二次創作小説(紙ほか)
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- テイルズオブアムール
- 日時: 2020/07/19 10:25
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
主人公ノエル・サルバドールは高い魔力を持っている少女。
彼女は琥珀色の眼をした青年バレット・クリムゾンと出会い全てが変わってしまった。
この国を拠点に世界を0から作り直そうと考える輩がいるという話を彼から聞き、
ノエルは半信半疑で彼に手を貸す。
実際、光の当たらない場所で「彼ら」は既に行動を始めていた。
- Re: テイルズオブアムール ( No.1 )
- 日時: 2020/07/19 11:06
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「うんうん、良い出来だ。最高の殺戮兵器だねぇ!」
白衣の男たちは部屋の外で拍手をしていた。
血みどろの少年は部屋から出て彼らに近寄った。
一瞬で辺りに血が飛び散る。
そして最後に聞こえたのは笑い声だった。
ノエルは一人、町を歩いていた。両親はもういない、一応兄はいるが彼も仕事で
家にいることは少ないため一人暮らしをしている状態だ。
「やぁ、ノエルちゃん。買い物かい?」
「えぇ」
「君も大変だねぇ。お兄さんは騎士団長だったか」
兄の名はリデル・サルバドール、騎士団最強と謳われる騎士だ。ノエルと同じ色の髪を持つ。
「私よりも兄の方がきっと大変だから…大丈夫です」
中年の男の言葉にノエルはそう返した。彼と別れてから人気が少ない場所に来てしまった。
その先に誰かが立っているのが見えた。素通りしようとしたとき向こうから声を掛けられた。
「お前が、ノエル・サルバドールって奴か」
「???」
琥珀色の眼をした青年は腕組を解きノエルの前に立った。
「俺はバレット・クリムゾン。アンタに手を貸して欲しいことがある…アンタの家、上がっても
良いか?」
外では話せないような話らしい。彼を中に上げ鍵をしっかり閉めた。
「この国、今は何も起きていないが裏でとんでも無い奴らが動いている」
世界を0から作り直す、そんな変わった願いを掲げた集団がいるらしい。それもこの国を拠点として
動き始めている。
「アビスの災厄、知ってるだろう?」
ノエルは頷いた。聖書で語られる伝説、悪行ばかりをする人間たちが増えたことに神は怒り
人々に罰を与えた。簡単に言えばそういう出来事。その次の話では災厄の中、生き残った一人の
聖女が神に祈りを捧げ神は死んだ人々を生き返らせた。
「それと同じことをしようと企む集団、奴らは大きな魔力を必要としている。それは何故だか
分かるか?」
「何か大きな術式、とかのため?」
バレットは頷いた。
「お前の力を貸せ。世界を壊したくないのなら剣を取れ」
- Re: テイルズオブアムール ( No.2 )
- 日時: 2020/07/19 12:18
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
バレットがノエルに渡したのは剣だった。
「そんな…私、剣なんて扱えないよ!」
「護身用に持っておくと良い。俺には必要ない武器だし」
剣を腰に帯刀する。今日、ノエルは町を出ることにした。
彼女たちが進む方向に存在する村、そこには竜の伝承が残されており今も竜の子孫が存在する。
自警団が村人の力仕事やらを手伝っている。
「あ!ジャバウォックだ!」
一人の男が名を呼んだ少女を抱き上げた。
「呼んだか?シエラ」
「うん!!」
ジャバウォック、自警団の団長だ。彼も竜の子孫で自身の姿を竜へと変えることが出来る。
「…?オイ、ニーズヘッグはどうした」
ニーズヘッグ、自警団の副団長だ。彼もまたジャバウォック同様に竜へと姿を変えることが
出来る。
「そういや、まだ帰ってきてないですね」「何処か出かけてもすぐに戻ってくるのになぁ」
「ま、まさか誰かに誘拐!?」「あの人を誘拐なんて出来るわけねえだろ!」
様々な意見が飛び交った。
「あの、どうかしたんですか?」
村では見たことが無い顔の少女が声を掛けて来た。村に足を運んできた客人だろう、彼らを
巻き込むわけにはいかない。口を開こうとしたとき一人が叫んだ。
「こいつらが…副団長を!!」
「え、な、誰の事!!?」
バレットは目を細めた。何者かによる洗脳か。
「待て、俺たちは誰の事だか分からない!」
数人の自警団の団員たちが武器を構えた。
「やめろ」
彼らをジャバウォックは止めた。彼はバレットを見据えて何かを察した。
「お前らじゃ勝てねえよ。悪いなぁ客人。うちの団員は皆、血気盛んでね。それでいて思い込みが
激しい奴も多い。濡れ衣だろうが何だろうが…俺を納得させてみろ」
ジャバウォックは首の骨を鳴らし笑みを浮かべた。ノエルの眼に服の下から除く鱗が入る。
他の団員の中にも同じように鱗がある者が数人いる。
「コイツ…竜人か。骨が折れそうだな。俺たち人間よりも強い力を持つ、主に物理的にな」
- Re: テイルズオブアムール ( No.3 )
- 日時: 2020/07/19 13:27
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
バレットの言った通り竜人であるジャバウォックは人の域を超えた怪力の持ち主だった。
何故村から離れた場所で戦っているのか、それは彼の攻撃があるからだ。たった一撃で
大きく地面が抉られた。
「中々粘るなァ、どっちも人間。それに片方は実戦経験も無いか」
大雑把なのかと思いきや相手はかなり冷静で速度もあった。
「攻撃を避けないのは余裕だからか?」
「避けようと思えば避けられる。あっと勘違いするなよ?手加減しているわけじゃねえ」
ジャバウォックはバレットの蹴りを防ぎ彼の顔を鷲掴みし地面に叩きつけた。距離を取らなければ、
そう思ったバレットよりも早く相手は攻撃に出ていた。吹き飛ばされたバレットは鼻に手を
当てる。鼻血が出ていた。
「バレット!」
ジャバウォックとバレットの間にノエルが入り剣を突き出した。ノエルは一歩踏み出し剣を
振りかぶる。ジャバウォックはそれを片腕で防いだ。その腕には鱗が張り付いていた。
「待ってくれ!ジャバウォック!!」
拳を振りかぶろうとしたとき、誰かが叫んだ。白髪の青年、彼こそがニーズヘッグだ。
「ニーズヘッグ!!」
「遅くなったことで色々いざこざがあるようだな。確かに途中で乱闘騒ぎはあったがこの二人は
関係ない。コイツが犯人だ。否、俺を罠に嵌めようとした人間の仲間だ」
黒服の人間は意識を失っていた。
バレットとノエルの誤解が解けて彼らは二人に謝罪した。
「強い兵が欲しくて町にいたニーズヘッグを襲った、そういうことか?」
バレットは頷いた。
「邪魔をしてくる者を倒せるだけの兵士、強ければ強いほど欲しがる。竜人は良い、一人いるだけ
でも人間の兵士100人以上の戦力になり得るからな」
「それを知ってるお前は何者だ?」
ジャバウォックはバレットにそう聞いた。
「バレット・クリムゾン、奴らがやっていた研究の元・モルモット」
「…成程、それなら確かに奴らのことを多少なりとも知っていても可笑しくないな」
- Re: テイルズオブアムール ( No.4 )
- 日時: 2020/07/19 14:11
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
外から悲鳴が聞こえた。
外に出ると上空に数体のドラゴンが飛翔してブレスを放っていた。
「全員、中へ避難しろ!自警団も、全員なぁ!」
「し、しかし団長!」
ジャバウォックはそう言いかけた団員を睨んだ。
「ニセモノの割にはしっかり作られてるじゃねえか。部下をやられて怒ってんのか!?
その程度のドラゴンで殺せると思ってんのか!!そうだとしたら笑えるなァ!!?」
彼の体が変形していく。やがて姿は大きなドラゴンに変わった。翼を広げジャバウォックは
空を飛び交うドラゴンとの空中戦を繰り広げる。
「楽しそうだなジャバウォック」
後ろから眺めていたニーズヘッグが呟いた。
「元々好戦的だった、そして人を惹きつけるカリスマ性があった。自警団にいる者はそれに
惹かれた奴は勿論、アイツとタイマン張ってその力に憧れを抱いた奴もいるんだ」
「ニーズヘッグはどっちなの?」
ノエルの質問にニーズヘッグは答えた。
「アイツとは長い付き合いだからな。腐れ縁って奴さ」
ジャバウォックが地面に降りてきて元の人型に戻った。
「俺には残しといてくれなかったのか」
「何だ、やりたいなら先に言えよ。でも、そこまで楽しくは無かったな。所詮はニセモノか」
そう話している矢先だった。
「うわっ!?」
ノエルが思わず身を屈めた。それは弓矢。矢はノエルではなく鱗で覆われたニーズヘッグの腕に
当たり地面に落ちた。
「弓矢…相当な腕利きみたいだな。この距離で当てるか」
「え、ど、何処にいるの!?」
「人間には見えないほどの距離。俺たちは眼も鼻も利くんでな。お、流石に分が悪いと
理解したみたいだな」
離れた距離から弓矢を放った少年は表情一つ崩さなかった。
「竜の眼、侮っていた。一度撤退する」
その集団の幹部は全員孤児だった。彼らに戦闘技術を叩き込み兵士へと育てた人物はそれを了承
した。
- Re: テイルズオブアムール ( No.5 )
- 日時: 2020/07/19 14:19
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
バレットはジャバウォックの力を貸して欲しいと頼み込んだ。
だが彼は少し考えさせてくれと保留にした。
「迷ってるのか?ジャバウォック」
ニーズヘッグは彼の心情はお見通しだ。
「自警団と村の心配なら必要ない。お前は部下たちに自分たちがいなくてもある程度
戦えるように特訓させたんだろう?それにお前の穴埋めが俺では不満か」
「そんなわけねえだろ」
ジャバウォックはすぐに答えた。
「それじゃ、ニーズヘッグ。自警団と村の事、頼んだぞ」
「あぁ。お前も必ず戻ってこい」
互いに約束をした。歩き出そうとしたとき、誰かがジャバウォックの裾を引いていた。
小さな少女シエラだ。
「い、行かないで」
「シエラ…大丈夫だ。そう長く離れたりしねえ、ニーズヘッグがいるだろう?暫くはそっちで
我慢しろ、な?」
シエラの頭をジャバウォックはそっと撫でて今度こそ歩き出した。
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