二次創作小説(紙ほか)

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東方の小説
日時: 2017/07/24 22:47
名前: 無記名 (ID: .Gl5yjBY)

2014年頃にこのサイトで東方暁刃録を書いていた者です。
拙い文章ですが見て行って下さったら嬉しいです。


>>1-




-プロローグ







頭上の月は静かに一匹の狐を見下ろした。
血まみれの狐が一匹。
どこかの屋敷の庭に、静かに佇んでいた。
その体の周りは、血の池の如く真っ赤であった。
苦しそうに喘ぎながら己の雪のように白い体を紅に染めていく。
途切れ行く意識の中、朦朧と視界に映ったのは、
一面の銀世界の中、佇む一本の枯れた桜であった。

Re: 東方の小説 ( No.1 )
日時: 2017/07/23 12:46
名前: 無記名 (ID: .Gl5yjBY)




いつもと変わらぬ朝、一人の少女が目を覚ます。
小さな欠伸を一つ、大きな背伸びをしながら布団から気怠そうに起き上がる。
少女は寝間着を脱ぎ、胸にサラシを巻き付け、緑を中心とする服に着替えた。

障子を開けると柔らかく、冷たい風が少女の頬を撫でた。

いつもと変わらぬ一日が始まろうとした時、その視界の一角にイレギュラーな物が映った。
体をどっぺり血で濡らした巨体の白い狐が雪で埋もれかけているのである。

少女は目を見開いた。
その光景は、少女の眠気を吹き飛ばすには十分すぎる効果があった。
少女はその赤と白のコントラストが生み出す惨状を見て、思わず口を手で覆った。
慌てふためき右往左往する少女の背後から、桜色の髪の女性が現れた。
その女性は、ナイフのように鋭い眼光を瀕死の狐に向けていた。
しばらくの静寂の後、その女性は一つ呟いた。

「見ているんでしょう、紫。」

そういった刹那、少女と女性の間の空間が裂けた。
空間の裂け目から微笑みを浮かべながら、一人の女性が縁側に降り立った。
微笑みを浮かべていたのも束の間、紫と呼ばれた女性は突如として真剣な表情になる。
そして溜息交じりに一言、

「どうしましょうかね、この狐さん。」

手を口に当てながら対象を静かに睨む紫と呼ばれた女性。
その横の少女も事態が大事であると気づき、真剣な表情となった。
そして喉から絞り出したように呟いた。

「私はどんな命であっても見捨てる事はできません。」

すると桜色の髪の女性は柔和な表情となり、ポツリと呟いた

「私も見殺しは嫌いよ」

そう言うなり紫と呼ばれた女性は手をポンと叩き、血まみれの狐に手を伸ばしその狐の下の空間に穴を開けた。

すると刹那、狐が蟻地獄に落ちるが如くズブズブと穴に落ちて行っている。
完全に狐が穴に入ったところで、紫と呼ばれた女性は穴を閉じた。

Re: 東方の小説 ( No.2 )
日時: 2017/07/23 12:47
名前: 無記名 (ID: .Gl5yjBY)

後悔、無念、悔恨 、悵恨。
ありとあらゆる悔いの念が狐の脳内で怨嗟する。
何故無謀な戦いを挑んだのか、
何故勝てないと解っていて挑んだのか、
何故殺されると解っていて挑んだのか、

何故、何故、何故——

考える内に糸が切れた人形の如く思考がプッツリと切れてしまった。
幻の中で、己の愚かさを噛み締め、己の無謀さに腹を立てた。

刹那、覚めるはずの無い眠りが覚めた。

狐は、達磨が起きるかの如く物勢いで体を起こした。
そして、額を押さえた。

何かと衝突したのである。

涙ぐむ目を見開いてみると、眼前に、銀髪の少女が額を押さえて悶絶していた。
狐は目の前で起こっている現状を呑み込めずにいた。
見知らぬ部屋、見知らぬ少女、何故自分が生きているのか、
狐の思考回路を滅茶苦茶にするには十分過ぎる材料であった。
そして最大の謎は、自分が人の形をしているという事。
頭上にクエスチョンマークが浮かんでもいい程の混乱である。
その狐であった「男」は痛みで悶絶している少女に尋ねてみる事にした。

「小娘、聞きたい事が山ほどある。」

男は額を押さえながら少女に尋ねた。
刹那、男の隣の空間が、障子を破るかのように裂けた。
その裂けた空間から、金髪の美女が身を乗り出して微笑みながらこちらを見ている。
あまりにも予測がつかない事態であったため男は脱兎のごとく身構えた。
すると、美女が呆気にとられた顔になって男に言った。

「戦う気はないのよ、寧ろ助けてあげたんだから感謝して欲しいわね。」

呆気に取られていたのは男にも言える事であった。
酷く混乱していると、部屋の隅に縮こまっていた少女が口を開いた。

「白玉楼の庭にあなたが血まみれで倒れていて、紫様がここに運びました。」

すると男は何かを思い出したかのように目を見開いた。


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