第9話そして、声をワントーン下げた後、「お前さん、行くあてないんだろ?良かったらうちで働かないか?」想像もしない言葉だった。学校もろくに行っていない僕が、誰かのもとで働くなんて。驚きすぎて答えが出せないでいると、中年親父は持っているカバンから何かを取りだし、僕の手に握らせてきた。「それは駄賃だ。とっておきなさい」