二次創作小説(紙ほか)
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- モブ爺で泣ける話(短編読み切り)
- 日時: 2018/11/04 16:08
- 名前: やじろべえ (ID: QnSr3K5Z)
語り ローラ
モブ爺の家系は昔からお金持ちだった。なんでもこの地域一帯を納める主だったらしく、私たちの町に住む人みんながモブ爺さんを崇めていたと言っていた。
そしてモブ爺さんが三十になった時、結婚をした。お相手はバニラさん。バニラさんとは大学時代のサークルで出会ったとモブ爺さんは言っていた。
そして結婚をして二年後、二人の間に子供が生まれた。名前はローラ。私だ。
二人の初めての子だった私はとても可愛がられた。
幼い頃の私はとても好奇心旺盛で、いつも城の中を走り回ったり、廊下にある甲冑などで遊んでいた。時々、城の中の物を壊してしまう時があり、その時はいつもバニラ母さんに叱られた。母さんに叱られて私が落ち込んでいた時、いつも慰めてくれたのはモブ父さんだった。
「大丈夫だよ。私はローラの味方だから。」
私はそういうお父さんが大好きだった。優しいお父さんが大好きだった。
バニラ母さんにはいつも怒られてばっかりだったけど、それでもいつも家事全般をこなしているのに一言も弱音を吐かない強い母さんが私にとっては誇らしかった。
そして私は順調にすくすくと育ち、ついに中学生になった。
私の制服姿を初めて見た父さんと母さんはとても喜んでいた。涙を流すくらいに喜んでいた。
私はとても幸せだった。この家庭がいつまでも続けばいいのに。そんなことをふと思っていた。
でも、そんな考えはすぐに壊されてしまった。
中二の夏、バニラ母さんが倒れた。私は父さんから電話をもらいすぐに搬送先の病院へ駆けつけた。私は、看護師さんに指定された病室へ入る。そこには、酸素マスクを着けたまま眠っている母さんと、そのベッドの横で頭を抱えている父さんがいた。
私は父さんに、なぜ母さんは倒れたのか聞いた。すると父さんは涙ながらに、
「家事のしすぎによる過労と熱中症だと私はドクターから聞いた。」
私は父さんの話を静かに聞いていた。そして父さんは続けてこう言った。
「ドクターが言うには… お前の母さんは… バニラは… もう息を吹き返さないって…」
その言葉を聞いた私は、私の中で何かが切れる感覚に襲われた。
嘘だ… 嘘だ嘘だ…
昨日まであんなに元気だったのに、おかしいところ何もなかったのに… なんで母さんは死ななくちゃいけないんだ…
こみ上げる涙を抑えられず、私は号泣した。長く、長く、一晩中泣いた。
母さんが亡くなってからはや一年が過ぎた。父さんは私のことをこの一年ずっと慰めてくれた。でも、一年たっても私は母さんの死から立ち直ることができなかった。 だって、私は母さんのことを本当に尊敬していたから。誇りに思っていたから。そして、本当に好きだったから。
母さんの死から二年が経った。父さんが慰めてくれたこともあり、私はやっと立ち直ることができた。そして、なんとか受験も成功しこの春から高校生になった。父さんは、高校の制服姿の私を見てやっぱり喜んでくれた。中学生のときよりももっと喜んでくれた。私はそういう父さんがやっぱり好きだった。
そして、高校を卒業し大学は医科大学を無事卒業し、私は晴れて医者になることができた。医者になろうとした理由はもちろん母さんの死からきている。父さんも昔よりだいぶ老け、髪も白髪になってしまった。
父さんは社会人になった私を見て、
「ローラ、こんなに大きくなって…」
と、やっぱり泣いていた。でも、私はそんな父さんが大好きだ。昔よりもずっと好きだ。
そして、私が医者になって五年後。ついに私は結婚した。お相手は、同じ職場の同期ニックさんだ。ニックさんとは二年前から交際を始めついに今年婚約をした。
婚約の前に私は父さんにニックさんを紹介した。真面目な性格のニックさんを父さんは高く評価し、
「ニックさん、娘をどうぞよろしくお願いします。」と婚約を認めてくれた。
そして、私とニックさんが結婚して五年後。私たちの間についに子供を授かった。名前はアーニー。ニックさんが付けてくれた。その後も、私とニックさんと息子のアーニーでの三人での暮らしはとても充実し、とても幸せだった。
そしてアーニーが生まれてから十年後、私たちの家に手紙が来た。それは父さんからだった。なんでも明日、父さんの住んでいる家で父さんの誕生パーティーをするらしい。
私はニックさんとアーニーにもこの話を告げ、三人で次の日父さんの家に行った。
私たちがきた頃にはもうパーティーが始まっていたらしく、会場はとても招待客で賑わっていた。
父さんはこの地域のお偉いさんということもあり、様々な業界の人が多く来ていた。
そして夕食が終わり、次にパーティーの余興が始まった。パーティーの余興では大人数で人狼ゲームを行った。
この大人数でやる人狼ゲームはとても盛り上がり、そしてとても面白かった。
そのあともパーティーの最後まで余興は続き午後10時を過ぎたころ、パーティーはそこで終了となった。本来ならここでみんな帰るところだったが、ここで一つアクシデントが起こった。それは、外の天候である。ここの地域は周りよりも少し標高が高く雪が降りやすい。それがあだとなったのか、外の天候は夜になって急激に悪化した。
この城一帯は、吹雪に包まれてしまいついには帰宅が困難になってしまった。
招待客たちはとても困惑していた。なぜなら、この吹雪はまるでおさまりそうにないからだった。
私たちがこのあとどう帰ろうかと相談していると、父さんは唐突にこう答えた。
「そうだ、うちに泊まればいいじゃないか。」
その考えはまさに名案だった。なぜなら、この城はもともと執事やメイドなどがおり、その名残でいまだに客室の多くが残っているからだ。
私たち招待客たちはその考えに賛成した。無論父さんもそれに同意した。
そして時計の針が11時を回ったころ、私たちは一斉に各客室に入り就寝した。
そして、その悪夢は起こった。
ぼーん…毎朝七時に鳴る鐘の音で私たちは目が覚めた。私たち招待客一同は、一階のエントランスホールに集まった。
鐘が鳴ってから数分後、私たちはほぼ全員ホールに集まった。でも、誰かがいない…あっ、父さんだ。私は直感的にそう感じ、私は急いで父さんの寝室へ向かった。
私は何か嫌な予感をしていた。いつも早起きの父さんが一番遅いなんておかしい…
父さんの寝室はエントランスホールから一番近いところにあるので、私はすぐに部屋に着いた。
コンコン…ノックをするが父さんの返事はない。私はおそるおそる扉を開いた。部屋の中は真っ暗だ。まだ照明を付けていないらしい。私はふと、この部屋に違和感を感じた。それはこの部屋に漂う不思議な匂いからきていた。この匂い…普段なら嗅ぐことのないような匂いだな…正直臭い。
私は暗闇の中、手探りで照明のスイッチを探した。そして私はスイッチを見つけ押した。
暗闇の中から出てきたのは…
「きゃあああああああああぁぁ」
暗闇の中から出てきたのは、無惨に喰われた父さんの姿だった。
なんで?なんで?ねぇなんで?なんで父さんなの?
誰にも答えられない問いを私はずっと頭の中でループさせている。
ねぇ、もしこれが運命ならなんでこんなに運命は残酷なの?父さんは、バニラ母さんが死んでから男手一つで私を育ててくれたのに…父さんはなにも悪いことしていないのに…どうして父さんは死ななければいけないの?
私は、昔のことを走馬灯のように思い出す。
あっ、結局私は誰も守れないんだ。母さんのために医者になったのに、人を救う仕事に就いたのに…私は誰も救えないんだ。
自分を責める私の目からは涙が溢れていた。父さんまで守れなかった自分の無力さに、そして救えなかった悔しさにわたしは溺れていた。
ふっと振り替えると、入り口の前にはさっきまでホールにいた招待客が私の悲鳴を聞きつけて集まっていた。
招待客たちは、父さんの突然の死にみんな静かに悲しんでいた。
そして、父さんの部屋の前にみんなが集まって数十分後。ここで、ある人がこんなことを言った。
「これってもしかして、人狼の仕業じゃないかしら?」
人狼…噂なら父さんから聞いたことがある。確か人狼は人に化けて現れ、毎夜一人ずつ人間を噛み殺す恐ろしい化け物って聞いた気がする。
もしこれが人狼の仕業なら、人狼が父さんを噛み殺したなら。
それは偶然だったのか?はたまた必然だったのか?
もしそれが必然的だったのなら私は父さんの命を救えたのかもしれない。そう考えると胸が痛くなる。
結局全て私のせいなんだ。
私が弱いから救えないんだ。
母さんだって私がもっと前々から母さんの体調を気遣ってあげていたら。私がもっと母さんのことを気にかけていたら…きっと、母さんは死ななかったのだろう。
父さんだって死ぬことなかったんだ。これが必然的なことだったのなら。
ははっ…はははっ…
私は笑っていた。自分の無力さに呆れて笑っていた。
結局、全て私が悪かったんだ…
私のせいなんだ…
私は自分の存在価値のなさに呆れて、そっと目を閉じた。
もう帰ってこない父さんと母さんの姿を思い浮かべながら。
fin…