二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 揺れる心は知っている
- 日時: 2018/01/06 10:46
- 名前: ニャンコさん (ID: 1xlwHmTN)
久しぶりの集合
あーあ、暇だなぁ。
私、立花彩はただいま冬休み中。何もすることがなくてとにかく暇!
宿題でもするか…
「彩!小塚君っていう子から電話よ!」
え?小塚君から?もしかして…
私はドアを開け、階段を駆け下りた。
ママから受話器を受け取ると、耳に押し付けドキドキしながら話し出す。
「どうかしたの?小塚君」
小塚君は探偵チームKZのメンバー。社会と理科が得意で、シャリの小塚って呼ばれてる。
小塚君はゆっくりと話し出した。
「若武から伝言。今週の土曜日、若武の家にいつもの時間に集合だって」
やった!久しぶりの集合だ!
みんなの紹介
土曜日。私が若武の家の玄関を開けると、そこに島崎さんが居た。
「あら、いらっしゃい。今日のお菓子は、マカロンでいいですか?」
わーい!
「はい!大好きです!」
私が、そう言うと島崎さんは
「良かった!もう皆さんいらっしゃっていますよ」
私が、階段を上がって行くと若武が飛び出してきた。
「遅い!何してたんだ!」
若武は成績に波がある。分かりやすく言うと、悪くなったり、良くなったりするってこと。だから、若武はウェーブの若武って呼ばれてる。特技は、えっと…
詐欺師の能力かな。
「あ、ごめんね。どれくらい遅れた?」
私が聞くと、書斎の奥で座っている上杉君が答えた。
「集合時間が1時30分。今は1時36分48秒。約6分48秒の遅刻だ」
さすが、数学のエキスパートの上杉君!
私がそう言うと、上杉君はプイッと横を向いた。その頬が少し赤らんでいる。
「若武、あんまりいじめんなよ」
そう言ったのは、黒木君。対人関係のエキスパートで、謎の一面を持っている。
「若武、何かソワソワしてるでしょ」
あ、翼も来てたんだ。私と翼は同じ学校に通っている。翼の字はタスクって呼ぶ。翼の顔はすごく綺麗。だから、美貌の翼って呼ばれてる。
それと、もう一人同じ学校に通っている子がいる。
名前は七鬼忍。ITの天才で、しかも先祖は妖怪!しばらく引きこもってたんだ。そして、小塚君。
この7人で探偵チームをしている。リーダーは若武。今回は何なんだろう。
今回の仕事
「よし、全員揃ったな。さて、諸君。君たちに新しい仕事を持ってきた」
うっ、また臭い芝居…
そして、上杉君がこう言った。
「けっ くだんねぇ」
若武がその言葉を聞き、上杉君に掴みかかろうとするのを黒木君が手で制し、話を続けろと目で訴える。
若武は舌打ちをし、話しだす。
「今度の仕事は、人気アイドル 香月桃華のガードマンだ」
脱力…
だってそうでしょ?!アイドルのガードマンだなんて中学生が無理に決まってるし、香月桃華なんて知らないし、そもそも、探偵の仕事じゃないし…
みんなも、私と同じ事を思ったらしく、面白くなさそうな顔をしている。
「ねぇ、若武。そんなの無理じゃない?だって僕達まだ中学生だよ」
小塚君がそう言った。
だよね。私も思う。
「馬鹿じゃねーの。目立ちたいだけだろ」
「そうだよ。絶対無理」
「若武、少し考え直せ」
みんなに一斉に否定されて、若武はぶすっと膨れながら忍のパソコンを取り上げた。
「サンキュ、七鬼」
忍は黙って頷くと、何かを考えている様子だった。
おかしなサイト
「諸君、これを見てくれ」
みんなが体を乗り出してパソコンの画面を見ると、香月桃華のサイトだった。
「…これが何だ」
上杉君が不機嫌そうに聞いた。
「その画面の右隅。よく見ろ」
香月桃華のガードマン募集中!
年齢 中学1年〜中学3年
…何これ!!
中学生って、しっかり載ってる!謎すぎるよ…
「何だこれ。普通サイトにこんなの載せねーぞ」
あ、そっち?まあ、たしかに妙だよね…
「若武、これもしかしたら偽のサイトかも。やめた方がいいよ」
うん、私もそう思う。
「いや、俺はやるぞ。こんなサイトに載せるって事は何か裏に事件があるかもしれない」
上杉君がイスをガタッとならし立ち上がった。
「俺、抜ける。こんなしょーもねーのやれるか」
そう言って上杉君は帰っていった。
「あいつ今日何かおかしい。俺も抜ける。あいつの事心配だから」
黒木君もか…
心配な事
家に帰ってからも、上杉君の事が気になった。
黒木君が言ってたように、今日はたしかにおかしかった。
大丈夫かな…
プルルルルルル
「彩!今、手が離せないから電話出て!」
はーい!
「はい 、立花です」
「やあ、アーヤ」
電話の相手は黒木君だった。
「黒木君!上杉君どうだった?」
私が聞くと黒木君は
「ああ…それが転校することになったらしい」
そんな!
「どうして?!」
「親の仕事の都合らしい」
上杉君の両親は医者だ。医者でも転勤なんてあるんだ…
「それで、香月桃華のガードマンの件は上杉も一緒にやる事になった。
明後日香月桃華の事務所に行くらしいよ。それと俺は行かないから。それじゃ」
うそ…上杉君が…
香月桃華の事務所
事務所に向かっている間、みんな押し黙っていた。
まあ、そうだよね…
「よし、着いたぞ」
そこは、とても小さな事務所だった。
中に入ると受け付けの女性に場所を聞き、指示された通りの部屋に入るとテカテカの髪をした男性がいた。
「やあ、いらっしゃい。まあ、入って」
全員座ったのを確認すると、男性はみんなに名刺を配った。
三上 勝義か…
「今日は来てくれてありがとう。桃華は今、隣の部屋にいる。後で紹介するよ
さて、君たちの名前は…」
勝義さんが言うやいなや若武が
「はい!若武です!こいつらのリーダーです!右から美門、小塚、上杉、七鬼
それで女の子が立花です!」
さっきまで、めちゃくちゃ暗かったくせに…
勝義さんが苦笑いしながら、全員の名前をつぶやいている。
「よし、覚えられそうだ。じゃあ、桃華を呼んでくるよ」
そう言って勝義さんが出ていった。
「俺が代わりに紹介してやったぞ。どうだ」
若武がそう言うと、上杉君がボソッとつぶやく。
「クソ迷惑だっつーの」
若武が上杉君の頭をこづく。上杉君がそれをかわす。
良かった。いつも通りだ。
「すまない。待たせたね」
そう言いながら、勝義さんは部屋に入ってきた。後ろに一人の女の子を連れている。
かわいい…!
整った顔立ち、綺麗なそのフォーム、腰まである長い髪、そして澄んだ青い目。
まるで絵本から出てきたような子だった。
「この子が桃華だ。母親はフランス人のハーフ」
ハーフかぁ。それでこんなに青い目なんだ。
「桃華が同い年じゃないと、いやだって言うんで中学生のガードマンって事さ。それと明日仕事がある。渋谷シティーホールのパーティー会場だ。午後6時に始まるからね」
事件発覚?!
事務所を出ると、上杉君が言った。
「あの桃華ってやつ、三上に何かされてるぞ」
なんで?
「俺も思った」
翼まで…
「ともかく、今から俺ん家行くぞ」
え?!今から?!
若武の家に着くと、みんながいつもの位置に座った。
「アーヤ、記録」
ハイハイ。
「じゃあ、まず上杉から話せ」
上杉君は命令されたのが気に食わなかったのか、若武を睨みながら話し出した。
「三上が桃華を連れてきた時、あいつの腕を力強く掴んでた。爪が深く食い込んで血が出るほど」
え、私全く見なかった。観察力すごいなぁ。
「ふむ、じゃあ次、美門」
翼は机に肘をつけながら話した。
「三上が言ってたでしょ。桃華が同い年が良いって言ったから中学生のガードマンだって。そんなワガママが通じるはずがないよ。ましてや、アイドルの腕に傷をつけるような奴」
そういや、たしかにおかしいね。
「じゃあ、七鬼」
忍は一瞬何かを考えている様子だった。
「サイトであんなのを載せるのはマジでおかしい。しかも、あんな隅っこで小さな字で」
それは、私も思った。
「じゃあ、アーヤ。今の発言で分かること」
私は慌ててノートに書いてあることをまとめた。
「えっと、まず三上は同い年だから選んだって言ってた。だけど、逆に考えれば子供だから選んだんだと思う。大人のガードマンとか、つけたら何かがバレたらダメだからとかじゃないかな。それに、腕に爪を食い込ませてたってことは、三上がバレたくないことって虐待とかだと思う」
若武は指をパチンと鳴らした。
「お、いい線いってる」
えへ、そうかな。
「明日の仕事はアーヤには危険だから来たらダメだ」
そんなぁ
「よし、今日はもう暗いし、これぐらいにして解散!」
すると、小塚君がこう言った。
「危ないからアーヤは送った方がいいと思うよ」
いや、私は大丈夫だよ。
「俺が送る」
そう言ったのは上杉君
「帰るぞ」
大好きな仲間
上杉君が家に送っていってくれる。
私はそれだけで嬉しかった。だけど、胸が苦しい。
チラチラと雪が降ってきた。
「着いたぞ」
上杉君がそう言った。
私は気になっていたことを聞いた。
「引越しの日っていつ?」
上杉君は少し黙って答えた。
「…明後日だ」
…うそ…明後日?
「じゃあ、明日は仕事だから会えないって事?」
上杉君は下を向いた。
「…どうして言ってくれなかったの?」
上杉君は何も答えてくれない。
「…なんで…」
私の目から大つぶの涙がこぼれ出す。
「立花…」
上杉君は驚いた顔で私の顔をのぞき込む。
「…私、上杉君が転校するって聞いた時すごく怖かった。上杉君がいなくなるっていうのが実感出来なくて…」
その時、何が起こったのか分からなかった。私は気づくと上杉君の胸の中にいた。
温かい…
寒い雪の中でもすごく温かい。
胸がドキドキする。時間が止まってほしい。いつまでも、ずっと…
仕事の日
私は朝からずっと布団の中にいた。
まだ胸が熱い。上杉君のことを考えると胸が苦しくてたまらない。
「仕事の日は今日、か…」
私は布団から出ると遅めの朝ごはんを食べた。
しばらくは、宿題をしていたが時計を見ると6時を指していた。
今頃はみんな…
私は上杉君に会いたくてたまらなくなってきた。
少しならいいよね…
私は渋谷シティーホールに向かった。
渋谷シティーホールに着き、入ろうとした。
「すみません、お客様。こちらに入るにはお支払いして頂かないと…」
お金取るのぉ!
しぶしぶ外に出ると、渋谷シティーホールの庭園から声が聞こえてきた。
よし!決めた!
私は庭園から忍び込んだ。
声の聞こえる方に進んでいくと男性が二人いた。一人は三上。もう一人は何か棒のようなものを持っている。よく見ると
け、拳銃?!
耳を澄ますと話している内容がよく聞こえた。
「ちゃんと狙ってくれよ。あいつには多額の保険をかけてる。あいつが死んでくれたら大金持ちだ」
え?!
最後の決心
狙っている先にいるのは、イスに座っている桃華だ。 そばにKZのみんなが立っている。
どうしよう…。
男が拳銃に手をかけると、カチャっと鈍い音をたてた。
その瞬間、桃華がイスから立ち上がった。
銃先にいたのは
「上杉君!」
桃華の隣にいた上杉君に銃先が向いている。
男が舌打ちをした。
バァーーーーーーーン!!
大きな銃声がした。
銃弾はまっすぐ上杉君に向かっている。
私は走り出した。
そして滑り込むように上杉君と男の間に立つ。
間に合った!
私がそんなことを思っているとすぐに肩に銃弾が入った。
熱い…!
肩が燃えるように熱い。
私はその場に倒れ込んだ。
「そんな!!」
「アーヤ!!」
「立花!!」
KZのみんなの声が聞こえる。
みんなが私にかけよってきた。
「おい!誰か、救急車呼べ!!」
「あの男、逃げた!」
「追いかけるぞ!」
ほかの人たちの声も少しずつ小さくなっていく。
上杉君がタオルを私の肩に巻き付ける。
「大丈夫だ。俺がついてる」
「俺たちな!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔でも、若武はいつも通り。
遠くから救急車のサイレンの音がする。
私はその中で意識が薄れていった。
目覚めの時
…ここどこ?
周りを見回すと、病室らしい。窓の外が妙に明るい。
「あ、起きた」
黒木君が入ってきたので体をおこそうとする。
っ重!
え?何?こんなに体って重かったけ?
「無理しない方がいいよ」
そう言いながら黒木君は私をベッドに横にし、ナースコールを押した。
「はい、起きました。…はい、分かりました」
黒木君はカバンからスマホを取り出した。
「じゃあ、ちょっとみんなに報告するよ。ここ通話禁止だから」
部屋から出ていった黒木君を見送る。
5分も経たないうちに、ママがきた。
「もう、あんたって子は!心配させないでよ!」
ママは泣きながら言った。
「…ごめんなさい」
ママってこんなに髪の毛長かったっけ…
何かがおかしい。さっきからずっと感じてる。
その後に、KZのみんながやってきた。みんな半袖に短パンだ。
「お前なぁ、自分だけ目立とうとするのやめろよな」
若武も目がうるんでる。
やっぱり、変だ。
眩しすぎる外。
髪の毛が長くなったママ。
そして、半袖に短パン。
「ねぇ、小塚君。今って何日?」
小塚君はしばらく困ったように、目をキョトキョトしていたが考え込み答えてくれた。
「…16日。7月の…」
え…7月…私が撃たれたのは1月。ってことは…
「半年間、眠ってたんだ」
忍…そんなスパッと…
「立花。俺、ずっと待ってたんだぞ。医者に二度と目が覚めないなんて言われても…」
うん…
「…上杉君、引越しは?」
「んなもん、お前がこんな状態の時に行けるかっつーの。行ったのは親だけだ」
そう、なんだ…
良かった…
「ねぇ、アーヤ。忘れてる事あるでしょ」
え?なんだろ。
「7月って事はもう俺たち中二だよ。それまでの勉強は?」
あ。あぁぁぁぁぁぁぁ
どうしよう!どうしよう!今からじゃ間に合わない!
「仕方ねぇなぁ。俺達の得意分野の分だけ教えてやるよ」
ほんと?!
「こうでもしねぇとお前、絶対無理じゃん」
「だな」
「ちょっと無理かな」
「うん」
「たしかにね」
もう!みんなでバカにして!
でも、ありがとう!