二次創作小説(紙ほか)

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名探偵コナン夢物語2『闘い…』【3000突破Thanks☆】
日時: 2015/10/09 19:45
名前: らいち。 (ID: GlabL33E)

*コメントは、≪名探偵コナン夢物語 人物設定≫へお願いします!!!*


 皆様へのご挨拶。

こんにちは。
これからは、別件で忙しくなりますが、
それでも、地味な執筆活動は休止しないつもりです(笑)

私のことは嫌いになっても、コナンは嫌いにならないで!
アホやね。すみません。

こんなドアホな作者ですが、
色々な方の意見や 私自身の考察・想像をもとにして、最終章っぽいのを書くことにしました。

「黒の組織のボスは誰なの?」
「赤井三兄妹は、どうしてみんな名字が違うの?」
「安室さんは、味方?敵?」
「領域外の妹の正体は?」
「ラムは誰?」

等々、疑問が多いすごいマンガなんですが、
その一方で、読者もすごく推理するマンガでもあるんです。

…では、語り出すと止まらなくなるので、
この辺りで私からの挨拶とさせていただきます。



最近、手が回らなくなってしまい 更新できてませんが、
この小説の事は忘れていません!

私も、必ず完結させるつもりです!!!

温かい見守りと、気が向いた時には 是非、コメントをお願いしますm(__)m
これからも、宜しくお願い致します。



【目次(予定)】

  プロローグ >>2

0.FBIとの出会い      >>3
1.哀の本音          >>4
2.一人ぼっちのエメラルド   >>5
3.小さなエメラルドの哀しみ  >>6
4.準備            >>7 >>8
5.闇の中の正義        >>9 >>10
6.翡翠の序章         >>11 >>13
7.翡翠の真実         >>14 >>16(一部 訂正・加筆) >>17
8.翡翠の帰還         >>18 >>19 >>20 >>21
9.翡翠の決意         >>22 >>24 >>27
10.領域外で…〔1〕       >>37 >>38(37・38ともに編集) >>39
11.領域外で…〔2〕      >>40 >>42←NEW!(40・42ともに編集)
12.白と黒と、真心と。     >>43
13.裏切り者が消せない匂い
14.クラッシュ Part1
15.クラッシュ Part2
16.犠牲者の怒り
17.目覚めぬ命
18.すれちがい
19.消せないメール
20.再会

  エピローグ



【ちょっと息抜き。】

〇ミニサイドストーリー

・Happy Christmas!〜私達だけの、秘密だよ。〜 >>31-33

↑↑「4.準備」でほぼスルーした、奈都が4才のクリスマスの時の思い出話です。
写真立てとウサギのぬいぐるみのことも。
特に伏線とか張ってるわけではないので、普通に読んじゃってくださいな。
世良ファミリー好きには、たまらんと思います(笑)


〇ドアホ作者からのメッセージw

・前半ほぼ終了と年の暮れなので。(「2つ目」に重要なお知らせ有) >>28
・ドアホ作者より。〈Part2〉あけおめ! >>34


〇あゆみ

・1月5日 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 参照(閲覧)数1000突破!
 ありがとうございます!
・1月22日 らいち。のプロフィール 来訪者数100超えを確認!
 (駄w)作リストになってるので、もしよければ使ってください(笑)
・5月1日 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 参照数がいつの間にか2000を超えていた事を確認(笑)
 ありがとうございます☆



〇その他

・後半戦の『next Conan's hint』!! >>29

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.7 )
日時: 2014/10/26 18:14
名前: らいち。 (ID: bp91r55N)



4.準備

ふつふつと音を立てる鍋。
フライパンの上で奏でられる、おいしそうな匂いのハーモニー。
シュウ兄の後ろ姿。
たまに足元に流れてくる、冷蔵庫の冷気…。

シュウ兄が料理するのをじっと見ていて、
そんなに見ていて何が楽しいのか と訊かれたときに答えた言葉だ。

今もそれを、
見て…聞いて…感じている。

椅子に座って脚をバタバタ動かしていると、

「今日は、お前の好きなシチューだ。」

とシュウ兄が言って、
味見用のお皿を渡してきた。

「知ってるよ〜。」
「フッ…。」

旨味と甘味が程よく混じり合って、おいしい。

「おいしいけどさ…」
「何だ?」
「チョーカーのスイッチ、切ったままでいいの?」

今日は、変声機の電源が切られたままだった。
かたん、
と皿が置かれて、見た目と中身が一致しない男はこちらを振り向いた。

「今日は特別だ。」
「ふうん…」

すると、
彼がいきなりスイッチを入れて

「ところで彩ちゃん、宿題は終わりましたか?」

と悪戯に笑って訊いてきた。

「終わってますよー。」

こちらも舌を出して笑ってみせた。

「なら、よろしい。」

機械音とともに、その声はもとに戻った。

きっと、
真純ちゃんは チョーカーを面白がって、シュウ兄を困らせるんだろうな。
そう思うと、自然に笑えてくる。

こんな暮らしになってから、
よく昔のことを思い出すようになったのは、気のせいだろうか。

お父さんと2人暮らししてたら、
こんな感じなのかな…?
真純ちゃんは、私のこと 羨ましいって、思うのかな…?
陽希たちは、部活とか頑張ってるかな…?

様々な想いが私の中を廻っていく。

世界は何気に、平等にできているのかもしれない。
「完全な幸せ」というものが、存在していないのだ。


2人の笑顔と話し声が リビングを温めている。

そんな空間に、
冷たい涙が、
ポロリと落ちた。

「奈都…?」

心配そうに私をのぞきこむシュウ兄。

何だか、
ここは温かすぎると、そう思ってしまった。


両親が共働きだった 2〜4歳の夏と冬、
私は、世良家で日々を過ごしていた。

真純ちゃんは 妹ができたみたいだと、よく相手をしてくれた。

キチ兄は 日本のことを、沢山教えてくれた。

シュウ兄は 時々そばに寄り添って、話を聞いてくれた。

おばさんは 普段は家にいないしぶっきらぼうだけど、
優しくて、笑うとすごくかわいい。

4人が親だった、と言っても過言ではないだろう。
それくらい、私はみんなのことが大好きなのだから。

やだな。
何泣いてるんだろう。

みんなは今まで、もっと辛い思いをしてきたのに。

異父兄妹で
そのうえ、お父さんは2人とも亡くなっている。
私だったら、
そんなの絶対に耐えられない。

「お茶…とってくる。」

その場を離れようとして、とっさに嘘をついた。

「おい…」

でも、
立ち上がろうとしたとたん、
世界がぐるりと回って、目の前が真っ暗になった。

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.8 )
日時: 2014/11/06 01:20
名前: らいち。 (ID: BO2eV5at)

額に冷たい感覚がして目が覚めた。
同時に、左手に温もりを感じる。

顔を横に向けると
志保ちゃんが私の手を握って、静かな寝息をたてていた。

「気分はどうだ?」

シュウ兄が何かを持って近づいてくる。

大丈夫、
そう言おうとしたのに、声が出ない。
代わりに出たのは、情けない咳。

「大丈夫…?」

志保ちゃんも起こしてしまった。
まだ眠そうな目をしているけど
背中をさすってくれるその手は優しく、温かい。

「焦らなくてもいいのよ…。ゆっくり休んで。」
「あぃちゃ…ん。」

よく見てみると、パジャマ姿だ。
ずっとここにいたのなら、とても寒かっただろうに…。

「さあ、君は学校があるだろう?
 あとは僕に任せて、早く支度しないと…」
「そうね。
 こんな小さな女の子に風邪をひかせた酷いお兄さんに
 彩ちゃんのことを任せて学校に行かないと。」
「おやおや…。」

志保ちゃんは、
いかにも不服そうな顔をして ドアのほうへと歩きだした。
シュウ兄に対するセリフにも、かなり棒読み感がある。

「じゃあ、彩ちゃん。また放課後も来るわね。」
「うん…。」

別人に変わったような切り替えだったので、寒気がした。


足音が聞こえなくなり、
それを確認したように目元を赤井秀一に戻して、

「落ち着いたか?」

と、
彼は 昴ボイスに合わないシュウ兄口調で尋ねてきた。

「多分。」

半ば強引に飲まされたスポーツドリンクを
ペットボトルごともてあそぶ私を見ているのか、
時々隣から、くすくすと笑い声が聞こえてくる。

「何がそんなにおかし…の。」

まだかすれる声で、
さっきの志保ちゃんのようにシュウ兄をにらんでみた。

「いや…、昔のことを思い出したのさ…。」
「昔…?」
「奈都が4歳のときのクリスマスだ。」

あぁ…。
きっと、あの時の 真純ちゃんとの言い合いを思い出してるんだ。
珍しいな。
この人は、あんまり後ろを振り返らないタイプなのに。

だが、そんなことも見越しているのか、
また強引に 卵粥のれんげを私の口につっこんでくる
『酷いお兄さん』。

「…。」

しぶしぶと飲み込んではみたものの、
やっぱりおいしくて 今日はなんだか悔しい。

「今日は色々なところに用があってな…。悪いが 頼まれてくれないか。」
「留守番ね。」
「正解。」

シュウ兄は、私に『頭ぽんぽん』をした。
どうすれば言うことをきくのか知ってる、ちょっとずるいヤツなんだ。

「…」

1人になってから、
お粥を ゆっくり味わうことにした。

さっき開けたばかりの窓からは、
ちょっぴり冷たい 秋の風が舞い降りてくる。
そのせいか、冷めかけのお粥がとても温かい気がした。

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.9 )
日時: 2014/11/03 03:15
名前: らいち。 (ID: f9c/TndF)


5.闇の中の正義

「今日も、特に動きは無し…か。」

喫茶店ポアロのアルバイトが終わり、
エプロンを外しながらつぶやく安室透。

いや、
彼のことは 降谷零(ふるや れい)と呼ぶべきか。

「お疲れ様でしたー。」
「はーい、また明日!」


いつもの爽やかな笑顔で、ポアロをあとにした。


最近、毎日がこんな風にマンネリ化している。

ジンやベルモットに近況報告をし、
毛利小五郎の弟子として周囲を探り、
バイトがてら近所の情報を得る。

『ウソつき…』のあと、随分とヒマになったものだ。

拳銃に関しては まだらしい。
…まぁ、あんなありふれた型じゃ、良い情報は得られないだろうが。

零は一つ あくびをした。
意味はあまり無い。
すると、前から4・5人の子どもたちがやってきた。

「あー!安室のにーちゃんじゃねぇか!」

その中の、ひときわ大きい子が声を出した。
確か…小嶋元太だったっけ?
さりげなく目線を巡らせ、コナン君の姿も確認する。

「やぁ君たち。…おや?今日は何だか、人数が少ないね。」

そう…。
1人は 灰原哀 という茶髪の少女だが、
もう1人…

「そうなんですよ。今日は彩ちゃん、風邪で休んでいるんです。」

彩、というのか。
俺は初めて 彼女の名前を知った。
街の至る所で見かけるので、気になってはいたのだ。

名前に見合わないハーフ顔。
いつも帽子をかぶっているその姿は、

まるで———


「どうしたの?」


歩美ちゃんが俺を見上げている。
その横で、コナン君も同じように見上げていた。
まるで 怪しいものを見ているように…。

「いや…僕の知り合いも風邪をひいているから、
 最近流行ってるのかなって、ちょっと心配になっていただけさ。」
「何だ、流行ってんのか?」

まあね、と適当に誤魔化し 再び家路につこうとしたのだが、
何かにつっかかり、その動きは阻止されてしまった。

「ん?」
「ねぇ、安室のおにーさんも一緒に行こうよ!!」

歩美ちゃんの小さな手が、
俺の上着を掴んでいた。

「行くって…どこに…。」
「へへへ…。」



「げ…。こ、ここなのかい?彩ちゃんの家って…」
「そうだよ」

歩美ちゃんが、当たり前のように言う。
君にとっては当たり前なんだろうけどねぇ…。

またかよ。
またココかよ!!

だが、もう後戻りはできない。

何だか知らないが、
みんなは、俺と沖矢さんを会わせたいと思っているらしい。

「もー、早く入りましょうよ!」
「あぁ〜。もう分かったから、押さないでくれるかな。」

『おしゃべり好きな宅配業者の人』
は、もうあの人には会いたくないんだよ!

助けを求めるようにコナン君を見つめるが、彼は冷たい目しか向けてくれない。

あぁ…
もうどうにでもなれ…。


「あれ〜?」
「誰もいないですね。」
「うな重食いにいったんじゃねーか?」
「ハ、ハハハ…」

どうやら、家には誰もいないようだ。
沖矢さんの姿も見えない。

「探偵団バッジで呼んでみればいいんじゃないかい?」

俺も一応参加してみる。

「そうだね!」

早速 歩美ちゃんがバッジのスイッチを入れた。

「彩ちゃーん、どこにいるの?」
『はーい。私の部屋だよ。…ねぇ。』
「何?」
『そこに、誰か大人はいる?』

ん?
この声、どこかで聞いたことがあるな…。

「いるけど?安室さんだよ。」
『そう…。ちょっと着替えてくるから、リビングで待ってて。』

この広い洋館を走って行く3人を見ながら、
思わず怖い顔になってしまった。
だが、
後ろから コナン君の視線を感じたので、
今の顔に営業スマイルをはりつけることにした。


「みんなお待たせ。お菓子あるけど、食べる?」
「「わーい!!」」

数分ほどして、彼女が出てきた。
確かに着替えたようだ。

「あれ?灰原と昴さんは?」
「あぁ。哀ちゃんは帰ったよ。昴さんは、外に用だって。」
「ったく、アイツはすぐわかるんだな。」

コナンは
零と秀一を引き合わせるのはマズいかと思っていたが、
もう終わったことだし…とため息をつき、
ソファに座った。

ポテトチップスをバリバリ食べる元太を笑いながら、
レモンパイを切り分ける彩。
紅茶淹れましょうか?と彩に尋ねる零。

小さくなったままの名探偵は
これからどうしようかと困っていたが、
その一方で
零は 自分の正体を明かそうかどうか迷っていた。

Re: 名探偵コナン 夢物語2『闘い…』 ( No.10 )
日時: 2014/11/06 01:15
名前: らいち。 (ID: BO2eV5at)

お父さんを亡くした…。
英ちゃんと離れた…。
アナウンサーもやめた…。

最近、何かを手放してばかり。

幸い バーボンこと降谷零は公安警察だったから良かったけど…
彼がいなかったら、私…
殺されてたかな。

1人考え込みながら車を運転する キールこと本堂瑛海。

最近は、ジンたちとの殺しには入っていない。
その代わりに
書類整理や暗殺場所の下見、他部の見廻りなど
やることはたくさん。

もちろん、
CIA本局や 日本に来ているFBIのチームに連絡する暇は全く無い。

そんな中、
かろうじて赤井さんには伝えることができた。

『RUM』

私の知らないところで、
幹部が少しずつ動き出している。

組織のNo2。
女のような男、
老人のような人、
ガタイのいい人、
そして…義眼。

さまざまな噂が飛び交う、ボスの側近だ。


信号が赤に変わり、
瑛海の車が止まった。

もうっ!
今は任務に集中!!
負の感情を取り払うかのように、ぶんぶんと頭を振る。

でも、最近思うことがある。

公安警察にFBI、CIAに探偵、ただ者じゃない科学者…
一体どれだけ 裏切り者に囲まれているんだと。

早くこんな世界から解放されたい…

信号が青に変わり、
瑛海は いつもより強くアクセルを踏んだ。


「おいしいですね、このレモンパイ。」
「でしょ?昴さん特製なんだから!」
「へぇ…あの人、料理もできるのか。」
「え…?」

工藤邸にて。
彩と零が会話している。

彩は、零の不自然な言動に 一瞬怪訝そうな顔をした。
そんな様子を察知し、『安室透』は 笑顔で彩を黙らせた。
コナンも、2人の異様な雰囲気に気づいたが

「では、あまり長居するのも彩ちゃんに悪いですし、
 そろそろおいとまさせて頂きますね。」

と、受け流された。

うな重食って早く風邪治せよ!
と言う元太に苦笑を浮かべた、子ども3人と大人1人は
手を振りながら工藤邸をあとにした。



「あー。疲れたわ。」

某有名企業の子会社で書類整理を終えた瑛海。
近くの壁時計は、もう11時を指している。

山のように積みあがったファイルを運ぼうとした時、
ドアが開く音がした。

「お疲れ様です、『水無さん』。」

こんな所に来る人なんて、
1人しかいないだろう。

「あら、私はそんな名前じゃないけど。」
「おっと失礼、『本堂さん』。」

振り向くと、
そこにはやはり…

「別にいいのよ。降谷君。」

バーボンの姿があった。

すると 零は
ファイルの山の一つをサッと持ち上げ、

「まぁ、そう機嫌を損ねないで下さい。
 こんなもの、さっさと片付けてしまいましょう。」

と、いつもの笑顔で言った。
たまに、その営業スマイルが怖いと思ってしまうのは私だけか。

「で…。何でここが分かったのよ?」

瑛海も もう1つの山を手にとり、
彼のあとをついて行く。

「ベルモットの気遣い、といったところですかね。
 あの女…気づいているようですよ。我々の正体を。」

ベルモットの弱味を握っているらしいこの男。
やはり怖い。

「じゃあ、彼女も望んでいるのかしら…。
 悪から解放される瞬間を…。」
「そうですね。
 『江戸川コナン』君のことも、ジンたちには口を開かない。」

だったら そろそろ私たちも潮どきかしら、
と瑛海が棚にファイルを押し込もうとすると、
どこからともなく 見覚えのない封筒が落ちてきた。

「何かしら…これ。」

抱えていたファイルを床に置き、
封筒を開くと、5枚ほどの紙が入っていた。

「どうかしましたか?」

瑛海は、読み終わった紙を1枚ずつ零に渡した。
最初のうちは戸惑っていた零も、
だんだんと紙に釘づけとなっていった。

「降谷君…、これで分かったとは思うけど、もう 彼に…赤井さんに、
 手を出しちゃいけないわ。」
「えぇ…。アイツを殺れば、僕が地獄行きですよ。」

零は、
何事も無かったかのように 封筒を元の場所へ戻した。



死亡未確認
 FBI特別捜査官 ワームズ・芹井 当時31歳 (銃殺)
備考
 Silver Bullet



いつか『アイツ』に言われた言葉が、零の頭にこだまする。


———狩るべき相手を見誤らないでいただきたい———

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.11 )
日時: 2014/11/13 21:23
名前: らいち。 (ID: mkDNkcIb)

6.翡翠の序章

どうやら、シュウ兄は『お仕事』で帰りが遅くなっていたらしい。
夕食を済ませ お風呂からあがると、ようやく彼の気配がした。
リビングでテレビを見ている。

シュウ兄も 私の気配に気付き、
テーブルの上に置いてある、大きなダンボールを指さした。

「咲良さんから、荷物だ。」
「あぁ…。それで郵便局に行ってたの?」
「まあな。」

ついでに 咲良さんってのは私のお母さんだ。
早速開けてみると、
たくさんのものが入っている。

スマートフォンに、
充電器に、
着替えに、
えーっと…

するとシュウ兄は、

「我々で手は回しておいた。
 咲良さんが機転を利かせて、芸能活動は休止させてもらっている。
 とりあえず、それくらいあれば足りるだろう…。」

そう言って、
私が一番最初に取り出した写真立てを持ち上げた。
バブルラップの気泡が、2〜3個割れる音がした。

「ありがとね。あ、その写真、覚えてる?」
「ああ。忘れはしないさ。」

冷めた言い方の割に
写真を見つめるその瞳は、どこか哀しげだった。

有希子さんにそっくりなおばさん。
シュウ兄に肩車してもらってる真純ちゃんと私。
照れた顔でピースしているキチ兄とお母さん。
そして…
ニット帽をかぶった———
お父さん…。

何となくため息をつこうとしたその時、
ひょい と擬音でも聞こえてきそうな勢いで、シュウ兄に持ち上げられた。
いつの間にか、肩の上に乗せられている。
まさか…心を読まれてた?

「さあ、良い子はもう寝る時間ですよー。」

なんて言いながら、
空いたほうの手で ダンボールも持ち上げてる。

「はーい」

って、怖いよ シュウ兄。
キャラの切り替え。

「でも まあ、元気になったら、夜更かししてもいいかな。」
「え、いいの?!」
「もともとは14歳ですし、その辺の判断は自己責任で。」
「うーん…じゃあ、オセロしようね!将棋は難しいからさ。」
「はいはい。」

2階に上がり、降ろされた。
今度は両手でダンボールを持ち、

「一人で寝れるか?」

なんて 子供を見るように訊いてくる。
実際子どもだけど。

「平気。まだ、仕事残ってるんでしょ?」
「やっぱり俺がつく。」
「え〜っ??」
「何だ。そんなに嫌か?」
「べつに…」



毛布にくるまれて横を向くと、
椅子に座ったシュウ兄が、また写真を見つめていた。
無意識なのか、目も開いている。

月明かりに照らされる、癖っ毛な茶髪。
いつになったら 黒髪に戻せるんだろうね…?

「ねぇシュウ兄。」
「何だ?」
「真純ちゃんが風邪ひいたときは、どうしてたの?」
「そうだな…」


ガチャリ。
玄関のドアを開けると、誰かの声がする。

おいおい。
まだ起きてるのか。

そっとリビングを覗くと、
熊のぬいぐるみをぼふぼふと蹴りまわす真純がいた。

「あ!しゅうにーぃ!!」

無邪気な妹は、
風邪なんかひいてもどうってことはない、とでも言うように
俺に飛びついてくる。

「寝てろって言っただろ。」
「だってつまんないんだもん!」

ったく…
と、制止させるように真純の額にシートを張り付けた。

「しゅうにぃといっしょにねるっ!」
「ハイハイ。」

ちなみにこの時、
真純は3歳 俺は15歳で中3。
受験も終わり、無事に進路が決まっている。
いままで秀吉に任せていた分、思い切り甘えさせよう。
舌足らずな真純の口調に愛おしさを感じながら、そう思った。

にしても、
母さんはどうしてこんな時に 真純の近くにいてやらないんだ。

「…あれ、しゅうにぃ…おこってる?」

顔に出ていたか。

「あぁ…母さんにな。」
「なんで?ママはわるいことしてないぞ?」
「真純…」

熱で火照った顔が、さらに赤くなる。

何となく気まずいので
部屋に戻って
制服から パーカーとジーンズに着替えたら、

「しゅうにぃ…」

と、
ドアに隠れて、
真純がこちらをじっと覗いていた。

「ん?」

洗濯物を抱えて部屋を出ようとすると、

「ボク、ママがいなくても、平気だもん!しゅうにぃときちにぃがいるもん!」

そう言って
目をうるうるさせていた。

「…」

そんなことを言われてしまうと、
こっちが申し訳ない。

「真純…ごめんな…。」


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