二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

大形京 天国へ行く【黒魔女さんが通る】完結!
日時: 2015/07/11 12:59
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

大形京くんが主人公のお話です。時系列的にはホワイトデーの後の出来事で、オリキャラや他作品のキャラが登場します。
それでもいいという心の優しい方はご覧ください!

ゲストキャラ
漫画トーマの心臓より トーマ=ヴェルナー

オリジナルキャラ ジャドウ=グレイ、スター=アーナツメルツ。



Re: 大形京 天国へ行く【黒魔女さんが通る】 ( No.1 )
日時: 2015/10/17 11:39
名前: モンブラン博士 (ID: 7KvZCID9)

「きみは誰、だねぇ」
「教えてほしいねぇ」

「おれの名はジャドウ=グレイ。おまえの中に眠る、黒い部分を解放しにきた」

「それは困るねぇ」
「やめてほしいねぇ」

「大形よ。おまえは魔力を封印され、記憶もおぼろげで苦しかろう。
悪いことは言わん。おまえの本来の姿に戻り、思う存分悪の限りを尽くせ」

「もうひとりのぼくは、本当のぼくじゃないねぇ」
「あんごるもあに利用されて捨てられた哀しみと復讐心が生んだ、悪いぼくだねぇ」

「フフフフ、大形よ。おまえは己を見失っているな? 悪の姿こそおまえの真の姿なのだ。人を傷つけ裏切り利用し、逆らうものは力ずくでねじ伏せる魔界の王……それが大形京、おまえという人間なのだ」

「さっきも言ったねぇ、それはぼくじゃないねぇ」
「悪魔の声には耳を傾けたくないねぇ」
「ぼくはずっとこのままでいたいねぇ」
「記憶もおぼろげで魔力が封印されていたとしても、みんなと幸せに過ごせる方が、ひとりぼっちの魔界の王になるより、ずっと楽しいねぇ」

「成程。それがおまえの導き出した答えという訳か」

「この答えは、何があっても覆らないよねぇ」
「そうだよねぇ」

「おまえの決意はよくわかった。ならば、仕方あるまい。おれはおまえが愛する者をすべて奪ってやろう。家族、五年一組のクラスメート、そして——黒鳥千代子をな。
そして後悔するがよい、おれの誘いを断ったことを永遠にな。
フフフフフフフフ……」






「——はぁっ……はぁっ……だねぇ」

また、同じ夢を見た。

ジャドウ=グレイと名乗る男が現れてぼくの両手にはめられてある魔力封印のぬいぐるみを取る夢。

それはぼくにとって苦痛以外の何者でもない。

おぼろげな記憶しかないけれど幸せな毎日。

パパにママそして桃と過ごす明るい笑顔に包まれた家庭。

隣には黒鳥さんが住んでいてぼくにいつも優しくしてくれる。

けれどもぼくは彼女の期待を——優しさを裏切ってばかりだ。

洗濯魔法をかけられても改善の兆しが見えないぼくの心。

桃花ブロッサムがインストラクターになってからもぼくの心の闇は変わらない。

それどころか、日に日に増加している。

どうすれば、野心と支配欲に満ちたこの心を消すことができるのか。

毎日、寝る前に考える。

だけど

答えはみつからない。

この前も自分のインフルエンザの分身を作って魔界に行った。

最初は本気で黒鳥さんからチョコを貰った恩返しがしたかった。

でも時間が経つにつれて悪いぼくに負けている自分がいた。

そしてこともあろうに哀しみに暮れる黒鳥さんの前でぼくは言っていたんだ。

「好きだの、愛だのばかばかしい」

って。

その言葉がどれだけ彼女を傷つけていただろう。

胸が痛い。

苦しい。

ロープでがんじがらめにされて、思いっきり締め付けられるように。

謝りたい。

だけど、謝ろうとすると、口が渇いて言葉がうまく出せなくなる。

そんな自分が、とても嫌になる。

心の中でぼくは五年一組のみんな、そして家族に謝る。

ぼくのせいで、悲しい思いをさせて、ごめんなさい。

Re: 大形京 天国へ行く【黒魔女さんが通る】 ( No.2 )
日時: 2015/07/11 03:56
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

謝ったところで、皆は、ぼくを許してくれないだろう。
当たり前だ。
ぼくは一度、遠足のときに彼らの乗るバスに魔法をかけて、転落させようとした。
大好きなみんなの命を奪おうとした——思い出という名のペットにするために。
黒鳥さんとぼく以外、五年一組の生徒でこのことを知る人はいない。
ギュービットが忘却魔法をかけたから、皆あの出来事は覚えていない。
けれども、もし何かの拍子で記憶が戻り——黒鳥さんが真実を告げたなら、恐らく全員が全員、冗談だと笑うだろう。
だけど、もしも彼女の話を無条件で信じたら。
ぼくは、失う。
大切な、仲間を。
自分自身の信頼を。
生涯回復することができないほど、深い溝を作るだろう。
それこそ、魔法でも修復不可能な溝を。
誰も口を利いてくれないかもしれない。
苛められるかもしれない。
大好きな皆から、いじめを受ける恐怖。
想像するだけで、血の気が引いていく。
目の前が、真っ暗になる。
幼稚園の年長さんだったころ、ぼくは乱暴な男の子にミニカーを奪われた。大切なものを奪われたとき、とても悲しかった。
それと同時に、強い怒りに飲み込まれている自分が、確かにいたんだ。
あのとき、「またパパとママにねだれば買ってもらえる」と考えていたら、ぼくはあんごるもあの誘いに乗ることはなく、黒魔法を知らずに成長したかもしれない。
過去、現在、未来を自由に行き来できる魔法があるのなら、ぼくは全ての魔力を失ってでも、あの瞬間に戻りたい。そして、自らの過ちを食い止めたい。
けれど、それは不可能な話だ。
冷や汗でびっしょり濡れたパジャマを脱いで別の服に着替え、再びベッドに入る。

「おやすみ、だねぇ」
「いい夢を、だねぇ」

自分を落ち着かせるために、ひとりごとを呟いて、ゆっくりとまぶたを閉じた。


Page:1 2



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。