二次創作小説(紙ほか)
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- ぬらりひょんの孫 影からの刺客 中編
- 日時: 2018/10/15 15:50
- 名前: 白銀 (ID: vlinVEaO)
皆さんこんにちは。白銀です。
前回に引き続き今回もぬらりひょんの孫の夢小説を書いていこうと思います。
読者の方々あってこその作家なので、できるだけ多くの方に読んでいただけるように頑張っていきます。
↓どうぞご覧ください。
リクオ達は鴆の屋敷の中に駆け込んだ。屋敷内は部下たちが慌てふためきざわついている。
「鴆・・・・・・・・!」
襖を開き目の前に広がる光景は残酷だった。
畳には夥しい血液、大量の輸血袋、血に染まった包帯、止血帯、そして部屋の真ん中で力なく横たわり小さく胸を上下させている鴆がいた。
「鴆様・・・・・・」
リクオは鴆の近くに座り、そっと手を取った。意識がない鴆の手は握り返されない。
「鴆・・・・・・・・俺たちが必ずお前にこんなことをしたやつを見つけ出す。だから待っててくれ」
一瞬鴆がリクオの手を握り返した気がした。リクオは鴆の手を離し布団の中にそっと入れた。
「・・・・・・・・行くぞ、草の根をかき分けてでも必ず見つけ出し、俺の前に差し出せ」
「御意」
リクオ達はそれぞれ各方面に散った。文字通り草の根をかき分け。だが何日も探し回っても手掛かりをつかむことはできなかった。
「これだけ探しても見つからねぇなんて、下手人は相当な手練れだな」
「だとしても必ず見つけ出すのが私たちの役目よ」
「リクオ様は、何をしておられるのだ?」
「少しでも時間が取れれば下手人探しか、鴆様のお傍に居られる」
青田坊、氷麗、黒田坊、首無の四人は奴良組で使用している携帯型端末で会話していた。最近はほとんど全員集まっていることはない。
「リクオ様には少し休んでほしいのだがな・・・・・不眠不休が何日も続いたこのままでは、そのうち倒れられてしまう・・・・・」
「しかし拙僧達が何を言ったところでリクオ様は聞く耳を持たないだろうな・・・・・」
「昼の姿も夜の姿もすべてを受け入れたうえで鴆様はリクオ様と義兄弟の盃を交わした一番最初のお方。大事な方を傷つけられ許せないという怒りの感情がある今では、疲れなど微塵も感じていないのね」
四人の間にしばらく沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは青田坊だった。
「リクオ様に早く休んでもらうためにも、俺たちが見つけちまおうぜ」
「そうだな(ね)」
四人は再びそれぞれに散り、犯人を捜し続けた。
そのころ、リクオは意識がいまだに戻らない鴆の傍にいた。
「鴆・・・・・・・お前は犯人を見たのか?心当たりはあるのか?」
そう問いかけても鴆から答えは返ってこない。意識が戻らないまま一週間以上経過している。
このままでは犯人は見つからないまま鴆の意識も戻らないのではないか、そんな気持ちがよぎり、不安と焦りが募っていく。
「鴆・・・・頼むから、目を覚ましてくれ・・・・・」
鴆が倒れたという報告を受けた翌日、急遽幹部総会を開き、鴆以外の幹部を本家に招集した。
まず最初に、木魚達磨が口を開いた。
「急遽の総会とは、それほど重要なことが何か起きたということですかな?総大将」
「おいおいあの病弱な若造が来てねぇぞ?大事な総会に顔を出さねぇなんていいご身分だな」
一つ目入道のその言葉を牛鬼が戒める。
「やめないか一つ目、鴆はもともと体が弱く、総会に来れないこともしばしばあっただろう。して総大将、鴆が来ないまま始めてもよろしいんで?」
「鴆は来ない、今日の議題はここにいない鴆についてじゃ」
「ふん・・・・・・ついにくたばっちまったか?」
「よさんか一つ目!縁起でもない」
一つ目の言葉を木魚達磨が制し、場は静まり返った。
「鴆が昨夜何者かの襲撃に遭い、今もまだ意識が戻っていない状態じゃ」
「!!」
その場が一気に凍り付いた。最初に口を開いたのは牛鬼だった。
「犯人の目星はついているのですか?」
「今のところはついていない、何せ目撃者がおらんからのぅ」
「側近の一人や二人、ついていなかったんですか?」
「いなかったようじゃな、一人で蔵で探し物をしていたようじゃ」
「幹部としての自覚が足りなかったんじゃねぇのか?護衛の一人もつけずにうろうろするなんざ考えられねぇ、だからこんな事になったんだろう」
確かに一つ目は正論を言っている。だが現場は、自らの屋敷内。
屋敷の中でも護衛をつけるかと聞かれればいいえと答えるものがほとんどだろう。だが今はそれを言える空気ではなかった。
まして鴆は、誰かに後をつけられたりすることを嫌っていた。
下手人はそこに付け込んだのかもしれない。
「幹部は帰宅せず本家にとどまるように、それぞれ護衛をつける。よいな」
「御意」
幹部たちが声をそろえて言ったあと、牛鬼が問う。
「若はどこに居られるのですか?」
「リクオなら、犯人を捜しているか鴆の傍に居るじゃろうな」
「リクオ様自ら探しておられるのですか?いささか危険ではないでしょうか・・・・・・・」
「わしは止めたんじゃがな・・・・・聞く耳を持たんかったわ」
(リクオらしいな・・・・・大切な仲間のために自らの危険を顧みずに動くところは・・・・・・)
「この牛鬼、下手人探しに協力させていただきます」
「すまぬな、牛鬼」
牛鬼は一度頭を下げ、すぐに動き出した。
「牛頭、馬頭、居るか」
「「はい、何用でございましょうか、牛鬼様」」
「鴆の暗殺を企てたもの、そして実行したものを探し出せ」
「「仰せのままに」」
二人は鴆に何があったのか知りたくなったが、黙って任務に向かっていった。
「ねぇ牛頭・・・・・大丈夫なのかな?」
「何がだ?」
「暗殺の実行犯がいるってことでしょ?無事なのかなって・・・・・・」
牛頭と馬頭には鴆に看病されたことがある。四国八十八鬼夜行の時だ。
「俺たちが考えたってどうしようもねぇだろ、今はとにかく犯人を見つけ出すことが先決だ。あいつなら大丈夫だろ、そう信じるしかあるめぇよ」
「うん・・・・・そうだね」
(もし無事だったら、お見舞い行こうかな・・・・・あの時のお礼もかねて・・・・)
馬頭はそんなことを思い任務に向かった。
そして一週間以上経過した今に至る。
ぬらりひょんは再び総会を開いた。
「まだ下手人は見つかってないんですか?あれから何日たっても手掛かり一つつかめてないですね、一体何をしているんですか?」
一つ目が嫌味のように言う。
「本家からは首無たち、私たちからは牛頭と馬頭が調べている」
「それだけの人手を使っても見つからないとは・・・・・・相手がよほど優秀なのか、はたまた捜査している者たちが無能なのか・・・・・」
「やめろ一つ目、手助けしていないお前が言えたことではないだろう」
「何だと!?」
険悪な空気が広がる中、姿を現したのはリクオだった。
「リクオ様・・・・・!」
リクオは一つ目の前に立った。
「何か用ですか?リクオ様。俺は正論を言ったつもりですが?」
「確かにそうかもしれねぇなぁ・・・・・・だがなこの世には正論だけで済まされねぇ時ってもんがあんだ。みんなに協力してもらいたくてここに来たが、てめぇは結構だ、一つ目。仲間が命の危機に瀕している時ったってのに高みの見物決め込んで、なんとも思わねぇやつになんざ手伝ってもらう必要もねぇ、てめぇは一人で事の解決を待っていればいい」
何秒とも何分とも知れぬ沈黙が続いた。
リクオはぬらりひょんの隣に正座し、両方の拳を床につけ頭を下げた。
「頼む、俺に力を貸してくれ。鴆は・・・・・大事な俺の義兄弟なんだ。犯人を捕まえて何でこんなことをしたのか知りてぇ、それで落とし前をつけさせてぇんだ。もうほかのみんなをこんな目に遭わせないためにも・・・・・・だから、頼む!」
リクオは深々と頭を下げた。奴良組若頭としてではなく一人の人、一人の妖怪として、たった一人の大切な兄貴分の義兄弟のために建前や肩書きをかなぐり捨て、頭を下げている。全員がその光景に息をのんだ。
誰もしゃべらないまま数分経過した。その間もリクオは頭を下げたままだった。そして、
「鴆に恨みを持つもの、もしくは奴良組に恨みを持つものを徹底的に探りましょう。もちろん協力させていただきます」
木魚達磨の言葉にほかの幹部たちがうなずいた。
「みんな・・・・・ありがとう」
リクオはもう一度深々と頭を下げ外に出て行った。それと同時にほかの幹部たちも動き出した。残ったのはぬらりひょんと一つ目だけだった。
「リクオも立派になったもんじゃのう・・・・・さてわしは茶菓子でも食いに行くかの・・・・・・」
そういうとそそくさと部屋を出て行った。たった一人残った一つ目は悔しそうに歯噛みしていた。
幹部たちがせわしなく動き出した様子を見た河童らも捜索に加わった。
それから毎日、幹部だけでなく首無や青田坊たちも総会に参加し調査して出てきた結果を話し合った。
最初は不参加だった一つ目も周りに雰囲気に圧され最近は参加するようになった。
続
あとがき
次回は、後編になります。
お楽しみに!