二次創作小説(紙ほか)

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安室透「キラ・・・か」
日時: 2018/11/27 16:37
名前: 礼賛 (ID: 4uYyw8Dk)

 近頃、どこに繰り出しても必ず耳にする名前がある。公安部の仕事をこなしている時も、喫茶店の業務をこなしている時でも、必ずどこかでその者の名前があがる。

 人々の中にはその者を”神”と崇めるものもいれば”悪魔”と咎める者もいる。僕は後者だ。いくら犯罪を犯した人間であったとしても、その命を無条件に奪う行動に正義なんて存在しない。

 本当に世界の平和を願うのであれば正々堂々真っ当な手段で人々の心に語りかけ続けるしかないんだ。どんなに恐怖で支配したところで、本当の平和とは呼べないんだ。

 だから僕は絶対に許さない。必ずその者を捕まえて見せる。捕まえて、自分が犯した莫大な罪を必ず償わせてやる。待っていろ・・・キラ!!

Re: 安室透「キラ・・・か」 ( No.1 )
日時: 2018/11/27 19:03
名前: 礼賛 (ID: 4uYyw8Dk)

 ”キラ”と呼ばれる者が出現してから一カ月ほどの月日が流れ始めた。表向きではキラ捜査本部と呼ばれる組織が作られキラを追っているという事になっているのだが、まったく手掛かりを得られていないのが現状だ。

 今回のような特殊な案件に対して、捜査本部はなにもできずにいた。痺れを切らした裏の理事官は公安のゼロに対しキラ極秘調査部隊を設立し、比較的優秀な警察官たちを招集。調査を続けるも、こちらの方でもほとんど進展がないのだ。

 そこで僕は大きく動くことにした。このままではキラの足取りは全くつかめず被害者は増え続ける一方だ。そして犯罪者が粛清されるにつれて賛同者が増加し、最終的には手が付けられない状況になる。ならば、多少強引なやりかたであってもこちらの方からキラに仕掛けるしかないのだ。

 prrrr prrrr prrrr

 「どうした、ゼロ」

 「理事官・・・」

 僕はキラの所在を探るための策を理事官に伝えた。人材の確保やもろもろの交渉、それらに使われる資金の調達などで一週間ほど時間がかかると告げられたが致し方のないことだ。

 それからの一週間、やはりキラに対する足取りは全くつかめず僕は焦りを感じていた。もし今日の作戦が不発に終わった場合、キラはさらに慎重に行動するようになり、今後一切の証拠を残さないだろう。それだけは何が何でも避けなければならなかった。

 一週間の間にコナン君たちとも何度かキラについて語り合いながら、その人格についてかなり精度の高いプロファイリングが出来たという自負はある。しかしそれを加味したとしても、今回の策にキラがかかる確率は五分五分であると言わざるを得ない。

 「・・・頼むぞ、キラ。乗ってくるんだ!」

 キラの事を神と崇める人々がいる手前、心情的にあまりこういうことはしたくなかったが、それでも神に祈らずにはいられなかった。

 作戦実行まで一分を切った。あとは成功するかどうか、ただ眺めることしかできない。そんな自分に歯がゆさを抱きながらも、それでもただ傍観するしかなかった。

 ジ ジジ   ジジジジ    ——— ジーーーーーーー!!

 「時刻は十九時をまわりました。本日は報道内容を大幅に変更してのお贈りになります。なにとどご了承ください」

 ニュース番組に映し出されたアナウンサーが弁明とともに頭を下げる。国民には一切知らされていない、正真正銘のサプライズ放送。この放送で、必ずキラを釣る!!

 「本日は、世間をにぎわせている”キラ”その実態に迫りたいと思います。スペシャルゲストに警視庁公安部から池黒俊一さんにおこし頂いております」

 この池黒俊一(イケグロ シュンイチ)という男。その正体は警察官でもなんでもないただの一般人だ。正式にいうなれば一般人ですらない。およそ三十年ほど前に死刑を宣告された男だ。

 いくら死刑囚だからと言って危険にさらすのは避けたかったし気が引けたのだが、今回ばかりはワガママを言っている暇はない。もちろんただで危険に身をさらしている訳ではない。今回の放送が終われば死刑を取り消すという条件付きだ。

 「えー、私が想像するキラという人物像は—」

 ここまでキラはなんのアクションも起こしていない。台本通りここから先、池黒はキラをあからさまに挑発する予定になっている。そして、コナン君と共同で行ったプロファイリング通りの人格であれば、キラは必ずその挑発に・・・乗ってくる!!

 「幼稚で—負けず嫌いで—それでいてワガママ—幼少期からなんでも親の力で思い通りにしてきたのでしょう—思い通りにならないことが許容できない—・・・・・・」

 刻一刻と時は流れる。彼も、池黒もまたこの国の一国民だ。彼の犠牲を心のどこかで望んでいる自分に嫌悪感を抱きながら、それでも正義の為だと言い聞かせる。

 まだ放送が始まって十分にもみたない。それなのに体感では三時間くらいが過ぎたように感じられる。とめどなく汗は流れてくる。動悸は時間がたつにつれ早く音を刻むように設定されたメトロノームのように激しく、体中を駆け巡る血液による体温上昇がさらに汗を流させる。

 用心深い性格であることは百も承知だった。だが、負けず嫌いであることも間違いないハズだ・・・。

 一般市民たちも池黒という男の安否を心配しテレビ局には大量の電話がよせられる。それでもテレビ局が対応しきれたのは、一部の県での放送だからだ。その間、インターネットに投稿されるサプライズ放送の情報は、公安部が全力を挙げて削除していた。

 「ふ、降谷さん・・・!まるでキリがありませんっ!!!」

 「くっ、それでも続けるんだ。絶対に情報を外に漏らすな!」

 自分の言っていることがいかに無茶ぶりであるかも重々承知だ。それでもやるしかないのだ。やらなければ、キラを捕らえることなど不可能なのだから。

 そして、運命の時は訪れる。

 「つまり、キラは完璧主義で、それでいて子供て、き・・・—ッッ!ふっ、ウグ!!?お、オオオォアアア!!!」

 来た———ッ!!!

 池黒が左胸を抑え苦しみもがき始めたのだ。

 「これで確定だ・・・!キラは、都内在住だ!!!」

 

 

Re: 安室透「キラ・・・か」 ( No.2 )
日時: 2018/11/27 19:02
名前: 礼賛 (ID: 4uYyw8Dk)

 テレビモニターは何も映さなくなり、しばらくしてから画面下に「しばらくお待ちください」というテロップが表記された。

 ここからは事前に僕が用意しておいたビデオをテレビ局が日本全国に中継する手筈になっている。

 再びテレビが映し出されたとき、画面中央には大きく「0」という数字が激しく強調される形で存在感を放っており、その数字はキラを含む全視聴者達の脳裏にしっかりと焼き付けられる。

 「初めまして、キラ。私は警視庁公安部の警察官、通称”ゼロ”です。この放送を見てすでに察したかもしれませんが、実は先ほどの放送は一部の地域でしか流されていません。しかしあなたはアクションを起こした。

 キラ・・・。あなたは自分の思い描く正義に従い行動しているのでしょう。しかし私は断言します。あなたの行いは”悪”であると。

 あなたがどのような方法で多くの人間達の命を奪ったのか、ハッキリ言って皆目見当もつきません。しかしいずれ、必ずあなたを捕らえる。

 そしてしかるべき罰を受けてもらいます。最後にもう一度言わせていただきます。キラ、あなたは絶対的に”悪”だ!!」

 停滞していた捜査状況は一転し、調査範囲は一気に東京都内に絞り込まれた。今までの捜査で全く足取りをつかめていなかった分、今回の一件で完全に活気付いた捜査本部。それとは裏腹に、キラは不気味な笑みを浮かべていたのだった・・・。
 

Re: 安室透「キラ・・・か」 ( No.3 )
日時: 2018/11/27 19:06
名前: 礼賛 (ID: 4uYyw8Dk)

 翌日、東京某所にて。

 「ククク、昨日はまんまとやられちまったな、月」

 「やられた?フフ、何を言い出すかと思えば」

 「と、言うと?」

 「リューク、これも僕の計算の内さ。僕の頭の中では僕の邪魔者になりうる存在、その全てを抹殺する算段が整っているんだ」

 「邪魔者?」

 「お前も聞いたことくらいはあるだろ。迷宮無しの名探偵、眠りの毛利小五郎・・・。僕の親が警察である以上早かれ遅かれ毛利小五郎は必ず僕と接触することになる。だからワザと奴の挑発に乗ってやったのさ」

 夜神月の発言に、リュークはすかさず問いかける。

 「でもよ、そんなに危惧するなら今のうちに名前を書いちまえばいいんじゃねえのか?顔も名前も割れてるんだからよ」

 月は深めのため息をついた。そしてリュークにデスノートのとあるページを見せたのだ。そこにはある人物の名前が記載されていた。

 —江戸川コナン—

 「あ?誰だそれ?」

 「リューク・・・。僕が”眠りの”毛利小五郎なんていうオカルト染みた与太話を本気にすると思っているのか?その辺にいる馬鹿な警察共ならまだしも、この僕がそんな超常現象にな〜んの疑問も抱かない訳がないだろう」

 「それはそうとして、それがなんで江戸川なんちゃらにつながるんだ?」

 「簡単な事さ。どういうトリックかは知らない。もしかしたら二人が示し合わせているのかもしれない。でも、毛利小五郎が眠っていると定義付けられている間、推理を行っているのはおそらくこの江戸川コナンという少年である・・・という事さ」

 僕はリュークが納得いくように一から十まで全てを説明してやることにした。

 毛利小五郎が眠りの小五郎として知られるようになり、周りの人間は毛利小五郎という探偵を病的なまでに持ち上げるようになった。

 眠りの小五郎という語呂の良さ、全ての事件を解決するというドラマさながらの演出。

 僕の父さんも彼のことを熱く語る事は多々あったさ。それでも僕には納得することはできなかった。毛利小五郎が元々実績のある探偵であるのであれば僕も違和感を覚えなかっただろう。しかし、そうではない。彼の実績の上昇には前兆らしい前兆も、彼が実績を向上させるに至るであろうエピソードもなに一つとして存在しないのだ。

 だとしたら、彼の近辺で起きたイレギュラーな要素を探し出しそこに着眼せざるを得ない。それ以外に彼の唐突な実績の上昇に合理的な説明をなすことは科学的に不可能だからだ。

 そこで僕は彼や彼の家族等が記載されている新聞記事や雑誌やニュースをしらみつぶしに調べ漁ったよ。

 そしたら明らかに異彩を放つ存在が彼の間近に唐突に現れていたことを突き止めた。そのイレギュラー因子こそが江戸川コナンという少年だ。

 もちろん普通の人間であればそんな子供には目もくれないのだろう。僕も最初はそうだった。彼が唐突に毛利家に現れたことと毛利小五郎の実績上昇に関して関連性を見出すことはできなかった。

 だが、とある記事を見つけてからはその思考概念が百八十度の変化を遂げた。”キッドキラー”

 この記事を見て、江戸川コナンと呼ばれる存在が偶然や稀有なんかではなく意図的に怪盗キッドと呼ばれる存在を追い詰めたであろうことは容易に想像できた。世の中には幼少期から天才的な頭脳を持つ人間がいる。そのことを僕はよぉく理解していた。

 有名な科学者や物理学者、哲学者、天文学者などの中にもそういった人間が確かに存在している。これは事実として証明されている。

 で、あればだ。

 江戸川コナンと呼ばれる存在を”子どもだから”の一言で毛利小五郎の実績から切り離すことなど不可能なのだ。

 そこで僕がたてた仮説、それは江戸川コナン=眠りの小五郎説だ。

 「ふむふむ、それで?」

 リュークは月に続けるよう催促する。

 どういう方法を使っているのかは知らないが、江戸川コナンという存在はなんらかの方法で毛利小五郎を睡眠状態に至らしめることが可能である、という事さ。

 その手段についてはどんなに考えても現状では理解できるものではないから割愛させてもらう。が、とにもかくにも眠りの小五郎は江戸川コナンであると結論付けざるを得なかった。

 もちろん、今までの僕は七割から八割の可能性で江戸川コナン=眠りの小五郎説を心の中で支持してきた・・・が、

 今回のデスノートを拾った一件、それにより僕が江戸川コナンを排除しようと真っ先に彼の名前を書いたとき、その仮説は確証へと昇華されたよ。

 「なんでだ?」

 リュークの問いに、月は先ほど見せたデスノートのページをもう一度リュークに見せながら、説明を続けた。

 デスノートには確かに江戸川コナンと記載されている。にもかかわらず彼は何食わぬ顔で生活を継続させているんだ。

 つまり、江戸川コナンというのは・・・・・・・・・

 「偽名だということだ」

 「なっ、マジかよ!」

 「あぁ、マジだ」

 だからこそ僕はより一層、本当に警戒すべき人物を心得ることができたのさ。僕の本当の敵は、眠りの小五郎なんかじゃない。

 江戸川コナンと名乗る、謎の人物・・・Xだ!!

 「そしてこれはただの憶測だが、謎の人物Xと0は繋がっている可能性がある・・・」

 「なんでそう思うんだ???」

 「0は警察の人間。そして毛利小五郎は元警察官。0は僕が都内在住であることの証明をしうる策を見事に実行した。それほどの頭脳を持つ人間と謎の人物xを隔てているのが毛利小五郎一人だけ。あまりにも薄い壁だ。0ほどの頭脳を持つ人物であれば、僕と同じか、僕と近い考えに至っていても不自然ではない」

 月は続ける。

 「ま、これは可能性の話だし、これからわかることだけどね」

 とにもかくにも、江戸川コナンがそこらへんにいる普通の少年じゃないことは火を見るよりも明らかだ・・・。

 「で、どうすんだ?これから?」

 「んー、まぁ、ちょっとね・・・」

 そう言って、夜神月は不気味な笑みを浮かべるのであった・・・。

 


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