二次創作小説(紙ほか)
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- 白猫プロジェクトThe Original
- 日時: 2020/07/24 18:31
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
白猫プロジェクト、二次小説。
白の王国と黒の王国が存在していた頃、二つの均衡を見守る天秤があった。
小さな孤島には聖女と彼女に従う数人の従者だけが暮らしていた。
聖女は光の王と闇の王子の繋がりを認めた、光の王の選択も認めた。
そして時が経ち、聖女の生まれ変わりフォルトゥナはカナタとアイリスたちの仲間に加わった。
- Re: 白猫プロジェクトThe Original ( No.1 )
- 日時: 2020/07/25 21:28
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
帝国、そこの城の中に一人の男が禁固されていた。
アビゲイル・ガナッシュ。白がかった透明な瞳孔を持ち両目に傷を持つ男。
「ふむ、聖女の宝石か」
アイシャは彼の喉に埋め込まれている宝石を見て呟いた。
「黒の王や光の王ほど語られはしないが実在したとされる聖女。名前不明だが考古学者の中では
黒と白の均衡を見守る役割を持っていたことからリブラと呼ばれている」
「案外詳しいんだなアンタら。じゃあこの宝石については」
アビゲイルは挑発するように聞いた。
「聖女の宝石とは二つの王国が滅亡した際に死んだ聖女が生まれ変わる前に力を従者たちに
分け与えるために作り出された物…自分はその聖女の従者だと言いたいのか」
少し責め立てるような口調でジュダは言った。しかしそんな彼をアイシャは制止した。
不満そうな彼にアイシャは説明する。
「従者かどうかは我々では決められない。決められるのはただ一人だ」
アイシャたちの耳にノックが聞こえた。扉が開き一人の少女が入ってきた。琥珀色の眼に
淡い茶色の髪をしている。容姿も性格も転生しても変わらない。
「フォルトゥナ…!」
「アビゲイルは確かに聖女の、私の従者の一人だよ。二人とも」
フォルトゥナはそう言った。
アビゲイルの拘束は解かれアイシャとジュダから説明を聞く。
「アビゲイルが…?そりゃ悪人面だけど内面は純情ヤンキーみたいな人だし…」
「貶してるのか?それとも褒めてるのか?」
フォルトゥナの言葉にアビゲイルは返した。フォルトゥナはアビゲイルの喉に埋め込まれている
宝石を覗き込む。何かを無理矢理捻じ込んだ痕跡がある。
「瘴気か何かを捻じ込まれて操り人形にさせられてたということか。しかし、何故帝国を
襲う必要があった」
ジュダの質問は尤もだ。フォルトゥナは考え込んでやがて口を開いた。
- Re: 白猫プロジェクトThe Original ( No.2 )
- 日時: 2020/07/25 22:11
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「大きな勢力を先に潰す必要はあった…とか?」
「何のために?それも聖女の従者をわざわざ利用して」
アイシャの言葉にアビゲイルが答えた。
「簡単な話だろ。聖女の従者となればそれなりに戦力になる。何か大きなことを成すつもりなら、
それが周囲からしたら悪事だとしたら敵対する大きな組織は潰したい。馬鹿じゃねえなら
分かるだろ。それに混ぜたっていうなら一人いるじゃねえか」
混ぜる、そして分けるの力を持つ道化師エピタフ。彼とは特にジュダは因縁がある。
それについてはフォルトゥナも理解している。
「願わくば俺が暴れ回ってそこに現れた聖女が死ぬところでも見られたら、とでも思って
たんだろう。だが帝国の軍人を甘く見ていた、アイシャとジュダという軍人の力を低く
見積もっていた。更に言えばこれのせいで奴の瘴気は俺を完全に呑み込むことは出来なかった」
アビゲイルは自身の首にある宝石を指差した。
「近々、あったりしてね。道化師関連の大きな事件が…何処かでさ」
フォルトゥナは呟いた。
「他の人たちは…大丈夫かな」
「アンタが心配するのか。俺たちからしたら自分より主の方が大事だがな」
二つの国が滅亡し同時に聖女も死亡した。その時、必死に彼女を守ろうとしたのは数少ない
従者たちだった。
「聖女の転生者である君はどう考えている?これからをどう予想している」
アイシャはフォルトゥナに問いかけた。フォルトゥナは悩んで悩んで、やがて口を開く。
「正直、分からない。でも今の私は冒険家、聖女の転生者どうこうはその次だよ」
「そうか…もし何かあったら力を貸そう。私たちそれぞれの個人で。それとその男も持ち帰って
貰って構わない」
アイシャの言葉にアビゲイルはカチンとしたが口には出さなかった。
- Re: 白猫プロジェクトThe Original ( No.3 )
- 日時: 2020/07/25 22:40
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
帝国の夜、辺りから悲鳴が聞こえていた。
「これは…!!?」
泣き叫ぶ子ども、泣きながら鈍器やナイフを振り回す帝国の国民たち。
「ジュダ!」
「皇帝、何故ここに」
小さなネズミこそ帝国の皇帝だ。
「命からがら逃げて来たんだよ。それより、これは…」
彼らが困惑する中、アビゲイルが呟いた。
「あのルーンだ。幻惑のルーン、使い方によってはあんな風に人間を操ることが出来る」
アビゲイルはフォルトゥナの襟首に手を掛け彼女を後ろに下がらせた。
「た、頼む!そこの、その女を殺さないと…妻と子供が!!」
「殺しても何もない。騙されるな」
アビゲイルはナイフを持った男に目を合わせた。透明な瞳が光を放つ。腕を垂らした男は
すぐにハッと我に返った。
「何の魔法だ?」
「彼の中に入り込んだルーンの光を吸い取った。多くの光を吸えば吸うほど視力は低くなる。
暴れまわってる国民の目をここに集められれば…どうにか害がない程度にまでは吸い込める」
「だが、低くなった視力は戻るのか」
ジュダの問いかけに彼は頷いた。
「暫く目を休めれば…ってことで作戦決行なら俺は暫く帝国に滞在させてもらうぜ」
「僕は構わないよ。国民を傷つけなくて済むならね」
皇帝がそう言うならばと全員が賛成した。
彼らはフォルトゥナの命を奪えば大切な何かを守れるという暗示が掛けられていると考えた
アビゲイルは高らかに叫んだ。
「フォルトゥナならここに居るぞ!この女の姿、目に焼き付けろ!!」
全員の視線が一点に集まる。彼らの中にある光がアビゲイルに吸い取られていく。激痛に
顔をしかめたアビゲイルにフォルトゥナは声を掛けようとした。
「今は俺ではなくあのルーンを破壊することが先だ。治療は後で幾らでも出来る」
- Re: 白猫プロジェクトThe Original ( No.4 )
- 日時: 2020/07/27 16:36
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
『大変デスネェ〜!帝国は』
下卑た笑いを上げるエピタフは伝声のルーンを使ってこちらに語り掛けて来た。
『全く持って誤算でしたヨォ、光を吸い取る目って…闇のために使うモノですよねぇぇ!!?
ということは?アビゲイルさんは本来、黒の王国に所属しているはず!!ギャハハハハハ!!!』
「何が可笑しいの。どんな力を持っていようと、何処に所属しようが関係ない!」
『まぁ良いでしょう。あーあ、折角面白いものが見れたと思ったのにィ』
声が途切れた。全員が巨大なルーンを見上げる。あれを破壊しない限り、全てが解決したとは
言い難い。それに下には国民がいる。そのまま破壊すれば被害が出てしまう。
「…力を消すなら俺がやろう。その後はアンタたちで全部破壊してくれ、国民の避難は」
「大丈夫、皆避難したよ。だけど大丈夫なのか」
アイシャはアビゲイルを見た。
「あんなの始祖のルーンに比べれば屁でもねえ。それに、もしもの事があれば主さんに
直してもらうつもりだし」
アビゲイルはカッと目を見開く。光がどんどん彼の眼に吸い込まれていく。フォルトゥナの手に
杖が握られた。
「壊れろ!!」
放たれたレーザーはルーンとぶつかり粉々に砕いた。二つに割れたルーン、それぞれをアイシャと
ジュダが更に細かく粉砕した。
数週間後、アビゲイルは眼を細めたりして辺りを見ていた。
「驚いたな。数か月はかかるものだと思っていたぞ」
「ジュダか…まだ少し顔がぼやけている。それよりフォルトゥナは」
アビゲイルは目を細めながら聞いた。
「飛行島へ帰った。しっかり安静にし、完治してから来いと言っておくように頼まれたからな」
<光を喰らう者 アビゲイル・ガナッシュ>
職種「剣士」
光を吸い取る目を持っている青年。フォルトゥナの従者の一人でエピタフによって操られ
帝国で暴れた際にアイシャとジュダによって拘束されていた。悪人面だが優しい心の持ち主で
誰かのために体を張ることが出来る。喉に聖女の宝石が埋まっている。
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