ。だからというわけじゃないけど・・・僕はあの世界に召喚されてから、僕のマスターは一度も偏見を抱かなかったんだ。ドジでヘタレですぐ無茶するけど、それでも彼との日々は毎日が騒がしくて賑やかで、優しくて楽しくて・・・それはマスターだけじゃない、彼の仲間達からも僕を知った上でちゃんと受け入れてくれた。自分達だって怖かったはずなのに僕の痛みにも寄り添ってくれたんだ。陛下だって、僕に偏見を抱かなかった。彼女でさえも・・・」


・・・それは感じていいものなのかい?僕が処刑した人達のことを考えると、ささやかでも幸せを感じられるものではないだろう。


サンソン「はっきりと上手く言えないが・・・それでいい」






サンソン「いなくていい人などいないから、僕もあの中にいたいだけだ」






涙ながらに笑顔を見せたサンソンからの言葉を聞いた時、「彼」は僅かながら微笑んでいた・・・

I‘m not crying anymore(その4) ( No.400 )
日時: 2025/02/15 17:33
名前: 桜 (ID: Hyf7mfn5)

サンソン「ーーーーーあぁ」


そして我に返ったサンソンはようやく思い出した。時計の針には15日に回っている0時・・・!






サンソン「思い出した。今日は僕の誕生日だ」






それを聞いたカレンは彼をまっすぐに見ながら言う。


カレン「・・・そう。誕生日おめでとう、サンソン」
サンソン「・・・!あ、ありがとう」


すると、今日がサンソンの誕生日だと知った以蔵達が駆け寄ってきた!


以蔵「おいサンソン!翌日にはおまんの誕生日なら早う言え!何もないが、せめてもの料理作っちゃる。おめでとやき!」
モードレッド「お前への誕生日プレゼントを買うのを忘れたじゃねーか!だけど・・・おめでとう」
トリスタン「サンソン殿、お誕生日おめでとうございます。貴方がサーヴァントの身であっても、これからの日々に祝福を」
サンソン「みんな・・・ありがとう」


その直後、サンソンの頭をポンと撫でてくれた人物がいた!それは自分が一番信頼するマスターである、イギリスの諜報部員・・・!






エージェント「サンソン!お誕生日おめでとう」






サンソン「ありがとう、ございます・・・」


拝啓、いつかの僕へ。


君は今も、ずっと泣いていますか?


少なくともこの僕は、






I‘m not crying anymore(今はもう泣いていません).






Happy Birthday CharlesーHenri Sanson!






おめでとう。感想OK