二次創作小説(紙ほか)

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名探偵コナン夢物語1『これから』
日時: 2014/10/26 02:55
名前: らいち。 (ID: 8MLsWoCW)

1.プロローグ

ふわりと身体が浮く。
降り続ける雨はこんなにも冷たいのに、
私を軽々と持ち上げた人は
こんなにも…
温かい。
だれ…な…の…?


目が覚めると、見知らぬ天井が見える。
右には大きな窓があり、
少し大きく感じるこの部屋は、洋館造りなのだろうか。

「目が覚めましたか?」
ドアが開いた。
そこにいたのは、
少しくせっぽい茶髪で、
眼鏡をかけていて、
細い目をして、
どこかで会ったことがある気がする男の人。
「私…どうしてここに?」
「何となく外を見ていたら、足取りもしっかりしない、傘もささずに  外を歩いている君の姿が見えてね。
 どうしたのかとそのまま見ていたら、急に倒れてしまったんだよ。」
「そう、なの…?」

ああ、そうか。
埼玉から、タクシー捕まえて、ここに来たんだった。
でも、
その前はどうしてたっけ?

「君、名前は?」
男の人が訊いてくる。
名前?
何だっけ。
「…。」
私が無言でいると、男の人はメモ帳と万年筆を取り出した。
どこから来たのか。
どうして怪我をしているのか。
ボールペンの使い方は分かるか。
色々な事を訊いてくる。

やっぱり、
記憶喪失ってヤツになっちゃった??

「あ、失礼。僕はこの家に住んでいる、沖矢昴(おきや すばる)
 という者です。よろしく。」
「はい、あの…ごめんなさい!迷惑かけちゃって…」
「君が謝ることはないさ。」

昴、と名乗った人は手に持っていたお茶を渡してきた。
痛たた…
頭も打ったんだ…。
はぁ、とため息をついて窓のほうを向く。
「…?!」
でも、ガラスに映ったその姿に、とんでもない違和感をおぼえた。

白い肌
黒くて長い髪
日本人離れしたエメラルドグリーンの瞳
そして何より…

小学一年生位の 小さな身体

「あれ…?」
おかしい。
私、こんなに小さかった?

「どうかしましたか?」
昴さんが不思議そうな顔で訊いてくる。
「ううん、何でも無いよ。…昴さん。」
「そうか」


記憶が戻らないまま、数日が過ぎたけど、怪我は治ったみたい。

—えぇ…人を守るというのは、苦手じゃないんでね。
 あの子が全てを思い出したら、あなた方の管轄になりますが…。
 はい…、了解。

隣の部屋から、キーボード音とともに昴さんの声が聞こえてくる。

人を、マモル…?
あなた方の、カンカツ…?

あなたは一体、何者?

何だか怪しげな電話だったけど、
この人は…

たぶん、
大丈夫だと思う。


Re: 名探偵コナン 夢物語1『これから』 ( No.1 )
日時: 2014/10/08 21:39
名前: らいち。 (ID: mlAZVoWe)

2.出会いと悪夢

「それにしても、大きい家だね。」
「色々あって、借りているんだよ。工藤新一君にね。」
「工藤、新一?」
聞き覚えのあるその名前を繰り返してみたけど、
昴さんには声が届かなかったらしい。
まぁ、帰る場所ができただけでも、よかった。

隣に住んでいる阿笠さんに挨拶に行こうと門を閉めたその時、

「あ!昴さん!」

ん?
この声…どっかで…?

「やぁ、コナン君。」
「あれ?その子誰…?」
「引き取ったのさ。」
「え?」
「名前がまだ無い。」
「まさか…」
「もちろんその、まさかさ。」

2人の会話が怪しく感じる。
何かあるよね、この2人。
と、ジト目でいたら。

「おいコナン! エトウの家で何やってんだよ!」
とコナン君を呼ぶ、ふくよかで十円ハゲのある男の子に、
「元太君、エトウじゃなくて、クドウですよ!」
となだめている、細めでそばかすのある男の子、
「それに、今住んでいるのは昴お兄さんでしょ!」
「江戸川君、早く戻って来なさい。」
カチューシャを付けた元気そうな女の子、
赤みがかった茶髪の大人しそうな女の子、

合わせて5人が阿笠宅の前で騒いでいる。


阿笠宅。

「そうなんだ…大変だね…。」
と歩美ちゃん。
「でも、僕たち少年探偵団がついてますから!」
と光彦君。
今までの【私のあらすじ】を
みんなに説明したら、
少年探偵団のみんなは たくさんの励ましの言葉をくれた。

「そういえばコナン君、あの少女はどうなったんじゃ?」
「あぁ、芹井奈都のことだろ?」
博士とコナンが話をしていると、
「えーっ?!セレちゃんに会ったの?」
と歩美が目を見開いて訊いてきた。
「歩美…知ってるのか?」
「だって、最近テレビに出てたもん!」
歩美はさらに目を輝かせる。
「確か、中学生アーティスト、でしたよね。」
光彦も知っているようだ。

でも
誰も思いはしないだろう…
その張本人が
ここにいる 記憶喪失の少女だとは…。


夜8時。
風呂からあがり、鉛筆片手に書斎をうろつく。
「うーん…」
すると、
「名前を考えているのかい?」
と昴さんに声をかけられた。
「うん、名字からさっぱり…。」
「そうか…気持ちは分からなくもないけどね。」
「え?」
ふっと笑い、彼は部屋を出て行った。

手近にあった本を取り出す。
推理小説だ。
1人になって、40分くらい経っただろうか、
あとがきにはいったところで、急にまぶたが重くなった。


気が付くと、そこは明るい花畑。
見渡す限り、青空が広がっている。

「奈都…」

誰かが
呼んでいる?

20代、いや、30代。

振り向くと
そこには……

父がいた——

「お父さん…なの?」
「あぁ。」

私が父と唯一似ているのは、瞳の色。
亡くなっていることは、幼馴染にしか明かしていない。


ところが、
銃声とともに
父の姿が消えてしまった。


最悪な記憶が蘇る。

私はアメリカで生まれ、5才までそこにいた。
父は日系アメリカ人、
母は日本人。
外では英語を話すけど、
3人でいる時だけは日本語で話す…
だれが決めたわけでもなかった。

4才になり、父が国内出張に出て行って9ヶ月は経った雪の降る日、
母との旅行先で 彼をみつけた。

「じゃあ、ジュース買ってくるから待っててね。」
「うん」

どこの州だかは覚えていないが、
私は大通りで母の帰りを待っていた。

そこで見つけてしまったのだ
彼を…

「お父さん!」
見つけたからって駆け寄った。
ホントにバカだ。

「だめだ奈都!来るんじゃない!!」

でもその声は
トラックの轟音にかき消されて 届かなかった。
そして、地獄への銃口は私に向けられたのだ。

そんな私を守って…
ううん
私なんかを守るために
飛びこませてしまったの

死の弾丸に…。

彼の死を知らされたのは、それから2週間後だった。


結局、父が何の仕事をしていたのか知らされずに育った。

考えたくもないけど
FBIやCIAじゃ
ないよね

まさかね…

そしてこれが
初めて戻った 記憶。


風呂から出ると、
読みかけの小説を開いたまま眠っている「奈都」を見つけた。
ったく、カゼひくぞ…
昴がひょいと抱き上げると、
奈都が涙をこぼした。
「…」
この子はもしかしたら…あの時の…?


バーボンを氷で割る。
今日は月が青い。

「ワームズ・芹井…本当に、申し訳ない…。」

月を仰いで発したその声は、
赤井秀一のものになっていた———



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