二次創作小説(紙ほか)
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- ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver]
- 日時: 2017/07/08 20:35
- 名前: サンセットドラム (ID: eqvLcwt4)
題名通り、ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜のリメイクです。
〜注意〜
・グロ&下ネタ注意報
・更新遅いかも(マイペースです。)
・荒らし,悪口はおやめください
・リメイク前とキャラ設定が違うキャラがいます
・ポケダン空に沿って話を進めていきますが、たまにオリジナルの話が入ります。
〜お知らせ〜
特になし
サンセットドラムという名前でツイッターやってるのでよかったらフォローお願いします。
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.14 )
- 日時: 2017/07/08 20:30
- 名前: サンセットドラム (ID: eqvLcwt4)
第4話 夕日の沈む海岸で
*
海岸へ向かった少年の姿が見えなくなった頃、2匹のポケモンがトーテムポールの陰から顔を出した。
「おい、ズバット。今の見たかよ。」
紫色のボールのような形をし、所々体に空いている穴からガスを噴出しているポケモンは、ズバットと呼ばれた隣の目のないこうもりポケモンに声をかけた。
「ああ。もちろんだぜ、ドガース。」
ズバットはウインクする代わりに片耳をパタッと折った。
「さっきウロウロしてたヤツ・・・。アイツなんか持ってたよな?」
「ああ。ありゃあきっとお宝かなんかだぜ。」
2匹はさっきまで少年が居た所を見つめると、互いに顔を合わせてニヤッとした。
「狙うか。」
「おう。」
2匹は気配を絶ちながら少年の後を追った。
*
「わぁ〜!すごーい!!」
海岸に着いたボクは、思わず感嘆の声をあげた。
ボクは砂浜に手を着いて座ると、目に映る夕景をじっくりと味わった。
最近知ったのだが、ここは天気が良いといつもクラブという蟹ポケモン達が夕方に泡を吹く。夕日の海にたくさんの泡が重なって、いつ見ても本当に綺麗なのだ。
ボクはゆっくりと沈んでいく太陽の光を体全体に受けながら、安堵のため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
ボク、落ち込んだ時は決まってここに来るんだけど・・・今日も来てみて良かった。ここに来ると、いつも元気が出てくる。
「・・・・・・・・・・・・・。」
ボクはまたもや「遺跡の欠片」を取り出し、なんとなく夕日にかざしてみた。
・・・実は、この「遺跡の欠片」を拾ったのはこの海岸なのだ。大嵐でどこからか流されてこの海岸にたどり着いたところをボクが見つけて・・・・そう、確か今ボクが居る場所から左へ進んだ、洞窟の近くの微妙な大きさの岩の近くに落ちていたんだ。
「また何か落ちてないかな?」
そういえば昨日の夜も大嵐だった。宝島の地図が入ったビンとかそういった物が流れ着いているかもしれない。想像するとわくわくしてきた。
ボクは勢い良く立ち上がり、あの岩へ走り出そうとした。しかし、視界に洞窟とあの岩が入ると同時に、岩の近くに「何か」が落ちているのに気がついた。
「・・・・なにあれ。」
ボクは、目を凝らしながら恐る恐る「何か」に近づいた。結構大きめの「何か」は、まるで息をするかのようにゆっくりと上下に動いていた。少なくともビンではなさそうだ。
・・・・・いや、待って。
「あれ・・・生き物だよね・・・?」
しかも、見た感じポケモンではなく人間。人間が海岸で倒れているということは・・・・。
ボクは若干砂浜に足をとられながら、慌てて走り出した。
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.15 )
- 日時: 2017/08/06 21:16
- 名前: サンセットドラム (ID: eqvLcwt4)
第5話 夕日の沈む海岸で2
「ねえ!キミ、どうしたの!?大丈夫!?」
ボクは仰向けに倒れている少年のもとへ飛んでいくと、肩をガシッと掴み、激しく揺さぶった。それに合わせて少年の頭が力なくガクガクと揺れる。
「ねえ!!聞こえてる!?」
もう一度呼びかけてみるが、相変わらず少年の目は固く閉じたままだ。目の前や耳元でぱちぱちと手を打っても、ピクリとも動かない。死んでるのではないだろうか。しかし、呼吸はしているようだ。胸が上下に動き、鼻からかすかに息も漏れているのがわかる。
「おーい!死んでる?生きてるよね?返事してよー!ねー!」
今度は頬をぺちぺちと叩いてみた。さっきよりも激しく揺さぶってみたりもした。しかし、少年が起きる気配は微塵も感じられない。
「よーし。こーなったら・・・・!」
ボクは、大きく深く息を吸い込んだ。
ここまでやっても起きないなら、ボクの自慢の大声でびっくりさせてやろう。これならきっと起きるだろう。
しかし、タイミングが良いのか悪いのか。ボクが大声を出す直前に、運悪く少年は目を覚ましてしまった。少年の少しキツそうな青い猫目が、夕焼け色の空をぼんやりと見つめる。
(なんで今起きちゃうの!!)
ボクは心の中で必死に叫んだ。顔は多分不安と焦りで泣き笑い状態。
ごめんよ、少年。ってか耳塞いで!
しかし、そんなボクの心の叫びなど届くはずもなく。
「起きろおおおおぉぉぉっっっ!!!!!!」
「ぎぃやああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
丁度起き上がろうとしていたのか、少年は上半身を少し起こした状態のままボクに負けないくらいの悲鳴をあげ、固まった。そして、その体勢のままカサカサと後ずさった。目にうっすらと涙を浮かべながら何かを言おうとしているが、全く言葉になっていない。
そんな少年の様子を見て、本当に申し訳ないが笑いがこみ上げてきてしまった。
「えっとゴメンね・・・・・ぷっ・・くくく・・・。」
謝ろうとしたが、我慢できずに吹き出してしまった。しかもその後笑いは収まるどころかますます酷くなっていった。
・・・・いや、だって・・さっきの動きがなんかゴキブリみたいで・・・・。
すると、今まで恐怖を湛えていた少年の目は、一瞬のうちに殺意のこもった目へと変わった。まだ涙目ではあったが、顔は怒りで赤く染まり、目尻はキッとつり上がっている。
「え、ちょ待って・・・!本当にゴメンって!怒らないで・・ブフォッ。」
うわああああああっ!!
さっきの記憶がフラッシュバックしてしまい、ボクはまたもや盛大に吹き出した。少年が舌打ちした音が聞こえたような気がする。
ああ、ヤバイな・・・・・・・と思ったのも束の間。
「おぶうおっ・・・・!」
みぞおちに鋭い蹴りが入り、ボクは2、3メートルほど吹っ飛んだ。背中、尻、頭の順に体を砂浜に打ち付ける。
・・・なんだ。声かけても全然起きないから心配したけど、すっごく元気じゃん。
ボクは少しの間仰向けに寝っ転がりながら夕焼け色の空を見つめていたが、やがて、鈍い痛みを堪えながらゆっくりと立ち上がった。痛みで若干涙目になりながら、少年に歩み寄る。
一方、さっきまで目角を立てていた少年は、予想外に吹っ飛んだボクを見て罪悪感を感じたのか、その場でアワアワとしていた。自分より少しだけ高い位置にある顔を覗き込むと、少年は申し訳なさそうに目を逸らした。
「えっと、さっきは本当にゴメンね。」
そんな少年にボクは今度こそしっかり謝ると、笑いかけながら右手を差し出した。
「ボク、ナツヤ。よろしくね!」
夕暮れ時の海岸はとても静かで、優しい波の音だけが響いていた。
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.16 )
- 日時: 2017/08/14 00:45
- 名前: サンセットドラム (ID: t5agwx1g)
第6話 夕日の沈む海岸で3
*
「ナツヤ」と名乗った少年は、笑顔でオレに右手を差し出した。好奇心に満ちたような、キラキラとした赤い両目がオレの顔をじっと覗き込む。さっき思い切り蹴り飛ばされたというのに、不思議なことに、その純粋な子供のような瞳からは全くと言っていいほど怒りを感じられなかった。本当に何とも思っていないのだろうか。だとしたら、変なヤツだ。
とりあえず握手をしようとしないのは失礼なので、心の中で首を傾げながらも右手を差し出した。しかし、もう少しでナツヤの手に触れそうだったオレの手は宙で動きを止めた。相手の顔に向けるはずだった目は、周りの景色に奪われる。今更だが、オレはある重要なことに気がついた。
「ここ・・・・・どこ・・・・・?」
オレは伸ばしていた右手を引っ込め、辺りをキョロキョロと見回した。
一面に広がる柔らかい砂浜に、打ち寄せる穏やかな波。夕日で橙色に染まった海と空。それに重なる無数の泡。
未知の場所に戸惑いを隠し切れないオレを見て、ナツヤは相変わらずの笑顔で口を開いた。
「ここはね、海岸って言うんだよ。」
「は!?い、いやいや!ここが海岸ってことくらい分かってるわ!!バカにしてんのかっ!!」
想定外の返答に、オレは思わず鋭いツッコミを入れる。
「ここってどこの海岸なんだろうって思っただけ!」
「あ〜!なるほどね!」
ナツヤは安定ののんびり口調でポンと手を打った。その様子を見て、オレは小さくため息をつく。
これはあれだ。頭の中が広大なお花畑すぎて、会話が成り立たないヤツだ。
「・・・にしても、こんなとこ見たことねぇな。ここって地図でいうとどこらへんの位置にあるんだ?」
オレの問いにナツヤは目をパチクリとさせると、顎に手を当てて唸りながら考え込み始めた。これは嫌な予感しかしない。オレの顔は引きつっている。
「・・・・・えっと、右・・・?」
そう言いながら、ナツヤは真っ直ぐと左を指差した。オレは引きつった顔のまま固まる。
「・・・あの、どちらでしょうか・・・。」
「あっ!左だ!左左!!」
ごめんごめんとナツヤは照れながら頭を掻いた。しかし、その直後には「あれ?右かな?」と首を傾げていた。
「う・・・もうどこでもいいや・・・。」
呆れて遠い目で水平線を眺め出したオレの背中を、ナツヤはバシバシと叩き始める。
「まあ、ここは島国だからね〜。海に囲まれちゃってて海岸いっぱいあるから、ボクよくわかんないや。あはははは!」
「うん、オレもよくわかんないなあー。あはははは。」
全く感情のこもっていない返事をするが、もちろんヤツは気がつかない。いや、そもそも聞いてないか・・・。
「いや〜、ボク昔から地理苦手でさ〜。なんか方角とかよくわかんないんだよね。」
「いやそれ以前の問題だわ!!方角は右左じゃなくて東西南北!!ってか、まずオマエ何者だよ!!!」
「え?ナツヤだよ。」
「そうだけど・・・・・。」
「さっきちゃんと自己紹介したじゃん。変なのー。」
(オマエに言われたくねーよ。)
なんなんだろうコイツのアホ具合は。なんというか、天然というものを超えている。とりあえず、ヤバイことには変わりないからもう関わらないことにしよう。
オレは愛想笑いを作ると、じわじわと少しずつ後ずさりを始めた。背後に小さな洞窟がある。少し異様な雰囲気がするが、そこに逃げてしまおう。
しかし、オレの足はナツヤの言葉によって止まってしまった。
「そういえば、キミの名前聞いてなかったね。なんていうの?」
またもや純粋な赤目がオレを見つめ、止まってしまった足を再び動かすことはできなかった。
オレはため息をつくと自分の名前を相手に告げた。
「オレの名前は・・・スバルだ。」
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.17 )
- 日時: 2017/08/15 01:25
- 名前: サンセットドラム (ID: t5agwx1g)
第7話 夕日の沈む海岸で4
「へえー、スバルっていうの。」
オレの名前を聞いたナツヤは、ほうほうと言いながら腕を組んでうなづいていた。
「珍しいね。ここら辺じゃあまり聞かない名前だよ。」
「オレもナツヤって人初めてなんだけど。」
「ホント!?すごいね!同じだ〜!」
嬉しそうな顔をしたナツヤは「いえーい」と歓声をあげながら右手を挙げた。目を輝かせながら、無言で「ハイタッチ!ほら、ハイタッチ!」と訴えてくる。「ここがどこなのか」という質問の答えに、まだ納得のいっていないオレはナツヤのテンションについていけず、小さく「わーい」と言いながら仕方なく右手を挙げた。2人の手が重なるのと同時に、パチンッという軽い音が海岸に響き、じわじわとした痺れが右手を駆け巡る。オレの顔は多分死んでいる。
「じゃあ、これからボクのこと『ナツヤ』って呼んで!ボクはスバルのこと『スバル』って呼ぶから!」
「お、おう・・・・・・・・・・!」
コイツ・・・これからもオレについていく気か・・・!
この先もコイツと会話らしくない会話をしていかなくてはならないのかと思うと、申し訳ないが眩暈がする。
そんなオレの心の声など知ることもなく、目の前に立つ少年はオレの手を取り、ブンブンと握手をしている。
「いや〜、ここに来て人間の友達ができたのは初めてだよ〜♪」
ナツヤは心底嬉しそうだ。無駄に大きな握手も止めようとしない。オレの右手はさっきから激しい握手によって迷走している。
「あの、ナツヤ?そろそろ握手止め・・・・・
え・・・・・・・・・・?
「オマエ、今なんて・・・・・?」
「え?いや、ここで人間の友達ができたのは初めてだな〜って・・・。」
待て。どういうことだ。
オレはぽかんと口を開けて固まった。
「ここって・・・オマエの他には人間いないのか・・・?」
ナツヤはオレの目を真っ直ぐと見ながら大きくうなづいた。自分の口から、「ひっ」と小さな悲鳴が漏れた。
「ここ、ポケモンだらけだよ。」
「ポケモンって・・・!あのピカチュウとかそういう・・・!」
「そうそう。ポケモンポケモン。」
当たり前かのように答えるナツヤを見て、オレは寒気を感じた。
いったい何があってこんなことに・・・。
「あ、そうだ!」
ナツヤは手をポンと打つと、オレの足元を指差した。さされた場所を見ると、そこには何とも言えない微妙な大きさの岩が生えていた。
「キミ、ここで倒れていたんだよ。」
「は?」
倒れていた?オレが?
ナツヤの言葉が上手く飲み込めない。オレは小さく唸り声をあげながら腕を組んで考え込んだ。
倒れていたとはどういうことなのだろうか。不思議なことに、起き上がる前の記憶は綺麗さっぱりと消えていた。
「ど、どういうことだ?なんでオレは倒れてたんだ?」
「いや、ボクに聞かれても・・・ねぇ・・・。」
オレの質問に、さすがにナツヤも困った顔をした。
まあ、無理もないか。オレが知らないのだから、コイツが知らなくても仕方ない。
「うーん・・・でも、昨日の夜嵐だったからさ。それで流されてきちゃったんだと思うよ。」
「マジか!昨日嵐だったのかよ!」
「え?」
オレの受け答えに、ナツヤは眉をひそめた。予想外のナツヤの反応に、オレはきょとんとする。
「嵐だったの、知らないの?」
「あ、ああ。なんか起き上がる前の記憶がスッポリ抜けてて・・・。」
「記憶喪失?」
「・・・多分、そういうことだと・・・。」
それを聞いたナツヤの表情がどんどん険しくなっていく。何か気に障ることでもしただろうか。
「ねえ。」
訝しむような赤目が、オレの目をじっと見つめる。
「もしかして、キミ・・・・・ボクのこと、油断させて騙そうとしてる?」
「はいっ!?」
まさかの疑われていた感じ!?
かけられた疑いを晴らそうと、オレは慌てて両手を振った。
「ないないないない!!絶ッッ対ない!!騙そうだなんて考えてねーよ!」
しかし、なぜか急に牙を剥きはじめたナツヤは、目角を立てながらぐいっと詰め寄ってきた。それに合わせて、情けない声をあげながらオレが後ずさる。
「ボク、騙されないから!騙されないんだからね!!」
ナツヤのオーラに圧倒されたオレの口からは、うめき声でさえ消え去った。
しかし、こっちだって負けていられない。疑われてたまるもんか。
目を吊り上げて、ナツヤにぐいっと詰め寄る。
「だから!騙そうとしてねぇって言ってんだろアホ!!」
「絶対怪しいよ!記憶喪失とか!『スバル』って名前変だし!!」
「どこが!!オマエ今すぐ二次元含めて全国のスバルに謝れ!!」
「じゃ好きな料理言ってみなよ!」
「スペアリブ!!」
「へ。あ、そうなの。へぇ。」
思わぬナツヤの薄い反応に、オレは思わずずっこけた。
さっきのあの暑苦しい雰囲気はどこへ行ったのか、ヤツは「ふんふん。ほうほう。へえへえ。」と呟きながら、ほわほわと何かを考えている。
「あの〜・・・・・。」
「うん。キミ、どうやら怪しい人じゃなさそうだね。」
「へ?」
よくわからない。非常によくわからない。
オレは、ナツヤの出した答えに呆気にとられた。
「あの、そこはもうちょっとオレのこと疑おうぜ・・・?『なんで記憶喪失なのに名前覚えてるの?』とかさ・・・。しかもなんで好きな料理聞いただけで怪しくないって・・・。」
「え〜だって、スペアリブが好きな人に悪い人なんていないよ〜。」
あっけらかんと答えるナツヤを見て、オレは思わず苦笑いをこぼす。
「そういうもん・・・?」
「うん!」
「・・・・・・・・・・。」
「何?ホントはキミ、悪い人なの?」
「いや、違うけど・・・・・。」
「でしょ?」
「・・・・・はい。」
ダメだ。すっかりあの変人のペースに巻き込まれてしまった。
しかし、この短時間で色々あってこちらまで頭がおかしくなりそうだったが、どうやらオレへの疑いは晴れたようだ。『終わり良ければ全てよし』といったところだろうか。本当によくわからないが。
そして、オレの脳内の『納得のいかないことリスト』には、新たにスペアリブが加わったのだった。
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.18 )
- 日時: 2017/12/31 15:33
- 名前: サンセットドラム (ID: NtGSvE4l)
第8話 夕日の沈む海岸で5
「さっきは疑ってごめんね。」
目覚めて早々怪しまれた時はかなり驚いたが、申し訳なさそうに笑いながら右手で頭を掻くナツヤを見て、オレは安堵のため息をついた。
それにしても、さっきのナツヤのオーラといったら凄まじいったらありゃしなかった。オレはスペアリブのおかげで助かったのだ。内心複雑だが、「別にいいよ」とこちらも微笑みながらスペアリブの生みの親に一生感謝し続けることを誓った。
「…というのも、最近悪いポケモンとか人が増えててさ…。いきなり襲ってくるのもいるし…なんか物騒なんだよね〜…。」
そう言うと、ナツヤは肩を落とし俯いた。その顔からは事の深刻さが読み取れる。
ああ、よりによってこんな治安の悪そうな所に流れ着いてしまうだなんて、自分はだいぶ運の無いやつだなと思う。
「こんなに綺麗で穏やかな所なのに…大変なんだな。」
オレは苦い顔をすると、ナツヤと同じように俯いた。
静かな海岸の浜辺に、夕空をのんびりと飛ぶ鳥ポケモンの影が複数映っている。
「…………………っ!?」
突如背後から沈黙を切り裂くような禍々しい気配を感じ、オレは顔を上げ、勢いよく振り返った。ほぼ同時に、洞窟の近くの大岩から2匹のポケモンが飛び出し、襲いかかってきた。ナツヤは全く気がついてないようだ。
「ナツヤ!危ない!」
自分に襲いかかるこうもりポケモンの攻撃をかわしつつ、声を限りに叫ぶ。しかし、少し遅かったようだ。「え?」と間抜けな声を出すナツヤに、もう一方の薄紫の体が勢いよくぶつかる。
「痛っ!!」
悲痛な叫びとともに、ナツヤは波打ち際まで弾き飛ばされた。その時、ナツヤのズボンの右ポケットから、手の中に収まるくらいの大きさの石が飛び出した。それを見た薄紫のポケモンはケケッと嗤うと、立ち上がろうとするナツヤにゆっくりと近づいた。
「おっと、ごめんよ。」
反省の色が全く見られないような、むしろ馬鹿にしたような声色に腹が立ったのか、ナツヤは目にうっすらと涙を浮かべながら頬を膨らませた。
「なんなの!いきなり!」
「ヘヘッ、わからないのかい?」
先程オレに攻撃をしかけてきたこうもりポケモンは、挑発するかのようにナツヤの周りをひらひらと飛び回った。
「オマエに絡みたくてチョッカイ出してるのさ。」
「ええっ!?」
ナツヤは攻撃を食らった腰の辺りをさする手を止め、目を丸くした。
うわぁ。早速悪そうなポケモンが現れたな。しかも絡みたくてチョッカイを出した割にはだいぶ強烈なタックルだ。
「それ、オマエのもんだろ。」
薄紫のポケモンは、体から吹き出るガスのような気体で自分とナツヤの丁度間に落ちている石を指した。
「ああっ!それは!!」
「悪いがこれは貰っておくぜ。」
薄紫はガスで石をひょいと持ち上げると自分のもとへと手繰り寄せ、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
その様子を放心状態でナツヤは眺めていた。どこか悲しげな感じのするぽかんとし顔で右手を伸ばしている。恐らく、動揺と先程のダメージで足が動かないのだろう。
「ケッ、てっきりすぐ奪い返しにくると思ったが…なんだ?動けねぇのか?」
まるで時間が止まったかのように動きを見せないナツヤに向かって、薄紫はあっかんべーをした。
「意外と意気地無しなんだな。」
ナツヤが一瞬、ギクッと肩を震わせる。視線を徐々に砂浜へと落としていく。
その様子を見て満足したのか、薄紫はまたもや嫌な笑みを浮かべながら、「さっ、行こうぜ。」とこうもりに声をかけた。
「じゃあな、弱虫くん。ヘヘッ。」
こうもりも薄紫と同じようにあっかんべーをすると、ナツヤの耳元で何かを囁いた。それを聞いたナツヤは顔を赤くし、怒りで肩をわなわなと震わせている。
意地の悪い2匹のポケモンは揃って高笑いをすると、近くの小さな洞窟の中に姿を消した。