二次創作小説(紙ほか)
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- 鳳翔さんの台所 2 艦これ (クロスロード)
- 日時: 2017/06/28 13:12
- 名前: ルシファ・マーシャ (ID: 9fiZbYIX)
違和感の正体。
手を開いた。
包丁の柄に、おかしなくぼみがある。
よくよく観察してさわってみると、それは、ちょうど包丁を握った形にくぼんでいた。
………あぁ
それは、長門が握った跡だった。
不器用な長門は、何やらおかしな力を入れすぎて、握った包丁の柄がくぼんでしまったのだ。
あぁ、あぁ…………あぁ。
次の瞬間、鳳翔の目には涙が溢れた。
脳裏に、傍で笑っていたあの笑顔、海を睨む凛々しい横顔、一緒に料理をした思い出、全てが鮮やかによみがえってくる。
堪えきれず、その場にしゃがみこんだ。
そこで、何やら自分の視線と同じ高さの所に、何かが挟まっていた。
もうしばらく開けてない扉の隙間。
紙だった。
震える手で、それに手を伸ばす。
二つ折りで挟まれていた紙を開く。
『幸せだった。
ありがとう。
感謝している。』
見覚えがある筆跡だ。
裏返す。
鳳翔へ、と書かれていた。
下には、長門、と書かれている。
鳳翔へ、の、へ、の所が丸くにじんでいた。
そして、その手紙が勿忘草の香りをまとい、勿忘草の押し花が挟まっている事で、全てを理解した。
長門はアメリカに旅立つ前、思い出のある台所にこの手紙を隠したのだ。
面と向かって渡すと、泣いてしまう、と。
挟むとき、長門は泣いていたのだろう。
二人で立っていた台所で、しゃがみ、鳳翔がいつか見つけてくれる事を願って、挟んだのだ。
泣きながら。
勿忘草の香り。
鳳翔は手紙を抱き締めた。
そこでやっと、長門がいなくなった事をしっかりと実感した。
声を上げ、泣き叫んだ。
泣いて、泣いて、悔やみ、悲しんだ。
泣き声を、降りだした梅雨の雨がかきけしてゆく。
勿忘草。
花言葉は
Don't forget me
私を忘れないで