二次創作小説(紙ほか)

第十三話『ポケモン密猟団』 ( No.13 )
日時: 2023/09/02 13:57
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 side―なし―

 

 これはトウヤ達がトキワシティを旅立つ先日の事…。

 辺りはもう闇に染まっており、周囲の野生のポケモン達はすでに寝静まっていた。

 その人里から離れた荒れ地に一機の飛行艇が停泊していた。

 飛行船の中にある一つの薄暗い部屋で数十人もの人達があるポケモンが映し出された巨大スクリーンを見て、そのポケモンを捕獲する為の作戦会議を行っていた。

 

 「姉御、どうやってゲットするつもりなんですか…、この妙な技を使うポケモンを…。俺たちゃ~この道十年ですが、こんな技を使うポケモン始めて見ましたぜ…」

 

 スキンヘッドの筋肉質な大男―ゲイルがリーダーである顔に傷を負った女性に問い始めていく。

 

 「何言ってんだい、あんたは…。―だからこそじゃないか! 今ここであのポケモンをゲットする事でアタイら―ポケモン密猟団『ファンタシア』の名を上げる絶好のチャンスじゃないかい…。そう、このポケモンを奪う事でアタイ達の名は売れるよ…確実に」

 

 姉御と呼ばれる密猟団の頭領―カレンはスクリーンに映る青い炎を操るポケモン―ヒトカゲの姿とそのヒトカゲを守るかのように立ちはだかる少年―アオの姿を視界に捉え、不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

 「さぁて、そろそろ頂こうかねぇ~坊や。そのあんたの大切にしている青い炎を吐く珍しいヒトカゲをね…」

 

 side―トウヤ―

 

 僕達はゲンスイさんとの三日間の厳しい修行を終え、次なる目的地であるニビシティに向かう為に二番道路を進んでいた。

 その初めて経験した別れに段々心が寂しさを感じるようになり、その気持ちを紛らわすかのように歩幅を伸ばし、歩く速度を上げていく。

 

 「トウヤ、ちょっと歩くスピード速くないかな。もう少し、ゆっくり歩いたら…昨日までずっと修行だったんだし…ね?」

 

 メイが僕に歩幅を合わせて、追いついて来ると僕の顔を横から心配そうな表情で覗き込みんでくる。

 その表情から彼女が僕の事を気遣ってくれているのが理解できた。

 

 「そうね…、メイの言うとうりよトウヤ。急いだって疲れるだけだから、少しは歩くペースを遅くした方がいいと思うよ」

 

 僕達の背後を歩くリーフにもまた気遣うような言い方をされる。

 

 「うん、わかった…」

 

 そんな二人の言葉に頷き、肯定すると歩くスピードを次第に緩めていく。

 そうだ、メイ達の言うとうりだ。それに…旅をしていれば別れなんて沢山あるんだから、その時で一々落ち込んでたら、メイ達やポケモン達にまで笑われちゃうしね…。

 気持ちを改めると心に余裕が生まれていき、何だか軽くなっていった。

 

 「ねぇ、トウヤ…リーフ。あれって…飛行船だよね…」

 「そうだね。本物なんて生まれて初めて見たよ」

 「私も…。でも、何だか飛行船の他にもピジョットが居るけど…」

 

 メイが上空を見上げ、飛行船を見つけると人差し指で示しながら教えてくれる。

 僕達はそのメイの行動に促され、初めて見る飛行船に感激するもリーフが何か見つけたのか、今度は彼女が人差し指で知らせてくれた。

 その示された方向には大空を舞うピジョット。

 ピジョットのその上には誰か乗っているのか人らしき物が見える。

 だが、遠い為に顔は良く見えないが…、その体の細さから女の子だと断定出来た。

 そのピジョットの周囲には五匹のオニドリルが取り囲むかのように飛んでいてピジョットに次々と攻撃していく。

 ピジョットはその攻撃をかわしていくも、その表情には疲れの色が感じられる。

 

 「トウヤ、どうしよう。あのピジョット襲われているよ」

 「あぁ…、何とかしないと。でも、僕達鳥ポケモン持ってないし…」

 「ねぇ、トウヤ。あそこを飛んでいるピジョンをゲットしたら…」

 

 一瞬悩んでしまうも、リーフに促され視線を別の上空に投げるとそこには優雅にフライトを楽しんでいる一匹のピジョンの姿が…。

 

 「良し、わかったよリーフ。realize、ピカチュウ…あのピジョンに向かって電気ショック!」

 「ピィ~カチュ―!」

 

 眩い光がピカチュウの両頬から迸り、ピジョンに大きなダメージを与えていく。

 

 「ピピカ、ピカーチュ!」

 「あぁ…わかってる。行け、モンスターボール!」

 

 ピカチュウに「早く」と急かされ、モンスターボールをリュックか取り出すとピジョン目掛けて思いっきり投げて、ゲットしていった。

 

 「あのピジョットを助けてくれ、ピジョン!」

 「ピジョ―!」

 

 そのモンスターボールを手にすると早速空中に投げて、ピジョンを出し頼んでいく。

 

 「ピッカ」

 

 すると、僕の足元に居たピカチュウも軽々とした足取りでピジョンの背中の上へと移動し、強い意志を宿した瞳で見つめてくる。

 僕はそのピカチュウの言いたい事を理解して、

 

 「わかった、ピカチュウも行ってくれるんだな」

 「ピッカチュウ!」

 

 その事を言葉にするとピカチュウが頷いてくれた。

 

 「待ってトウヤ。私のミニリュウも行かせるわ…」

 「私のニドランも…。だって、困ってるポケモンを見捨てられないから!」

 「二人共…」

 

 リーフとメイもまたポケモン達を出していく。

 そして、ミニリュウ達もまたピジョンの背中へと飛び乗っていき、三匹の乗せたピジョンはピジョットの元へと風を切りながら向かって行った。

 僕達の思いを乗せて…。

 

 ―to be continued―