二次創作小説(紙ほか)
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- 青の弱さと黒の声 1
- 日時: 2019/07/08 20:24
- 名前: 青空 (ID: YiQB1cB2)
もう一度君に出逢えるのなら私は何だってする。火の中海の中どこに行ってもいいから君に逢いたい。
「ピチチチチ…」
朝の小鳥に目を覚ませ、白い天井を見上げる。不意に見えた、幼馴染の涼太の顔。
涼太は1週間前に都内の病院で、息を引き取った。最期の時だった。
それから私は、気力がなくなって動けないままこんな状態でベッドで寝ている。早く顔を見に行かないと…と思っても体はわがままで動いてくれない。グッと力を入れるが、起き上がらない。嘘…体がついに壊れた…?
とその時だった。スマホに明かりがついた。
「誰…?雪乃かな…?」
画面を見た瞬間息が出来なくなった。嘘、嘘…。
なんで……、涼太からなの??『今、俺がいるって願って欲しいんだ。』そう書いてあった。
死んだはずの涼太が、LINEをするはずがない。いたずらって奴かな?
するとまた、届いた。『香恋、お願い。じゃないと成仏できないtt』 間違いなく涼太の文章だ。誤字脱字をよく打ってくる。…落ち着け、私っ!自分に涼太はもういないと言い聞かせる。でも…。とその時、インターホンが鳴った。きっと雪乃だろう。そう考えて階段を駆けていく。インターホンを見るとそこにいたのは、涼太だった。顔も髪の毛も服も見たことのあるものだった。
「涼…太??」
「香恋、急にごめん。ちょっとでいいから開けてくんない?」
ふらふらと鍵を開けて少しずつ慎重にドアを開ける。
「久しぶり。」
軽く笑い声を上げるのに、ついていけなかった。
「…リョウタナノ?」
「どうした、その声は。風邪でも引いたか?」
そう言って、私のおでこに顔を近づける。
「んま、熱ねーじゃん。本当にどうしたんだよ。」
「リョウタ、アナタシンダンジャンカッタノ?ドウシテイキテルノ。」
「ふ、ついに暑さにやられたか香恋」
「ヒトノハナシヲキイテッテイッテルノ。リョウタ、キノウビョウキデシンダデショ?」
「………実はな、少しいろいろと解決しておかなきゃいけないことがあって。それを解決するまで向こうの世界に行けないんだ。」
訳が分からなくなって目眩がした。息が苦しくなって、スーッと冷めていく感覚。
私はその場に倒れてしまった。
何時間経っただろう。目が覚めた頃には、とても涼しい場所で横になっていた。窓の外は夕焼けが広がっている。っていうか、ここ、どこ??床がフローリング。天井は高くて、黒い。そこにシャンデリアがある。
「…どこ?ここ…」
1人呟くと涼太が声をかけた。
「ここは俺の家だよ。覚えてないの?」
「嘘だ、涼太は和室で暮らしてたじゃん。」
「んー…やっぱり香恋は嘘が通じないな…。ここは叔父が経営するマンション。俺が一人暮らししてたとこ」
懐かしい声に涙が溢れる。止まらない。
「泣き虫香恋。小さい頃から泣きすぎ。」
「だって…もう2度と逢えないはずの人に逢えたんだから…。」
「2日間だけここにいるよ」
その言葉が私にとって死刑判決のように聞こえるくらい心に衝撃を与えた。
「…その間にやることがあるの。たった大事な一つのこと。それまで普通の人間として生きるよ。」
「大事なことって何??」
「それは俺にも分かんない。自分で探さなきゃいけないらしい。」
「酷いシステムだね…。」
大事なことってなんだろう。親に謝ることとかかな?
「それで…。どうする?」
「香恋と遊園地に行きたいな。」
「ふぁ!?」
思わず声を上げてしまった。私と遊園地に行きたいだなんて。それが大事なこと???
「それが大事なことなの!?」
「分かんないから思いっきり遊ぼーよー。あ、スペースランドはどう?」
駄目だ。話が通じない。涼太はいっつもこうだった。みんなが反対しても自分の意見を変えない、そんな性格だった。これが涼太ワールドだ。
2人でいくのはカップルっぽいので、仲が良かった雪乃と康太も連れていくことに。
「っつーか、なんで4人なんだよ。」
「えー、いーじゃん。せっかく生き返ったんだから!」
「本当だよー、涼太が生き返るなんてね。」
康太と雪乃の行動と裏腹に不機嫌な涼太。
「ふん!生き返ったんじゃねーって何度いえばわかんだよ!!大事なことを探すためにここにいるっつってんだよ!?」
「それじゃ、生き返ったのと一緒ですぅー!!」
「ってめぇー!!雪乃!!!」
「まぁまぁいいじゃん。よく思い出すでしょ、ダブルデート!」
康太が大声で言った。その発言に涼太がこけそうになった。
「大声で言うもんじゃねーだろぉぉぉ!!」
これが私たちの日常だった。笑い合い、たまに怒ってでも笑って楽しかったなぁ。
「チケット拝見します。」
係員の声にハッとなる。そうか、現実はこれだった。
ん……。何か違和感がある気がする。まぁいいか。
「じゃ、まず最初は、スペースコースターだろう!!」
「あ、ごめん、私パス。」
雪乃が左手を顔の横に上げている。でもそれに動じないみんな。そして無理やり乗らされた雪乃。
「やっば。私、死ぬ!」
「こんなんで死にはしないよぉ〜」
呑気にそう言う康太に雪乃が怒っている。
「ど、ど、どうしよう…私、こういうの嫌いなんだった。心臓…やばい…」
私はもう、絶叫系は超がつくほど嫌いだった。そんな発言に隣に乗っていた涼太が、手を出してきた。
「ん、これなら少しは和らぐだろ?」
「う、うん。」
その手を握り返した瞬間、ジェットコースターは急降下して行った。後ろで雪乃の悲鳴と康太の嬉しそうな声が聞こえる。お腹に風があたるのがくすぐったくて…。
「きゃーーーーーーーー!!!」
私も耐えられず声を上げる。目をつぶった瞬間なぜか、死ぬ感覚がした。もう目覚めることができないかのような、眠たさ。
「ゔ…ゔゔ…」
ふーって力が抜けて、握っていた手に力が弱まる。それに気づいた涼太が思いっきり叫んだ。
「香恋!???」
「起きろ、香恋、香恋、香恋、香恋!!!」
きっと私の顔は真っ青なのだろう。なんとなくわかる。
「か…ん…香恋!」
雪乃の声に飛び起きた。ここはどこかのベンチだ。南京錠のかかる橋の上のベンチ。
「ゔ、あ、雪乃…!」
手が震えて涙が溢れてきた。
「涼太…。」
なんで。こんな顔するの。まるでゴミを見るかのような目。