二次創作小説(紙ほか)
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- 【ハイキュー!!】どうやら私は亡命したとある国の姫らしい。
- 日時: 2017/09/22 00:09
- 名前: はらみぃ (ID: 3UfV1S5J)
たまに、変な夢を見ることがある。いつだったかは忘れたが、時系列は今から数十年前。小さな少女の姿になった私は、可愛らしいドレスを身にまとい、誰かと一緒に笑いながら花畑を走り回っている。やがて、誰かが私の名を呼んで振り向くと「絶対に逃げのびてくれ、頼む」と、切迫詰まった声色で願う。
そこから景色は一変し、辺りが暗闇に染まると足場が無くなって、深い闇の底へ落ちるーーー…
………ごんっ!!
「ぅぐあぁっ……!!っつぅう、ベッドから落ちたあ…」
頭を抱えて、ゆっくりと起き上がるとベッドの近くのカーテンの隙間から眩い光。外からは雀の囀りが聞こえてくる。
「こんな天気のいい日に、なんて最悪な目覚め…。今日から初日だっていうのに、何だろう。厄でもまわってきたのかな?」
ブツブツと呟きながら、ベッドメイキングをする。寝相が悪いせいでかなりぐちゃぐちゃになっていた。更にベッドから何度も落ちるため、布団に変えたいと母親に何度も申し出た。しかし、答えは否。綺麗好きな母親は床に寝そべるだなんて考えられないのだそうだ。布団は唯一、日本にしかないものの一つであり文化なのにそれでいいのか、母よ。
そんな母親から「早くしなさい」との一声。そうだった、今日から新しい生活が始まるのに遅刻デビューで目立ちたくはない。急いで支度をしなければ。
クローゼットを開き、寝巻きから真新しい制服へ袖を通す。寝癖を直し、長い髪を二つに分けていつもの高い位置へと結ぶ。
「こんなもんかなー、後は持っていくものーっと…。……あっ」
鞄の中のポケットから生徒手帳を取り出す。これは編入手続きの時に写真を撮影して、つい先日教職員から受け取ったものだった。そっ、と手帳を開くと、自分の真顔の正面写真と学校名、名前と学年クラスが記されていた。
『県立烏野高等学校一年5組 吉備都 歩』
自分の名前を確認し終わると手帳を鞄にしまい、軽くステップを踏むかのように玄関へと向かう。
「じゃあ、行ってくるね!」
「あ、ああ!あゆ、あゆむ!」
「? なぁに、お母さん」
スリッパをパタパタと音を立てながら、玄関へと走ってきた母親の顔はまるで戦地に赴く一人息子を見送る母親のように眉間にしわを寄せ涙ぐんでいる。
「どっ、どうしたのっ?具合でも悪いの?」
「そうじゃないのよ…。この事はずっと黙っていようかと考えていたんだけど、あんたも十六だからもう大丈夫だと思うの」
「え…、何よ急に」
するとお母さんはガシッと力強く私の両肩を掴み、真剣な眼差しで話し始めた。
「……いい?あんたは【普通の一般人】じゃないのよ。それを今から他人には知られてはいけない、話してもいけないわ。ーーーーわかったわね?」
「うっ、うん…?」
こんな母親の顔は今まで見たことがなかった。私が頷いたのを見ると、いつもの明るい笑顔に戻り、「気をつけていってらっしゃい!」と優しく頭を撫でたのだった。
(私が、普通の一般人ではない)
登校中、ずっとその言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。一体全体どういうことだろうか。エイプリルフールじゃあるまいし、やるとしてもとっくに過ぎている。まさか、ずっとそれを隠してきたのなら、どうして今になって話すのだろうか?大好きな母親と距離を感じて嫌な気分になる。
…いや、考えるのはよそう。私にはこれから新しい生活が待っている、それを嫌な気分で始めたくはない。
「よーっし、走ろっ!!」
川辺に咲き乱れるたくさんの桜の道を、走る。風に揺られて散る花びらはまるで私を歓迎しているかのようだった。
そして、数十分後に私は母親の警告をすっかりと忘れてしまっていたのだった。
- Re: 【ハイキュー!!】どうやら私は亡命したとある国の姫らしい。 ( No.1 )
- 日時: 2017/09/22 00:55
- 名前: はらみぃ (ID: 3UfV1S5J)
「あっ、あの!吉備都サンッ!!」
「えっ? …私?」
「はっ、ハイ!!わ、私…っ、谷地仁花でありますっ!」
校門に差し掛かった時、突然背後から小さくて挙動不審な女の子が話しかけてきた。谷地仁花、という名前らしい。
「や、谷地…さん?だっけ。な、何で私の名前を?」
「あ、えとっ!私、同じ5組で!先生から事前に来ることとお名前は聞かされていたので!」
「そうなの?」
「私でよければ職員室と教室まで… …ハッ!で、でも見知らぬ女性が学校案内だなんて吉備都さんのような美人イメージが崩れっ…」
谷地仁花と名乗る少女はいきなりネガティヴ思考になり、考えがどんどん悪い方へと進んでいった。客観的に見れば彼女も小さくて可愛い系女子の類に入る。きっと笑顔も素敵な子なのであろう、その口から「破産」やら「【表示できません】売買」などと実にリアルでグロテスクな単語がぽんぽん出ている。面白い子だなぁとつい、にやける。
「お、落ち着いて、大丈夫だから。それにそんなに騒いだら目立つし、行こうよ!案内してくれるなら助かる!」
「ほっ、本当ですか!?」
「もちろん! …っていうか、同い年なのに何で敬語?別に、普通に話してもいいよ?」
「……いえっそうさせて下さい。立場上、案内係なのでっ」
「ふーん、そうなんだ?」
ぴしっと敬礼する谷地さんはまるで少年兵のように見えた。彼女が同じクラスなら、退屈せずに済みそうだ。
5組での自己紹介と質問攻めも終わり、時間は昼休み丁度だ。ぐうぅう〜っと胃が食物の補給を求めて音を鳴らしている。谷地さんに「会わせたい人達がいる」と言われ、連れられてやって来た屋上で三角巾で包まれたお弁当箱を膝に乗せ、その会わせたい人達が来るのを待っている。
「本当は室内がいいんですが、会わせたい人達の中に人混みが嫌いな子が居らっしゃいまして…、今回だけ許してください」
「こんないい天気なのに何で室内がいいの?毎日、此処で食べたいくらいだよ!」
「………危ない、から……」
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