二次創作小説(紙ほか)

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イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 
日時: 2018/02/28 02:57
名前: 風龍神奈 (ID: Fv2OCy5P)

 
 ※完結していませんが、設定が大幅に変わってしまったので新たに書き直したいと思います。
 リメイク後はおそらく映像版ですると思います。
 このスレはロック致します、今まで有難うございました。

 
 初めましての方も久しぶりの方もこんにちは。
 風龍神奈です。


 この物語はイナズマイレブンGOクロノストーン及びGO2ネップウ/ライメイを元にした、二次創作となっています。
 オリジナルのストーリーで展開していきます。
 主人公はオリキャラとイナクロのキャラ、フェイ・ルーンの二人です。
 

 注意事項†
・現在受験のため更新はほぼできません。一区切りがつけばおそらくできると思います。
・先述した通り、オリキャラが登場します。また、一部のキャラは出てこない事が多いのでご了承ください。
・オリジナルストーリーで、世界観もおそらく少し違うと思います。
・投稿初期と今とではかなり設定が食い違っている所が多々あります。修正できる所はしていきたいですが、できない所もありますので生暖かい目で見て下さい。
・荒らし、中傷コメントはお止めください。


 
 物語を読み進めていくとわかりますが、途中の章からサッカーの描写がなくなっていきます。イナクロの中心なので、消してしまうと成り立たなくなってしまうのですが、構想上サッカーを入れることは出来ませんでした(また、その際に敵チームをそれぞれで考えなければならないこともありました)。
 途中であとがきにもなくなることは書いていますので、どうかご了承下さると幸いです。
 

 以上の事で、駄目そうなものがありましたら、ブラウザバックを推奨します。
 大丈夫な方は、先にお進み下さい。


 


 〜キャラ紹介〜

 月城 癒月(つきしろ ゆづき)絵 >>105(ただ過去ログに落ちてる為見れないです…)
年齢 12
容姿 肩甲骨くらいまでの長さの綺麗な金髪に、碧眼(青色の目)。 容姿端麗。誰もが認める美人
性格 マイペース 優しい 快活。いざっていう時はやる。一人で抱え込む癖がある。
設定 太陽の双子の妹で、未来人。産まれてすぐに月城家に養子に出され、未来で育てられた。成績優秀、文武両道。魔法は得意。他にも色々使える。氷の継承者。元SSC。
 
 フェイ・ルーン
 炎の継承者。魔法も使える。癒月と同じく抱え込む癖がある。元SSC。

 
 〜〜設定〜〜
・氷炎使いはいつの世にも2人存在する。
・氷炎使いの役目は、破壊死書の守護。
・破壊死書はある組織に追われているため、守らればならない。

 

 †目次† 
第01話 序章〜プロローグ〜 >>2
【第1章 ナイトメア編】
第02話 雷門vsテンマーズ >>3-8
第03話 氷炎使いの存在と攫われた氷と炎の継承者
    >>18-19 >>26 >>33-35 >>40
第04話 クロノストームvsEDSC連合(メンバー)>>53 >>47 >>54 >>56 >>60-61
第05話 合宿 >>62 >>64-65 >>68-69
第06話 魔物との戦い >>70-72
第07話 クロノストームVSナイトメア【前編】 >>74-77 (メンバー)>>73 
第08話 クロノストームVSナイトメア【後編】 >>78-86
【第2章 模造人間(クローン)編】
第09話 新たな勢力の登場 >>88-91
第10話 洸、焔との関係 >>92-95
第11話 攫われた癒月と霧野 >>96-99
第12話 偽癒月の正体 >>100-103
第13話 禁忌の蘇生術 >>106-110
第14話 クロノストームVSクロノストーム >>111-118
【第3章 サクリファイス編】
第15話 意味 >>121-123
第16話 対峙 >>124-126
第17話 師トノ再会 >>127-128
第18話 生ト死ノ狭間 >>129-134
第19話 サクリファイスと呼ばれるモノ >>141-145
あとがき >>146
【第4章 二つの組織編】
第20話 彼ノ目的ト消エタ仲間 >>151-156
第21話 マルサグーロとマルペメーソ >>159-164

【第5章 封印編】
 ?  >>147
第22話 氷炎使いガ生マレタワケ>>165-167
第23話 破壊死書トハ >>169-170
第24話 封印 >>171 >>173-174




 *     *     *




 ◆お客様◇
・モンブラン博士さん
・Dr.クロさん
・時橋翔也さん
・シエルさん
・紅月琉緋さん


 オリキャラを応募して下さった方々
・モンブラン博士さん >>10 追記>>16 >>42 追記>>49
・Dr.クロさん >>15 >>27 >>50
・(我が友)時橋翔也さん >>31 海音の絵>>38 >>44 レインの原型>>43


初投稿2013年5月

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.166 )
日時: 2017/12/08 03:04
名前: 風龍神奈  (ID: DWz/vbtf)

「「!!?」」
 フェイと雨宮が同時に驚く。
 一方、破壊死書も此方を睨んで来た。
「貴様…」
「はいはい。今回は君等3人に話があったから、此処に来てもらったの。…さ、座りなさい。大丈夫、毒とか薬物は入っていないから」
 神楽が一人用の椅子に腰掛け、右手にフェイと雨宮、左手に破壊死書が座った。
「…一体、何の話をするの?」
「そりゃあ、勿論———氷炎使いが生まれた理由よ」
「「「!!?」」」
 神楽の言葉に、皆が瞠目する。
「なっ…!! 氷炎使いが、生まれた理由だって…!?」
「そうよ。そもそも、氷炎使いは破壊死書が発見された事によって始まった役目。だから、理由があるのよ。…そして今から話すのは、その事についてよ…」
 神楽の語りが始まった。
 事の始まりは今から1000年前、一つの探検隊が、神秘の力に満ちた森の奥深く、洞窟の中でとあるモノを見つけた事から始まった———。
 それは、この世界の秩序ともいえるモノで、善と悪、正と邪を両方持っており、万能の存在であった。そんなモノを見つけたとあっては、持ち帰るだろう。無論、その探検隊も、それを持ち帰ろうと思い、手を伸ばした。
 が、それは様々な現象を起こし、自らを持ち帰らせないようにした。だが、それに屈服する事なく、ある一人の男がそれを手にした。途端、それは大人しくなり、手の平に収まるぐらいの大きさになる。奇跡だ、とその男は言った。これは、何でも叶えられるんだ、と言うと、嬉しそうに男はそれを持った手を握った。
 だが、それから5年後。その男はそれの暴走に巻き込まれて死亡し、それだけが残った。その探検隊に所属していた一人の男が、それを受け取った。しかし、その暴走を恐れたその男は、身分を隠して、噂で聞いた事のあるとある二人を訪ねた。君達にこれを受け取って守ってほしい、だがこれを狙う輩がいるので注意してほしい、と男が言うと、その二人は気になったのか受け取った。そして、受け取ったモノがあれだと分かった時には、その男は消えていた。
 その二人は、悩んだ。これを元の場所に返すかどうかで。だが、話し合いをしている時に闖入者が現れ、危うく彼女の命が失われる寸前だった。撃退出来たものの、また襲ってくると考えた二人は、遠い地へ向かう事を決め、それに話した。すると、それは———二人によって破壊死書と名づけられたモノは、突然喋りだし、二人に力を与えた。それが——炎の力と氷の力である。それぞれ受け取った二人は、自らを、炎と氷の力を操りし者として、氷炎使いと名乗るようになった。
「——ここまでが、氷炎使いが誕生した理由よ」
「「「………」」」
 フェイと雨宮は瞠目し、破壊死書はただ眉を顰(ひそ)めただけだった。
「…だが、まだ続きがあるんだよな。我を完全な存在から半分消えた存在にした理由が」
 が、彼女がそう言った。
「そうね。でも、貴方は知っているから別にいいでしょ? 私が貴方を狙いにやってきた者共に殺され、トレイターが貴方を使って私を復活させた事は。…おかげで、今のあいつは全然…良く無いわ…」
「…確かに知っているから構わないが…。それと、我の所為じゃないぞ、あやつがああなったのは」
 神楽は破壊死書の言葉を聞いて、答える。
「貴方を使ったからあいつはああなったのよ? 死者を復活させる為に貴方を使うと、災いが降りかかると言われていたのにも関わらず」
「それをいうなら我だって被害者だ。奴の所為で、我は不完全な存在になったのだから」
「不完全な存在で、人を喰らってる時点でそういえないわよ」
「——貴様、それ以上ぬかすと殺すぞ」
 神楽の物言いに切れたのか、破壊死書が殺気を放つ。
「ッ」
 殺気に慣れていない雨宮の体が震える。
 彼を支えながら、フェイは行く末を見ていた。
「…ッ、何故だ…」
 破壊死書が空気中の水分を集めて、氷破刃を作り出そうとする。が、集まらない。—否、魔力が使えないのだ。
「ああ、悪かったわね。貴方の能力なら、暫く使えないようにしてるわよ」

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.167 )
日時: 2014/11/02 23:04
名前: 風龍神奈  (ID: bxOWKuH4)

「何だと…!? どういう事だ、それは!!」
 彼女が立ち上がる。
「言う通りよ。必要があったから、貴方の能力を封じただけ。分かる?」
「分かるも何も、そんな事をするなど…!! やはり人間は信頼に値しない存在だな!!」
 そう言うと、破壊死書は踵を返した。
「あらあら…あんなに怒って…」
「…あんな事言われたら、誰でもああなると思うけど?」
 ずっと口を噤んでいたフェイが、訊く。
「私はならないわ。それに、破壊死書を怒らせて部屋から出させるのは計画通りだから」
 神楽が、そう言って立ち上がる。
「…これで話は終わり。帰りなさい」
 彼女が踵を返す。
 残された二人は、暫くの間、その部屋に残っていた。
「…フェイ、どうする…?」
「どうするって、何を」
 不意に問うた雨宮の真意が分からず、フェイはそう聞き返す。
「破壊死書だよ。だって、破壊死書の体は癒月の何だろ? 取り戻さないといけないんだろ?」
「…そうだけど。でも、完全に破壊死書は癒月の体に根付いているんだ。簡単に引き剥がす事は出来ない。それに、無理矢理引き剥がしたとしても、後遺症が残ってしまうんだ。だから、今はまだ引き剥がせない」
 彼の言葉に、雨宮は俯くしかなかった。
 その様子がいたたまれなくなったのか、フェイが嘆息してこっそりと雨宮に耳打ちした。
「——あのね、太陽。実は———」
「——ッ!?」
 彼から聞かされた事に驚愕した彼は、フェイを見つめた。
「本当、なのか?」
「…うん。君、何だよ」
「…そうか…」
 雨宮は自分の両手を見つめる。
「この僕が……」

「——貴様等、帰ったんじゃなかったのか」

「「!?」」
 唐突に響いた声に、二人はその方向を見た。
 そこには、出て行った筈の破壊死書が立っていた。

 

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【受験の為不定期更新】 ( No.168 )
日時: 2014/12/04 23:36
名前: 風龍神奈 (ID: n1ZeCGPc)


 おはこんにちばんわです。
 また一カ月以上更新してませんね…すみません。
 話は書いているのですが…受験勉強頼まれたイラスト年賀状et((殴
 といういいわけは置いといて。
 去年の今頃に年内完結させるとかほざいてて結局完結させる事が出来ず、今年の1月に完結させるといってまた出来ず、そしてずるずるとまた一年以上も引っ張ってしまいました…。
 今受験勉強まっただ中でパソ没収されているので…(このコメントはリビングのパソからしてるのですがデスクトップなのでしにくくて…)、なかなか更新することが出来ないです、すみません…。
 
 でも更新頑張ります。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【受験の為不定期更新】 ( No.169 )
日時: 2019/12/03 23:34
名前: 風龍神奈@紅葉@Twitter (ID: p0V5n12H)

 第23話 破壊死書トハ

「何故、貴様等が此処にいる? 帰ったのではなかったのか」
 破壊死書が此方を睨む。
「…君に話があって、いたんだよ。…その前に、君は怒って外に出て行ったのにもう帰ってきたけど、何かあったの?」
 フェイの言葉に、苛立ちを彼女は覚えたようだが、魔法が使えないので舌打ちをしながら言った。
「…貴様に言う様な事ではない」
「そっか。ならいいや」
 あっさりとそう言ったフェイに若干眉をひそめつつ、彼女は雨宮へと視線を向けた。
「…して、何故そいつは共にいる? ただの、人間なのに」
「君が奪っている体の持ち主の双子の兄だっていうのに、それはないよね? 彼が、ただの人間なわけないでしょ?」
「なっ」「えっ」
 フェイの言葉に、破壊死書と雨宮が同時に驚く。
「…フェ、フェイ、どういう事だ…?」
 彼の言葉に困惑した雨宮が訊く。
「さっきいったじゃないか、君にしか出来ない事を。その時点で、君はただの力を持たない人間じゃなくなったんだよ」
 言って、破壊死書を見る。
「——そろそろ本題に入ろうか。僕が君に聞きたい事。何故君は生まれたのか、何故癒月を呑み込もうとするのか、——そして、何故君は大晦日まで待ったのかだ」
「……いいだろう。話してやる」
 そう言って破壊死書は椅子に腰掛けると、静かに自分の事について話し始めた。

 破壊死書が生まれたのは、この世界が生まれてすぐだった。
 この世界にまだ何もなかった頃、この世界の神が何かある事を望み、作られたのが破壊死書だった。
 実は、破壊死書は最初、生命を作るためのものとして、神に作られたのだ。
 そして、作られ生まれた破壊死書は、生命を作り、この世界を命ある世界にした。
 やがて、生命が自ら増えていくようになったのを見届けた破壊死書は、生命の繁殖に任せ、自身は神に作られたもうた完全な存在として、眠りにつく事にしたのだ。いつか自らの力が悪用された時が来たらこの世界は崩壊してしまう、神から与えられた使命を果たせなくなってしまう、だから破壊死書は誰も知らない深い深い森の奥、そこにある洞窟で眠りについたのだ。その森を神秘の力で満たし、自分の姿を隠すようにして。
 だが、生命を見守り始めてから数百年後。一つの人間が構成した探検隊と呼ばれる部隊に、神秘の力に満ちた深い深い森の奥の洞窟で、見つかったのだ。
 破壊死書は眠りから目を覚まし、様々な魔法を繰り出して人間達を追い返そうとした。だが、それに屈する事なく自身を手に入れた男がいた。その男に捕まった時、破壊死書は己の失態を呪った。すると、破壊死書は小さくなり、手の平に収まる程のサイズになった。その時に破壊死書は気付いたのだ。自分はもう、人間から逃れられないのだと。もう、今までのようには出来ないのだと。神から与えられた使命を果たせないのだと。
 だから、破壊死書は様々なものを呼び出し自身を手に入れた男を暴走に巻き込んで死なせた。それで返されるかと思ったが、返される事なく別の男の手に渡った。しかし、その男は暴走を恐れ、風の噂で聞いた事のあるとある二人を訪ね、その二人に破壊死書を預けた。その二人に渡った時、いままで感じていたのとは違うものを感じた破壊死書は、二人を観察することにする。
 二人が破壊死書だと気付いた時にはもうその男はなく、どうしようかと思案している二人の許に闖入者が現れる。危うく彼女を殺されそうになるが何とか撃退した二人をみて、破壊死書は安心していた。そして、二人はまた狙われるのを防ぐためか、遠い地へ向かうという事を破壊死書に話し、また、名前を破壊死書にした事も言った。元から生命のすべての言葉を理解していた破壊死書は、その二人に話しかけた。驚く二人に、名の代わりにととある二つの力をそれぞれに授けた。その、破壊死書が授けたのが炎と氷の力である。
 そして、炎と氷を操りし者——氷炎使いと名乗るようになった二人の、氷を受け継いだ者の首に、ペンダントとしている事になったのである。
「…以上が、我が生まれた理由と力を与えた理由だ」
 息をついた破壊死書がお茶を飲み干す。
 それを机に置くと「…次はこいつを呑み込む理由だったな」と言い、話し始めた。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【受験の為不定期更新】 ( No.170 )
日時: 2015/02/16 23:04
名前: 風龍神奈@紅葉@Twitter (ID: 3NsP64Ez)

「我がこいつを呑み込もうとするのは単純明快、我を呼び出したのに呑み込まれないからだ。代々の氷炎使い氷の継承者は我を呼び出す権限を持つ。だが、その代わり我は初代氷炎使いにより不完全な存在になったから使命を果たせなくなったから、呼び出した者は喰らわなければならないというのを言っていた。だから、呼び出す事は少ないと思っていたんだが…結局、11代目氷炎使いまでもが、我を呼び出してしまった。
 代々の氷の継承者は呼び出して目的を達成した後我に喰われて魂だけが残った。その魂を炎の継承者はそれぞれの聖域に連れて行った。今でも一部の炎の継承者は聖域の番をせずに様々な事をしているのは知っている。
 …話がそれたが、こいつを呑み込めば、我は完全な存在になれるのだ。今まで氷の継承者を食っていったが、漸くこいつで元の完全な存在に戻れるからだ。我がこいつを呑み込もうとするのは、それが理由だ」
 話し終えた破壊死書の話を聞いて、フェイと雨宮は瞠目していた。
 癒月を呑み込んだら完全な存在へと戻れるから呑み込む、だと?
 そんな事をさせて、たまるものか。
「…話は大体分かった。でも、まだなんで大晦日なのかっていうのは言われてないけど…予想するに、大晦日の日が一番力があるって事かな?」
 フェイが訊く。
「まぁ大体そうだな。大晦日は一年の一番最後。生と死を持つ我にとっては最も力が発揮される日なのだよ。…まぁ、今までずっと力をためていたから、やっと発揮出来るのだがな」
 そう答え、違う方向を見ると、破壊死書は呟いた。
「…やっと…我は元に戻れるのだ…使命を果たせるのだ…」
「…もし、仮に君が癒月を呑み込んだとして…彼女が消えたら、彼女の存在はどうなるんだ?」
 思案しているフェイの横で、雨宮が訊いた。
「…前にも言ったと思うが。魂だけが残り、その魂も聖域へ連れていかれるから、こいつが存在していたというのは人々の記憶に残らないだろうな。代々の氷炎使い氷の継承者も、皆記憶から忘れ去られている。ただし、相方である炎の継承者以外が忘れているのだがな。炎の継承者は聖域をまもる役目も持っているから、氷の継承者の事は皆覚えているのだよ」
 そう言った破壊死書に、雨宮は驚きを隠せなかった。
 炎の継承者以外の皆が忘れるというなら、自分も癒月を…大事な妹を忘れるというのか。
「…ただ、ほんの時々、忘れていない者もいるらしいがな。身内だった者とかでな」
 雨宮の胸中に気付いたのか、彼女が言う。
「…ッ」
 その言葉を聞いて、少し安堵しつつも、やはり彼女を失うという事が理解出来ない。
「………」
 俯いた雨宮の思いに気付きながらも、フェイはまだ思案していた。
「——そろそろ、夜が明けるな。…3日後が、大晦日だ」
 部屋の上に取り付けられた唯一の窓をみながら、破壊死書は言った。
 みただけではあまりわからないものの、群青色が少しずつ薄くなっているのが分かる。
「…3日後。それまでに…」
 何やらぼそぼそと言っていたフェイは、急に立ち上がると「…大晦日までに、癒月を救い出してみせるから」と言って部屋を出て行く。
 彼の行動に瞠目していた雨宮は、置いて行かれた事に気付いて慌ててついていこうとする。
「…待て」
 が、破壊死書にそう言われ、肩ごしに振り返った。
「…何だい?」
「…我は何とかして、この身にかけられている術を解く。…行動を起こすのは、それが終わってからだ」
 その言葉だけで何かを察した雨宮は、一瞬彼女と視線を合わせると、そのままフェイを追いかけていった。
「あいつがそこまで馬鹿ではない事を祈りたいが…まぁ我と目線を合わせたという事は理解したととってもいいだろう…。…こいつの兄ならば、分かるはずだ」
 そう呟いた破壊死書は、静かに目を閉じると、意識を闇の中に落としていった。


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