二次創作小説(紙ほか)
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- ハク千 その後の物語
- 日時: 2018/12/28 14:03
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
千と千尋の神隠しが好きすぎて、そしてハク千が尊すぎて…
完結目指して頑張ります!
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.1 )
- 日時: 2018/12/28 14:11
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
ずっと前から知っていたーーー。
愛しくて、とても、とても大事な人。
『また会える?』
『うん、きっと』
『きっとよ?』
『さあ、お行き。後ろは振り向かないで…』
手を離してから、君の姿が見えなくなるまで、いや、見えなくなっても
見つめていた。
必ずまた会えることを願って。
そして、油屋へ歩き出した。
「千尋」
大切な人の名前を胸にーーー。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.2 )
- 日時: 2018/12/28 14:39
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
千尋と両親を人間の世界に戻して、ハクは油屋へ向かっていた。
湯婆婆と話をつけて、契約を切るためだ。
『あなたの本当の名前は琥珀川』
千尋のおかげで名前を思い出すことができたから、大丈夫。
実際、ハクと湯婆婆の契約は、ハクが名前を思い出したら切れることになっているのだ。
しかし、あの湯婆婆のことだ。
簡単に契約解除を認めるとは限らない。
でも、なんとしてでも、解除しなければ。
千尋に会いたいから。
コンコン
ノックをして油屋の最上階、湯婆婆の部屋へ入る。
「何の用だい?」
「契約解除に来ました」
「ふーん、よくそんなことが言えるもんだね、名前を忘れているくせに。…まあどうせ千に教えてもらったんだろうね」
「私は本当の名前を思い出しました。私と湯婆婆様の契約は解除できるはずです。お願いします。」
ハクは表情ひとつ変えずそう言った。
「その通りだよ、まあ私からお前なんて切り離すつもりだからね。解除してやるよ」
ハクは正直驚いた。湯婆婆のことだから、無理難題をおしつけて辞めさせないと思っていたが、あっさり受け入れてくれたのだ。
「ただし、条件がある。来年までの帳場係はお前がやるんだよ。引き継ぎもあるからね」
ハクにとっては負担にならないことだ。しかし、次の言葉にハクは耳を疑った。
「お前さん、なんだかバタバタして、気づいてないようだね。
一年後、お前は人間の世界に行って千に会うつもりだろ」
ハクはそれのどこに問題があるのか一瞬分からなかったが、すぐに気づいた。
「気づいたようだね。ハク、お前は元々川の主。その川が無くなったから、ここに来た。つまり、人間の世界にお前の居場所は、本当なら無いんだ。そんな中、唯一、人間の世界とお前をつなげているのは千だ。千とお前の気持ちがつながっているとき、お前が存在することができる。…」
ハクの表情は変わらないままだが、その雰囲気から、多少の動揺が感じられる。
「そう、つまり、千がお前を覚えていなければ、お前はトンネルをくぐった瞬間、塵となり、この世からも人間の世界からも消える。
それを分かった上で、契約を切るんだね?」
ハクの答えに迷いはなかった。
「はい」
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.3 )
- 日時: 2018/12/29 15:17
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
キーンコーンカーンコーン
「やったー、これで夏休みだ〜!」
千尋は夏の暑さで重い体をあげ、帰宅しようとしていた。
「おーい、千尋、校門まで一緒に行こー!」
「うん!いいよー!」
そう言って千尋に声をかけてきたのは、友達の雅だ。千尋が転校してきてから、すぐに仲良くなった子だ。
「やっと夏休みだね〜、千尋!」
「うん、もう嬉しすぎるよね!!」
そう、千尋の学校は今日から夏休みだ。そのせいか、みんな、心なしか浮かれている様子が分かる。まあ、自分もその一人だけど、と千尋は思った。
「そういえば、千尋って、去年のこのくらいの時期に引っ越してきたんだよね!懐かしいなー」
「そういえば、そうだね!一年って経つの早いな〜」
千尋は去年のことを思い出す。お父さんの仕事の都合とはいえ、今まで住んでいた場所を離れるのは、千尋にとって酷だった。
前の学校で友達にもらった花束を抱え、嫌々車に乗っていた千尋。
でも幸い、今の学校のクラスメイトは雅をはじめ、みんな快く千尋を迎え入れてくれたのだ。
「私、転校するの、不安だったけど、雅たちのおかげで、すっかり慣れたよ〜」
「そっかそっか!それは良かった!」
話しているうちに、校門までついてしまった。雅とは、帰る方向が逆なので、いつもここでお別れなのだ。
「じゃーね!千尋!夏休み、いっぱい遊ぼうね〜!」
「うん、遊ぼ!じゃあね!」
千尋はそう言って、家路へと歩き出す。
そして、また去年のことを思い返していた。
暑い夏の日。
転校に気が進まなくて、ふてくされていたあの日。
何か、引っかかる。
この心のもやもやはなんだろう。
実をいうと、千尋は、一年前から、時々、心に何とも言えない喪失感を感じていたのだ。
何かが足りない。
心の中に。
何かを私は忘れている…?
こうやって考えることも少なくはなかった。
でも、いつも思い出せない。
いつも、分からない。
まあ、いっか…。
千尋はなんだか、落ち着かなくなって、家への道を急いだ。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.4 )
- 日時: 2018/12/29 15:25
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
家までもうすぐだ、というところで千尋は足を止めた。
森の中への道がある…?
いつもはこんな道なかったはずなのに…。
いや、あったかな?ん?
いつも通るところほど、分からないものだな、と千尋は思う。
ふと、目が留まるものがあった。
「ほこら…?」
『神様のお家よ』
そう言って母に教えてもらったな〜と千尋は懐かしく思う。
あれ?
教えてもらった…?
お母さんに…?
しかも、今、私懐かしいって思った?
そして気づいた。
「私、この道を通ったことがある」
千尋は迷った。家まではもうすぐだ。
今日から夏休み。ついさっきまで、家でアイスを食べたいなどとおもっていたところだ。
でも、今はそれどころではない。
どうしても、この道の先に行ってみたいと思った。
「ちょっとだけなら…」
そう思って、千尋は足を踏み出した。
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