二次創作小説(紙ほか)
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- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー
- 日時: 2013/12/27 17:06
- 名前: 牙鬼 悠登 (ID: 3UNlfhyM)
こんにちは、牙鬼です。前回の「とある」に引き続き、今回は誰でしょう?そして、智志たちの運命は?
RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー
ー4、戦と勇者(いくさとゆうしゃ)ー
虹色の光が周りを照らしている。なんて幻想的なんだ。俺たちー海原智志とハル、真斗
と麗さんは、次の異世界へと今向かっていたところだった。
「それにしても、こんな綺麗なところ通って異世界に行くのか。なんかもうちょっとこの
景色楽しみたくなるなぁ」
「真斗、私たちは異世界を守るためにここを通っているのであり、そんなのん気なこと行
っている場合じゃあないのよ」
まあ、麗さんの言うことは確かにそうだが、真斗の気持ちも分からなくない。なんせ、
この通路は無重力になっていて、俺たちの体は流されるように進んでいるんだ。こんな宇
宙飛行士にのみにしか与えられてなかった特権は、確かに楽しんでいたいものだ。
「智志、出口が見えてきたよ」
「あ、あぁ。あれが次の異世界か・・・」
俺は我に返ったように前を向き、次の異世界のことを考え始めた。
俺たちは、ある日にあの男ーハデスの襲撃を受け、俺はその時に左腕をやられた。その
後気がつくと、俺たちは何故か「学園都市」にいて、そこで再びハデスの襲撃を受けたの
だ。だがその時、俺たちは何者かにもらった武器でハデスに対抗、更にそれぞれ「幻想殺
し」、「禁書目録」、「超電磁砲」、「一方通行」の力を手に入れた。その中でも「幻想
殺し」はその世界の「主人公(コア・ヒューマン)」の力らしく、俺たちは、これ同様の
の「主人公」の力をあと残り5つ集め、ハデスを止めるべくこうして旅を始めているわけ
なのだ。
「よっと」
俺たちは異世界をつなげる通路を出て地面に降りたってあたりを見渡してみると・・・
「って、なにこれ・・・」
そこにあった景色は「学園都市」とはまるで違い、俺たちを驚かせた。
あたりは森に覆われていて自然いっぱいの広々した世界なんだか、問題は島が空中に浮
いていることと、空の色が青紫色であることだった。
「なんか・・・、随分とファンタジーっぽい世界ね・・・」
「そ、そうだね・・・」
俺たちは、その光景に絶句してしまった。しかし、その空気を取り去ったのは、真斗の
疲れたような一言だった。
「と、とりあえずもう日が暮れるし、家でも探してそこで寝ようよ」
「「「さ、さんせ〜い・・・」」」
そうだった。俺たちが『学園都市』でハデスと戦ってから既に1時間は経過しているだ
ろう。体に疲れがどっとあふれてきた。そんな体で俺たちは休む場所を探し始めることに
した。
休む場所を探してもう何時間かは歩いているようだが、4人はまだ休む場所は見つけれ
ないでいた。深い広葉樹の林の中、空はもう暗くなってきていて、多分今頃はいつもなら
晩御飯を食べている時間だろう。
「お、お腹がすいてもう歩けない〜」
そう呟きながら真斗は地面に横になってしまった。
「頑張ってよ、その内ばったり誰かに会うかもしれないんだし」
「でも姉貴だって、俺が見るにウエストも2ミリほど凹んでいるところからして、もう疲
れが限界に来ているんじゃないの?」
「真斗・・・、後で覚えておきなさい・・・」
そう言いながら、殴る力も残っていない麗さんは杖を付きながらまた歩き始めた。
すると、智志の鼻がかすかに動いた。
「これは、和食独特のだしの匂い!」
それを聞き、4人は一斉に走った。誰かがご飯を作っているのは間違いなく、少しでも
分けてもらおうとして匂いのする方に走って行った。
突然4人の周りは広葉樹林から竹林になり、しっかりと人の通った道もあった。
「やったぁ!誰かが住んでいる家にたどり着ける!」
智志はそう歓喜しながら道に沿って家を探していると、ついに民家にたどり着いた。藁
の屋根に障子といった、まるで江戸時代にあった和風建築のような家で、窓からは白い煙
が上がっていた。どうやら先ほどの匂いはこの家から来ていたようだ。
「あ・・・」
「よかったぁ〜・・・」
4人は安心したのか、その場に疲れて倒れてしまった。その音を聞いてなのか、ふと家
の中から割烹着を着た灰色の髪をした女の人が出てきた。
「えっ、大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
女の人はすぐに4人の方に駆け寄って行き、顔色を確認し始めた。
「どうしたのだ?」
するとまた1人女の人が家から出てきた。見た目は長身で、白い和服姿と茶色い髪とい
った人で、すぐさま割烹着の女の人の方に歩いて行った。
「あ、お館様。どうやら行き倒れのようです」
「では早く中に入れて、休ませるとしよう。すぐに布団の用意を」
「はい」
そう言い、2人は智志たちを担いで、中に入っていった。
「・・・ん?」
俺は気がつくと地面がふかふかしているのに気づき、目を開けた。体を起こすと、どう
やらあの和風建築の中らしく、下には布団が敷かれていた。右の方を見るとハル、真斗、
麗さんが、同じように布団を敷かれてその上で寝ていた。
「あ・・・、俺たちそういやあ、疲れて家の前で倒れて・・・」
そう半開きの目でつぶやいていると、突然後ろの障子が開いた。
「おお、気がついたようだなぁ」
「でござるぅ」
声のした方を向くと、そこにいたのは長身で茶髪の和服姿の女の人と、俺ぐらいの背丈
金髪の朝顔柄の服をした女の人だった。
「あ、こんにちは・・・」
俺は少し寝ぼけながら挨拶をして、自分のさっきまでいた布団を片付けようとすると、
ようやく目が冴え、あることに気がついた。
「・・・へ?」
もう一度彼女らに目を向けて確信した。
なんと2人の頭には動物の様な耳がはえていて、腰からは尻尾まで出ていたのだ。
「は、はあ!?」
「? どうしてのでござるか」
「あ、あのう、その尻尾と耳は・・・?」
そう聞いても、女の人は首をかしげるだけだった。そんなところで、ハルたちが目を覚
ました。
「ん・・・ここは・・・?」
「ああ、この人たちが助けてくれたんだ」
「え・・・、あ・・・あれ?」
どうやらハルも彼女たちについているソレに気がついたようで、何がなんだか分からな
いような顔をしていた。
「「・・・・・・」」
麗さんたちも何がなんだか分からないらしい・・・。一体この世界はどうなっているん
だ!?
- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.1 )
- 日時: 2013/12/27 18:18
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
場所変わって畳で4人と2人はただ今食事中。とはいうものの、4人は目の前の光景に
目がいっているようで、ご飯の味をわからないまま食べている。
(やっぱりあれって・・・、コスプレとかに使う『ケモ耳』っていうのだよな・・・)
とご飯をただ今3杯目の智志。
(この人たち・・・、あんなもの付けていて恥ずかしくないのかな?)
と箸を開いたり閉じたりしている晴香。
(昨夜の島といい、空といい、今度は耳と尻尾!?なんなのこの世界・・・)
と手を動かさない麗さん。
それを見て、茶髪の女の人が不思議そうな顔をした。
「君たち、どうしたでござるか?」
「あ、いえ。なんでもないです」
「?」
そう晴香が答えると、もう1人の金髪の子は箸を一度置いた。
「そういえば、名を聞いておらんかったでござるな。拙者は『隠密隊』筆頭、ユキカゼ・
パネトーネ。で、こちらは我ら『隠密隊』頭領、ブリオッシュ・ダルキアンでござる」
「へえ。あ、俺は海原智志。で、こっちが旭泉春香に、あちらが西園寺麗さんとその弟の
真斗」
「「こ、こんにちは・・・」」
「おおお!?」
突然また真斗が何かに気づいたように2人の顔を見て、改まったように礼をした。
「先日は、ありがとうございます」
「あ、どういたしまして」
いきなり礼をされたので、2人はキョトンとしてしまった。
「おい、真斗なんか分かったのか?」
そう智志が小声で聞いてみると、真斗はにやりとしながら智志の方を向いた。
「ああ。サト兄、この世界はね」
その時、外からパンパンッと花火の音が聞こえた。
「「「「!?」」」」
その音を聞き、ダルキアンとユキカゼは何かを思い出したように顔を見合わせた。。
「では拙者らも準備を始めないとな」
「でござるぅ」
そう言うと、二人は食器を揃えるとお膳を片付け始めた。それを見て、真斗は急いでお
膳の食事を食べ終えると、ダルキアン卿同用にお膳を運んでいった。
「あの、戦に行くんですんよね?」
「「「!?」」」
「あぁ。そうだが、それがどうしたんでござる?」
「戦」と聞き、智志たちは心臓が跳ね上がった。
戦といえば国同士でその命を、プライドを賭けて戦うことであり最悪死ぬかもしれない
もののはずなのだが、それは俺たちのこの旅もそうだが、怖いのは当たり前である。
「ダルキアンさん!戦ってほんとなんですか!?」
「あぁ、そうだが・・・」
智志たちが慌てていると、それを見た真斗はみんなの心理を悟った。
「大丈夫だって、サト兄。だったらサト兄たちも参戦しようよ」
「「「はぁっ!!?」」」
突然の問題発言に智志たちは目を丸くした。
(い、戦に参戦!?)
(な、なんで戦に!?真斗くんは何を考えているの!?)
智志、晴香、麗さんの額に、冷や汗が垂れた。
みんなが食事を終え、ダルキアン卿とユキカゼ、それに戦に行く気満々の真斗は、それ
ぞれ外出の準備をはじめていた。問題はその横でポツーンと立っている深海2万マイルよ
り深い青に顔を染めている3人だ。
「あぁ、もういいや・・・、死んだらあのバカ弟を、呪い殺せばいいか・・・」
と怒りと後悔で頭いっぱいの麗さん。
「そうですね・・・。全部あいつのせいにして、一生あいつを恨みましょうか」
と俺。
「2人とも、なんか怖いですよ・・・」
と晴香は先程から溜息が出っぱなしである。
そう話していても、これからなにが起きるのか分からない3人の心配は膨れ上がってい
き、その心の落ち着きなさは言い出しっぺの真斗に向けられていった。
「行くよサト兄、ハル姉、姉貴」
そんな浮かれている真斗の口調に更に智志と麗さんの沸点が・・・ブチ切れた。
「「あんたなぁ!何浮かれてんだゴルァ!!」」
「ええっ!?」
いきなりの怒号に真斗は首をかしげていた。
「さあ、出発するでござる。目的地は今回の戦場、グランド・プライリエ!」
「「おぉー!」」
「「「おぉ・・・」」」
2種類の喚起の声がかかり、「行ってらっしゃいませ〜」という言葉を後に6人は門を
出ていった。
1時間後、着いたのは広い平原につながるところにある小高い丘に出来ている木製の小
城であった。所々にピンク色の旗が風に揺られていて、どうやらこの国の旗らしい。
「なんか、もう戦う気満々そうなんだけど・・・、」
俺は、目の前の光景がありえなかった。兵士はみんなこれから戦だというのに笑ってい
たり、「今回は我々ビスコッティが勝つぞー!」とイベントっぽく楽しそうにしていて、
もう智志の理解力が追いつけなくなった。
「おぉ、ここにおったでござるか」
そう声をかけてきたのは、どうやら俺を探していたようなダルキアン卿と真斗だった。
「そなたも戦はどうやら初めてだと聞いた。これからが楽しみでござるよ」
「ほらサト兄、そんな顔してないでさ。もう少し気合出してよ。サト兄の剣の腕の見せ所
なんだし」
それを聞き、俺はお気楽そうな真斗の服のえりを掴んだ。
「お前なあ、これから起きるのは戦なんだぞ!国同士が互いの存亡をかけ、争い、どちら
かが倒れるまでやる恐ろしいものだぞ!もしかしたら俺やハル、麗さんだけじゃなく兵士
が死ぬかもしんないったいうのに、」
そんな智志の怒りに満ちた言葉に、真斗は「あ、そっか」と声を上げ、突然その姿を俺
の前から消した。
「なっ!?テレポート!?」
急いで真斗の姿を探すと、なんと真斗は小城の上に付いていた旗の先に足だけで立って
いた。その手にはあの銀色の銃が握られていて、どうやら昨日手に入れた力を使ったのだ
ろう。
「ごめんごめん、言い忘れていたよ。この世界の戦では、誰も『死なない』んだよ」
「へ・・・、はぁ!?」
突然の衝撃的発言に俺がびっくりしていると、真斗は掛け声1つかけて旗から飛び降り
ると、智志とダルキアン卿のに着地した。
「この世界の土地には、『フロニャ力』という特別な力が流れていて、その加護のおかげ
で強い衝撃を受けても血一滴すら出ないんだ。つまり、死なないってこと」
「へぇ」
「それに、衝撃をうけると加護を受けている人は『獣玉』という姿になり、それで自分の
身をそのあとも守れるんでござるよ」
そうダルキアン卿は付け足し、智志は全てを理解した。
「まあ、サト兄はいつもの剣道の試合と思ってぶつかっていけばいいんだよ」
真斗のその言葉で、俺の迷いは吹っ切れた。俺は、敵が死ぬことを考えずに剣道の試合
として戦えばいいんだ・・・。
「おう。そう聞いたら戦う気になったぜ!」
- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.2 )
- 日時: 2013/12/27 18:47
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
3カ国主催、3カ国同時戦が始まり、既に5分が過ぎた。上空には、水晶のようなもの
が浮かび、実況放送が流れていた。
『さあ、現在時点で戦況は驚くべき進展に入っています!ビスコッティ陣営の先頭が猛ス
ピードで進んでいます!』
それもそのはず。その先頭というのは智志と麗さんのことで、2人していきなり猛ダッ
シュしているからである。
「智志君!それってホントなのね?」
「はい。真斗のことですから、嘘ではないと思います」
俺たちは草原を走りながら話して前を向くと、敵国ー猫耳を生やしているガレットの兵
士3人が活性とともに飛びかかってきた。全員揃いも揃って剣や槍をもって、2人に刃を
向けていた。
「あら、無駄よ・・・」
バキッ!
そんな見くびっている麗さんの言葉と金属独特の破壊音とともに、彼らの武器は使い物
にならなくなり、戦士は吹っ飛ばされた。
「へっ!?」
ふと智志は麗さんの姿に気づいた。その姿は見覚えがあった。昨日ハデスと戦った時、
麗さんの姿は今と同じ白黒の縞模様の服を着て、左手には松葉杖をした銀髪姿であった。
この姿こそ、麗さんの1つ目の力、『一方通行』の力だ。真斗が言うにはこの力はあら
ゆるベクトルを操る力らしく、この力が働いている間は様々な攻撃を跳ね返したり、自分
の攻撃を何倍にすることもできるらしい。
「意外と突っ込んできたようね。でも・・・」
麗さんはそう言いながら3人にケリを1発入れると、彼らの体は宙にまい「ポンッ!」
という音と一緒に姿は丸っこい体に長く細いしっぽがついた丸い猫のようなものに変わっ
てしまった。見るからに・・・なんか女子が見たら「ぬいぐるみみた〜い」と言いながら
抱きついていくのだろう。
「やっぱり少し手応えないわね」
「そ、そんなことより行きますよ、麗さん!」
「そうね!」
そう言い放つと麗さんは走り出した。だが問題はそのありえないスピードだ。駆け出し
たと思うと、前方からもう戦闘している音が聞こえてきたのだ。
「スゲェ。しかしいいなあ、麗さんたちだけ今回はあの力使えるなんて、不平等だよ」
俺も手にはあの青く輝く剣ー『青龍』が存在していて、俺も昨日手にした『幻想殺し』
を使いたいんだが、真斗が言うには、この力は空気に触れただけで力を発揮して異能の力
をすべて消してしまう、つまり、フロニャ力も例外でないかもしれないということだ。
もしその力をここで使ってみんなの加護が消えてしまえば、死人が出るかもしれない。
ということで、俺はそんなことで力を使わず戦っているのだが、このままでも案外行けて
しまうかもしれない。
敵の動きは全て直線的で素人のような振り方をしている。だから俺には簡単に防ぐこと
ができてしまった。1人は剣を体を動かしかわし、その背に剣を叩き込んだ。2人目は槍
だったので先端を落とし、驚いているところに突きを一発。3人目はつばせり合いになった
が相手の剣を弾き、その空いていた胴に横凪に一発入れた。全員は先程の兵士と同じよう
に猫獣玉になり、救助を待つことにしていた。
「意外と多いな・・・」
俺が呟きたくなるのも仕方がない。なんせ俺たちが進む方向にはガレット本陣があり、
前からは続々と本陣からガレット軍が来ていて、きりがないのだ。
だが突然一筋の風が吹き、一気にガレット軍は猫獣玉の山に化した。
「意外と簡単にかたが付いちゃうかもね」
「ハハハ・・・」
さっきの爆風は麗さんのフットストンプ1発によるものらしく、あたりは地面に地割れ
が入っていた。智志は乾いた笑い声を出すしかなく、ここは麗さんに任せても良かったか
もしれないとさえ思った。
『さあ、こちらではパスティヤージュの空騎士とビスコッティ軍が火花を散らしておりま
す!』
パスティヤージュはブランシールという大型鳥に乗り、そこから遠距離武器で相手を倒
す空中戦法を得意としており、現在は少しビスコッティ軍が押されていたところだ。
その様子を小城から真斗と晴香は敵の情報と上空の水晶から智志たちの戦闘を見つめて
いた。
「いやぁ、サト兄も姉貴もどんどん進んでいってるねぇ」
「だったら私たちも早く参戦して、ビスコッティのポイント増やしたほうがいいんじゃな
いの?」
「そうだな。でもさぁハル姉、本当はサト兄とガレット側に出陣したかったんじゃないの
かい?」
「そ、それはじゃんけんで決まったんだから・・・仕方ないんだよ!」
真斗に内心を勘ぐられ、晴香は顔を赤らめながら言い訳を始めた。
「んじゃ長話はここら辺で閉じて、いっちょ行きますか!」
「長話は真斗のせいじゃないの!」
そう話しながら2人は急いで走って行き、前線に突入した。
「で、あの鳥たちをどうやって落として行くの?」
そう聞こうと春香が振り向くと、真斗の姿はなかった。
「あ、あれ?」
すると上空からサッカーボールほどのものが晴香の前に落ちてきた。それはリスの獣玉
で、額には銃で撃たれたのか、薄く煙が上がっていた。
「こいつ借りていきますね〜」
上空から真斗の声がしたのでふと晴香が上を見ると、なんと真斗はブランシールの上に
乗ってパスティヤージュの空騎士たちの方に向かっていたのである。どうやら、テレポー
トで空の上まで行き、空騎士の1人を得意の銃撃でぶっ飛ばした後、乗っていたブランシ
ールを1匹のっとたようだ。
「全員、攻撃変更!前方400メートル、放て!」
それに気づいた空騎士たちは真斗に狙いを一気に変更し集中砲火を試みたが、全て真斗
の巧みな手綱さばきと素早いステップでかわされてしまった。
「伊達に武道マスターの姉貴がいるわけじゃねえぜ!喰らいな!」
真斗は銃口を彼らに向けると、引き金を引きまくった。放たれた風の弾丸は全て空騎士
を確実に狙い打ち、一気にほとんど獣玉になった空騎士たちは下へと落ちていった。
「なんか・・・、すごい光景になっている・・・」
晴香は目の前にある獣玉の山に口をぽかぁんと開けていた。
「わ、私は、何をすればいいのかなぁ・・・」
そう考えながら、晴香はその場で数秒立ち止まっていると、救助班が目の前を横切った
ので、その手伝いをすることにした。彼女が出来そうだと感じたのがそれだけだったから
だ。
「へえ、あいつらやるじゃん」
「そうだねえ」
水晶の画面に映る流れる水のように兵を倒していく剣士と超速の武闘家の猛攻を見なが
ら、戦闘準備を終えたカチューシャをつけた黒髪の少女と銀髪に白い猫耳、そしてライオ
ンのようなしっぽをした少年は、心の中で闘争心を燃やしていた。
「しかし、あんな奴らビスコッティにいたか?まあ、戦ってから聞いてみることにしよう
ぜ」
「それがいいかもね」
そう言葉を交わしながら、2人はそれぞれ騎乗鳥であるセルクルに乗り込んで戦場に出
動した。
「あいつ・・・、一体何者なのじゃ?1人でうちの空騎士をほとんどやっつけるなんて・
・・」
水晶には、空騎士たちを一気に落としていく眼鏡の少年が映っていた。
「このままではうちらはポイントを稼げないで、一気に敗退コース行きじゃぞ・・・」
「そのよう、ですね・・・」
小さなリスのような耳と尻尾をした少女が心配そうに水晶を見ていると、その横にいる
先程の子より歳上なツインテールの少女は、これから始まる大接戦に悪寒を感じていた。
そんな彼女の顔が少し青くなっているのを見て、リスっ子の少女は慣れているように励ま
し始めた。
「大丈夫じゃって。これから痛い目にあうのは奴らのほうに決まっとるんじゃ」
「そ、そうですね」
気を取り直し、2人はそれぞれ出発の準備に取り掛かった。
「では行くぞ!」
「はいっ!」
「準備は済んだか、勇者?」
「うん、ばっちり」
緑色の垂れた耳をした少女に声をかけられると、白と赤がきわどっている服を着た金髪
の男の子はニッコリしながら目の前の戦場の状況を確認した。
「そろそろ、ガレットの方も動き出しそうだし、行こっか」
「ああ、だが足でまといにはなるなよ」
「りょーかい」
言葉を交わし終えると、2人はすぐそれぞれのセルクルに乗り込み、戦場へと駆け出し
ていった。
それはまるで、誰も抗えないスピードで進む一陣の風のように早く、勇ましかった。
- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.3 )
- 日時: 2013/12/27 18:51
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
「いやぁ、派手に戦ったねぇ」
ブランシールに乗りながら、真斗はのんきに眼鏡の掃除をしていた。綺麗に磨いたあと、
満足そうにレンズを覗いていると、レンズ越しに空から来る2つの人影に気づいた。
「どうしたの?」
「2人来る!」
真斗がそう叫んだ瞬間、晴香の頬をすり抜けて一陣の風が吹いた。
違った、それは不可視のエネルギー弾が過ぎ去ったのだ。
真斗はそれに気づき、すぐさま相棒の銃を手にすると、空から高らかな女の子の声がし
た。
1人はリス耳の女の子で、まるで「アラジンと魔法のランプ」に出てくる魔法の絨毯に
操縦かんを付けたような乗り物に乗っていた。
「うちと勇者が来たからには、横暴も終わらせてもらおうかのぅ!」
更なる攻撃によって、真斗が乗っていたブランシールは獣玉と化し、2人は絶好の的と
化してしまった。
「レベッカ!行くんじゃ!」
「はい!」
リス耳の少女が声をかけると、ツインテールの少女、レベッカ・アンダーソンはすぐさ
ま加速し距離を詰めると、右腰についたカードホルダーから、2枚カードを取り出した。
「バレットカード・・・、発射!」
投げられたカードは光とともに一直線に2人に近づき・・・、爆散した。
「「わぁ!?」」
「やったぁ!!」
「よしっ!」
『さすがパスティヤージュの勇者、レベッカ!お得意の晶術弾をご披露しています!』
レベッカは命中を確認し、体勢を直すと、煙が開いたところを見た。しかし、そこにい
たのは今の攻撃に目をパチクリさせながら腰を抜かしている晴香だけだった。
「あれっ!?」
「ありゃ?あの眼鏡のやつはどこに行ったのじゃ?」
「眼鏡のやつって、僕のこと?」
「そりゃあ、さっきうちの空騎士達を1人で落としきった・・・って!」
リス耳の女の子が振り向くと、そこには真斗がさっきからここにいたかの様に立ってい
た。
「こんにちは、クーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュ様。略してクー様」
「ななな、なぜここにおるのじゃ!?」
いきなり後ろに真斗がいたため、クーベルは少しパニックに陥っていた。
「いやあ、レベッカさんの炸裂弾にはやっぱ適わないか。ブランシールは戦闘不能になっ
ちゃったし」
「その前に、とっとと降りろー!」
クーベルが銃口を向けた途端、真斗の姿が消えた。
「なあ!?」
「クー様、驚きました?」
「「!?」」
2人がすぐさま声のした方に顔を向けると、なんと真斗はレベッカの箒に足だけで立っ
ていた。
「「ええぇええぇぇ!?」」
「そんなんじゃあ、僕には1発も当てられなですよぉ〜だ」
「ムカッ!何おおお!」
挑発に乗ったクーベルはすぐさま銃を取り出し、片手で引き金を引くが、真斗の姿はま
たどこかに消え、代わりにレベッカがその銃弾を受けることになった。
「ちょちょ、クー様!!」
「あぁ、ごめんレベッカ。それよりあやつは・・・」
「ここですよぉ」
「「!?」」
なんと今度は、2人の更に上空から真斗の声がしたのだ。思わず2人はそちらを向いて
しまい、防御をがら空きにしてしまった。
「では行きますか!1日1発だけの超すんげぇ技!」
そう言いながら、真斗は短パンから1枚の銀色に光る新品そうなゲーム用のコインを取
り出し、大空の彼方にはじいた。更にコインに弾いた手に電気が走り・・・、
「『超磁電砲(レールガン)』!!!」
真斗が叫んだ瞬間、コインは音速を超えた速さで直進的に発射された。そしてコインは
ちょうど重なった2人の間に吸い込まれていき・・・、さっきの炸裂弾よりも激しい爆発
が起きた。
真斗はテレポートを使い晴香の近くに着地した。晴香は今の攻撃に冷や汗が止まらない
でいた。
「あ、あれが・・・」
「そう。あれが御坂さんの超必殺技だよ。ただし50メートルが限界だけどね」
そう言いながら真斗が本陣に戻ろうとすると、空から声がした。
「まてぇい!!」
「?」
見ると、煙の中からクーベルと、その絨毯に乗ったレベッカが現れた。しかし、2人と
も「超磁電砲」をモロに食らっていて、クーベルは既に服がボロボロになっていた。
「まだまだうちらはこんなもんでは諦めないぞぉ!レベッカ!」
「メルクリウス、ウィッチカノンモード!」
レベッカの声に答えるかのように彼女の右手の指輪が光り、その光からショットガンの
ような銃が出現した。
「発射!」
すぐさまエネルギーが充填され、引き金が引かれると、巨大なエネルギー弾が勢いよく
発射された。
「まずい!」
真斗が防御の姿勢に入ったその時、横から炎の玉が出現してエネルギー弾を吹っ飛ばし
てしまった。
「「「!?」」」
3人が火の玉が飛んできた方向を向くと、視線の先で佇んでいたのは晴香であった。
「戦っているのはみんなだけじゃないのよ!私とこの『朱雀』の舞を見なさい!」
そう言い放つと、晴香は頭に流れる音色に合わせ、体をまるで風に揺し、かつ力強くた
つ木のように舞っていると、その双剣ー『朱雀』から巨大な炎が吹き荒れ始め、周りにい
る者全てに火の手が迫った。
それはまるで、火の鳥の羽のように華麗あり、力強かった。
「鳳凰火炎舞(ほうおうかえんのまい)!!!」
晴香が叫ぶと炎はさらに燃え広がり、舞が終わった瞬間に周りにいくつかの爆発を起こ
した。
「「「どわあぁぁあ!!!」」」
「あ・・・」
晴香は気づくのが遅かった。真斗たちは爆発に巻き込まれ、炎が止むと、そこには新た
な獣玉の山と、黒焦げになって髪がグシャグシャになった真斗たちがのこされた。
「ハ、ハル姉・・・、」
「やりすぎなのじゃあぁぁ〜・・・。」
真斗とクーベルが言い残すと、レベッカを含めた3人は地面に倒れてしまった。
それから3人が目を覚ましたのは、なんとこのあと3時間後のことであった。
一方、俺と麗さんは石橋に来ていて、既にガレット本陣が見えてきた。
「もう少しでつきますよ!」
「えぇ。こうなったからには、絶対に退却なんかしないわよ!」
俺たちが威勢良く突っ走っていると、突然目の前に3つの煙が上がった。
「「!?」」
煙が晴れると、そこにいたのは決まっているポーズを構えた3人の女子がいた。
1人は白いうさ耳の弓矢を持ったおっとりとした女子。
さらに1人は虎のような耳をした巨大なバトルアックスを持った陽気そうな子。
そして1人は無口そうな黒い猫耳をした短剣使いの子。
「さあさあ、永らくお待たせ、うちらの出番や!」
「戦無双のガレット獅子団、ガウル殿下直属親衛隊・・・、」
「誰が呼んだか名付けたか」
「「「我ら3人揃って『ジェノワーズ』!」」」
さらに追い打ちの花火が出たが、俺たちはそのどこかの特撮ヒーローのような登場方法
に開いた口が塞がらなくなった。
「そしてご存知我らが王子様、みんな読んでねー」
いきなり照明がかかり、そこに1人の影が写った。
「「「ガウル殿下!!!」」」
3人が呼んだ瞬間、さらにでかい花火が打ち上げられ、照明がついた。登場したのは白
い髪に猫というかライオンのような耳をした軽装備の少年だった。
『出たぁ!ガレット獅子団領王子、ガウル殿下ぁ!!!』
「よう、おめえらがうちの兵士どもをフルボッコにしたっていう新入り達か」
その言葉に我に戻った俺と麗さんは、すぐさま体勢を直すと戦闘の構えになった。
「そうだが、王子様ってことはあんたがどうやらボスってことか」
「そんなことはどうでもいい。俺様が時期時期に挨拶に来てやったんだぜ。とっととてめ
えらの力、見せてもらおうじゃねえか」
「あら、意外と殺る気のようね。でもあなたたち4人ぐらいなら、一気に」
「もう1人いるわよぉ!」
突然声がして、咄嗟に上を向くと、エメラルドグリーンと白が際立った姿をした黒髪の
女の子が棒を構えながら飛び出てきた。彼女は着地すると、棒を後ろに構えると決めポー
ズを決めた。
「勇者ナナミ、見参!」
「しまった!退路を断たれた!」
石橋はガレット本陣へと行き来する1本道のみ。その両側を塞がれたということは、逃
げることはでいなくなったと当然だった。
「智志君、そっちの黒髪の子は任せたわね。こっちは私が引き受けるから」
「了解」
智志が了解したのを聞き、俺と麗さんは一気にそれぞれの相手との間合いを詰めた。
- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.4 )
- 日時: 2013/12/27 18:57
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
「はあぁ!」
智志が剣を振ると、ナナミはひらりと交わした上に素早い棒での攻撃をしかけてきたの
で、智志はうっかり間合いを広げてしまった。ナナミはリーチの長い棒、一方智志は刃渡
り1メートルほどの剣のため、少々不利になってしまった。
すぐにナナミの連続突きがきたため、智志は全力で交わすしかできなかった。更に間合
いを広げた途端、智志は更に追い込まれてしまった。
「エクスマキナ、フォームチェンジ!ブーメランスラーシュ!」
突然棒がブーメランとなって向かってきたので、急いで智志は防御の姿勢になった。だ
が、流れる水のように突然ブーメランの軌道が変わり、ブーメランは智志の後ろから襲い
かかってきた。
「!?」
智志はすぐ右に倒れると、その頬にブーメランがかすった。
「痛ってぇ・・・。ん?」
智志がかすったところを触ると、手に少量だが血がついていた。
「やっべ・・・、俺たちには加護は効かないようだな」
「そこっ!」
俺の気が緩んでいる所に、ナナミさんは更に力を込めた突きを放った。
「あぶねっ!」
ナナミの攻撃をかわしたところで、智志は気付いた。
ナナミにはケモ耳がなかったのだ。
(この子はこの世界の人じゃないんのか!)
「ほらほら、全力で来ないと、私が押し切っちゃうわよぅ」
「そうだね」
「?」
智志の声はいつもより低く、響きやすい声に変わっていて、それは本気だということの
表れでもあった。
「そっちがここの人じゃないってことは、俺もこいつを使えるってことでいいよな!」
「!?」
俺の言葉に答えるように青龍の刀身が光りだし、龍の首を形作った。
「行くぜ!『幻想殺し』!!!」
「面白くなったわね!けど、こいつはどうかしらぁ!」
ナナミが両手に力を注ぐと、そこに水が出現した。更にナナミさんが手に力を込めると
水は砲撃のように噴射され、智志の足元を濡らした。
「これは!?」
智志が気を取られていると、ナナミは更に力を込め、その力を放出した。
「輝力集中、氷結!」
「!?」
ナナミがそう叫ぶと、一気に周りの水が凍り始め、俺の動きは封じられてしまった。
「しまった!」
俺が足の自由をとろうと必死にもがいている隙に、ナナミさんは更に力を込めると、そ
こに先程よりも大量の水が出現し・・・
「はああぁぁ・・・、一撃必殺!」
再び水の砲撃が発射され、俺を飲み込もうとした。しかし、俺は迷わず青龍を前に突き
出すと、刀身を覆う『幻想殺し』の具現化した光の龍はナナミの水の砲撃に真正面から噛
み付いた。
すると水にかかっていた輝力は失われ、水は地面に落ちて氷を濡らしてしまった。
「え・・・、うそ・・・」
今までこの力を使って幾度も勝利していたナナミだったが、それをこうも簡単に崩され
たのは初めてであった。
なんせ、輝力の力は当たれば普通なら1発で獣玉にするところを、いともたやすく消滅
させられてしまったのだから。
ナナミがあっけにとられていると、智志は青龍で足の氷を砕くと口を開いた。
「なるほどな。どうやら君たちの力はこの地のフロニャ力を吸収し、それを一気に放出し
て使うようだね」
「え、そうよ・・・。で、それがどうしたの?」
「それなら、俺はここで全力いくぞ!」
その瞬間、龍の首が消えた。
しかし一瞬の間の後、突然剣から膨大な青白い光が刀身を包み、ついには智志の身長の
1.5倍はある光の刀身が生まれた。
それはまるで、水を帯びた龍の尾のようにしなやかかつ、強靭であった。
(流れてくる・・・俺の中に、コイツの力の全てが・・・)
「喰らえ!青龍・・・」
ナナミはあっけにとられていたが智志が剣を振り上げた途端、体が動いたため気づいた
ときには智志の姿はナナミの下にあった。しかし、驚くべきはそのあとであった。
「・・・次元斬!!」
智志が剣を体をひねりながら青龍を横薙ぎに振ると、剣から放たられた青い軌跡は絵の
前にあったものを破壊しながら物凄い速さで進んでいき、戦っていた麗さんやガウルたち
も気づくのが遅くなってしまった。麗さんはすぐ躱したが、ガウルとジェノワーズ3人組
は光に飲み込まれた。
「「「「どわああぁあぁあぁぁぁ!?」」」」
青い軌跡はそれでも更に進み、最後にガレット本陣の木造城壁を大破させやっとその動
きが止まり、しだいに軌跡も消えていった。
「な・・・、なにこれ・・・」
「どうやらやりすぎたようだな・・・。こりゃ、その技はあまり使わないほうがいいな」
「そう、ね・・・」
目の前の煙が晴れると、そこにはしっかりと立つ麗さんの姿とナナミさん、武器が大破
し目を回しながら瓦礫にうもれて気絶しているジェノワーズ3人の姿があったが、1つお
かしな点があった。
「ガウル殿下がいない・・・」
俺はそう呟き、2人と一緒に周りを見渡してガウルを探していると・・・
「ハハハハハッ!」
不意にガウル殿下の高らかな笑い声がして、俺達ははそっちの方を向いた。
すると、城後の瓦礫が盛り上がりそこから出てきたのは、なんとさっきの白髪の少年の
面影を持った、麗さんよりいくつか年上のような1人の男性だった。
「!? まさか・・・、あなたはガウル殿下なのか!?」
「そうだぜ。お前、さっきの斬撃超すごかったぞ。俺のライバルの1人に入れといてやる
ぜ!!」
「そ、それは光栄で・・・」
そしてガウル殿下は体の埃を払うと、強く足を踏みしめた。
「それじゃ今度は不意打ちじゃなく、サシで本気の勝負と行こうじゃないかぁ!」
そう言葉をしながら、ガウル殿下は体全体に力をみなぎらせ始めた。すると、その両手
両足に青い光が集まり、光は獣の爪ような形になった。
「輝力開放、『獅子王爪牙』!!」
光が一層形を保つとガウル殿下は飛び上がり、両手の爪での斬撃を開始しようと突っ込
んで来た。
「だったら、もう1回『幻想殺し』で・・・、」
俺は青龍に力を込めた。
だが、あの龍の首は数秒経っても現れなかった。
「えぇ!?まさか、さっきのあれでパワー切れか!?」
智志はハッとし前方を見ると、ガウル殿下は至近距離にまで近づいていた。
防御に入ろうとした刹那、俺は後ろに人の気配を感じ振り返ると、その頭上を白いマン
トに赤い服、ナナミに似た棒を持った、察するに今のガウル殿下ぐらいの年齢の金髪の男
性が飛び越えてきた。
そいつに気付いたガウルは、さらに闘争心をみなぎらせたような顔をした。
「よう、遅かったな!」
「あぁ、お待たせぇ!!」
そう言いながら金髪の男性は棒を思いっきり振り下げ、ガウルはそれを左手だけで受け
止めると、2人は互いに距離をとった。
「勇者シンク、ただ今見参!」
((また勇者ぁ!?))
俺と麗さんがポカンとしていると、シンクとガウル殿下は互いに加速し、火花散らす戦
いを始めた。
それは俺たちにとってはありえない光景だった。シンクが棒を下から振り上げると、ガ
ウル殿下はそれをジャンプしてかわし、その隙を逃さずガウル殿下は爪による突き攻撃を
放った。
しかし、シンクはそれをかわし、すぐに距離をとって左手を前にかざすと、そこに炎の
塊ができた。炎は一直線に前に放射され、ガウル殿下へと迫るが、ガウル殿下は取り乱さ
ず、なんと両手で炎の塊をかかえると「獅子王爪牙」で握りつぶしてしまった。
「やっぱりおめえの攻撃は、他の奴とは違うなぁ。俺の闘争心がそう言ってらぁ。」
「それはよかった。だけどこの勝負、ビスコッティのためにも、僕が勝つ!」
そうシンクは言いながら、棒を前に出して腰をかがめると、ガウル殿下は手足に更に力
をかけながら構えた。
「そう来なくっちゃなぁ!そうでなきゃ、俺様が勝っても張り合いねえしなあ!」
ガウルが加速するすると同時に、シンクも地面を蹴り、2人は再びぶつかりあった。
「す、凄すぎだよあの2人・・・」
「そうね・・・」
「よそ見は禁物だよ、2人とも!」
俺と麗さんがシンクたちの勝負に目を奪われていると、ナナミさんはその背後から棒で
の攻撃をかけてきた。麗さんはそれにいち早く気づき、すかさず右手だけでその攻撃を受
け止めた。
「なかなかやるわね」
「あなたこそ・・・」
そういうと、互いに押し合い、2人は距離を取った。だが、ナナミはすぐに体制を取り
直し、再び突っ込んできた。麗さんはすぐさま猛攻を両手だけでその攻撃を捌いた。
「ガウル殿下の攻撃を全て耐えるなんて。あなた、一体何者?」
「柔道、合気道にカポエイラ、あとカンフーを少々やっているってとこね」
((え!?そんなにやっているの!?))
麗さんの意外すぎる量の武道の量に俺とナナミは少し冷や汗を流していた。
- RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.5 )
- 日時: 2013/12/27 19:05
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
すると、突然麗さんが何者かの気配に気づきナナミとの距離を取った瞬間、その間に何
者かが割り込んできた。その正体は双剣を持った緑色の髪をした垂れ耳の少女だった。
「どうやら、勇者も戦闘中のようだな。では、ここはビスコッティ騎士団・ミルヒオーレ
姫様直属親衛隊長であるこのエクレール・マルティノッジが相手になろう!」
「あぁ、エクレちゃんか。じゃあ、そっちがその気なら・・・覚悟!」
ナナミさんは瞬時に加速し、先制攻撃を始めた。対するエクレールさんは背中にかけて
いる鞘から2つの剣を引き抜くと、それだけでナナミさんの攻撃を全て受け止めた。
それからはナナミさんの素早いラッシュと、エクレールさんの素早い剣さばきにより、
2人の手捌きが見えなくなってしまった。
「こりゃあ、俺が知っている戦いを超えているよ・・・」
「そうね・・・。でも、智志くんの技も、君の知っている戦いを超えているよね?」
「あぁ。そうだった・・・」
俺はさっきの技の凄まじさを物語っている周りの光景を見て、苦笑いした。
「でね、私も智志くんみたいにやってみようかなぁって思ったんだけど」
「へ?ちょま」
俺が言葉の意味を察っして止めようとすると、麗さんの周りに雷光がうずまき、近づけ
なくなってしまった。すると、さっきまでの快晴が一変、灰色の雲に覆われた。
シンクやエクレールさんたちもそれに気づき、その空の色にあっけにとられていた。
「いくわよ・・・。玄武!」
麗さんが叫ぶと、雲から1つの雷鳴が響き、麗さんに雷が落ちた。しかしガントレット
が避雷針の代わりとなり、麗さんに外傷はなかったがガントレットに雷が貯まり、放電し
ていた。
すると放電がさらに大きくなり、ついには雷光の大きな塊となった。塊の周りにはさら
に眩い1本の雷光が走り、それはまるで蛇が動いているようであった。戦っていたみんな
があっけにとられていると、麗さんはそれを地面に向かって強く振り落とした。
「崩山型(くえやまのかた)!!」
すると、周りに更に激しい雷光と轟音が響き渡ち、俺たちのいる石橋はその影響で崩壊
し始めた。
「「「「「どわあぁあぁああ!?」」」」」
俺にナナミさん、エクレールさんやシンク、ガウル殿下も崩れ落ちる石橋からなんとか
逃げていたが突然目の前に雷光が落ち、俺たちの足場を粉砕した。
「「「「「わあああぁぁぁ!!」」」」」
俺たちはそのまま重力のまま川へ・・・と思いきや、目を開くと俺たちの体は黒い縄の
ようなもので吊り上げられていた。
「どうやら、間に合ったようやなあ。でかしたで、ノア」
「よかった・・・」
その黒いものは、なんとさっきまで倒れていたジェノワーズの『ノア』と呼ばれた黒髪
の女の子のしっぽだった。
しかしその形はさっきとは違って7又に別れていて、その先は矢尻のような刃物がつい
ていた。これもこの世界の技の1つなのか。いや、にくびれないなぁ。
「た、助かった・・・」
「あ、あれ?これって・・・、やりすぎたのかしら・・・?」
(その通りです・・・)
そう思いながら、俺はため息をついた。
「いやぁ、暴れたねぇ。お疲れ様サト兄、姉貴」
「2人とも痛いとことかない?」
「あぁ、大丈夫。一応かすり傷とかしかないし」
「そうね。真斗も黒焦げ寸前ですんでいたし」
「これくらいで済んだのも、日頃の行いが良かったからだな」
(((いや、それはない・・・)))
真斗のボケに心の中で突っ込みながら俺たちは本日の戦が終え、ゆったりと水を飲みな
がら今日の疲れを癒していた。
「みんな、お疲れ様」
そう言いながら部屋に来たのはさっきの勇者の青年にそっくりな金髪の少年だった。
「あっ、シンク君もおつかれさま」
「いやぁ、面白い勝負だったね、もうすごく楽しかったよ」
そう、この少年がシンク・イズミなのだ。ビスコッティに招かれた勇者で、さっきまで
ガウル殿下とド派手に戦っていた本人だ。アスレチックがとても大好きで、その運動神経
はプロ並み。そして、この世界の『主人公(コア・ヒューマン)』であるようだ。
武器は『神剣パラディオン』、シンクの思うがままにその形を変えられるらしいが、彼
自身もっぱら棒として使っているそうだ。
「そういえば、智志君だったよね?あの必殺技は一体なんなの?」
「え?」
シンクくんに目を輝かせながら笑顔で「あの必殺技」と言われ、俺の頭に思い浮かんだ
のは恐るべき破壊力を見せたあの『青龍次元斬』しかなかった。
「あぁ、あれはあんとき初めて使ったんだけど、俺もあまり全容は知らないんだ」
「へぇ」
「そういえば、ハル姉と姉貴も必殺技使ってみたようだけど、感想は?」
「私のはやりすぎちゃった。パスティヤージュの人にも迷惑かけちゃったし・・・」
「そうだねぇ。俺もその攻撃に巻き込まれてその攻撃の恐ろしさを体で知るハメになった
よ、全く」
「そ、それに関してはごめんね・・・」
「いいって、気にしていないから」
晴香が謝ると、真斗は気にしていないかのようにニコニコしながら和ませた。
「私も使ってみたわ。雷が大きな塊となって、それを地面に叩きつけたら周り中に雷鳴が
響き渡ったのよ」
「それで橋とか粉々にしていたしね」
「そ、そうね・・・」
麗さんの顔には、冷や汗が流れていた。それを見ながら、俺とシンクは苦笑いをした。
「まあサト兄がいうに、あの必殺技はどうやら武器の力を全部使っちゃうようだし、破壊
力も考えると、あまり使わないほうがいいな」
「うん、そうだな」
そう一言いい、晴香はコップに入っていた水を飲み干した。
「あら?シンク、皆さんと何を話しているの?」
やってきたのはシンクぐらいの年の桃色の髪をした犬耳の女の子であった。
「シンクくん、そちらは?」
「あぁ。こちらは姫様。この国の領主かつ、世界的な歌い手でもあるんだ」
「えぇ!?お姫様で歌手!?」
「はい。ミルヒオーレ・フィリアンド・ビスコッティです。この度はようこそフロニャル
ドへ」
「こ、こちらこそどうも!」
晴香の顔には驚きと羨望の念が見えてくる。
「そういえば皆さん、お夕食はまだでしたね。よろしければ、みんなで食べませんか?」
「えっ!?いいんですか?」
「はい」
真斗の顔には効果音で言えば『パアァァ・・・』といったような輝きに満ちていた。
「おい真斗、そんなにお腹すいていたのか?」
「そりゃ、あんなに戦ったんだ。お腹がすいて今すぐにも何か食べたいよ」
「では、行きましょう」
そうミルヒ姫がいうと、俺達は外に出て食堂に向かった。
食堂に着くと、そこには昨日お世話になったダルキアン卿にユキカゼさん、それに昼間
いたエクレールさんが食事の準備をしていた。
「あぁ、全員きたようでござるな」
「今日はご一緒させてもらいます」
「みんなで食べれば、さらに美味しく感じるでござるよ」
智志が挨拶をしている横を通り、シンクはエクレの方に向かった。
「エクレも今日は疲れているでしょ?手伝うよ」
「何を言う?これでもビスコッティの親衛隊長だぞ。お前は勇者だからって、バカにする
な」
「でもエクレだって女の子なんだからさ。手伝わせてよ」
「たくっ・・・」
エクレールは仏頂面で言っているが、その顔は少し桃色になっていて、尻尾がせわしな
く動いていた。
(なんか、あの2人仲いいよな)
そう考えながら、俺はよそ見したまま席に着いた。
「そういえば真斗、麗さんと戦っていた銀髪の男子、ガウル殿下って奴一体何者?シンク
くんと互角のように見えたけど」
智志の質問に、真斗は食事の方に向いていた目を智志に向けて、答え始めた。
「あぁ、ガウルはガレット獅子団の『王子』でね、暴れることがとても好きなんだ」
「あれ?『王子』ってことは、国の長じゃないの?」
その質問に答えたのは、手伝いを終え、席に着いたシンクとミルヒオーレ姫様だった。
「あぁ、今のガレット獅子団の領主はレオ閣下だよ」
「レオ閣下?」
「レオ閣下はガウ様のお姉さんで、それはもうガウ様さえ手がつけられないほど強いんで
すよ。私は子供の頃から本当のお姉さんのように思っていました」
「ほ、本当にすごく強いんですか!?」
「はい」
「うん」
「そうか。じゃあ、明日の戦は面白くなりそうだね」
「そうね」
俺は明日の戦への期待を胸に、みんな揃っての食事会を始めた。
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