二次創作小説(紙ほか)
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- 乗組員の幻想記録伝 [Among us]
- 日時: 2023/03/29 21:43
- 名前: black fly (ID: 7ZyC4zhZ)
今回の話は、Among Us のクルーやインポスターが幻想郷に迷い込む話です。
プロローグ
-スケルド号-
宇宙を旅する一つの宇宙船の中で、会議が行われていた。すると、しばらくして、エアロックから赤いクルーが射出された。
赤「…俺は無実なのに…」
先ほどの会議で追放を受けた乗組員のクルーだ。インポスターの疑いをかけられた。
赤「生命維持装置は故障してないし、なんとかなるかなぁ…」
このまま赤は宇宙を彷徨う事となってしまった。その時、エアロックから黒いクルーが射出された。インポスターだ。
このインポスターとクルーはお互いを知らないまま、これから何年も宇宙空間を彷徨い、忘れられていく。
-忘れられた2人の行く先は…-
続く…
- Re: 東方人狼伝 3話 新たな生活・レッド編 ( No.3 )
- 日時: 2023/05/19 21:51
- 名前: black fly (ID: 7ZyC4zhZ)
クルーのレッド、インポスターのブラックが幻想入りしてから一週間が経った。二人共、充実した暮らしを満喫していた。
-人間の里-
早朝、俺は目を覚ました。布団から出て、台所に向かった。生命維持装置の中から-長期栄養保存食-と書かれた箱と機械を取り出した。
保存食を開けると、食パンが入っている。
それを-機械-…人間曰く、トースターに入れて温める。しばらくして食パンが温まった物を取り出して齧り付く。
あらかじめバターは塗ってあるが、保存食だしとても美味しいとは言えない味だ。
しょうがないだろ…?幻想郷に来たってのは良いんだが、まだここの食べ物を口に入れる勇気が無いんだ。
食パンは後、5枚程入っている。これが無くなったら、里の食材を買わないとな…
レッドは独り呟きながら、朝食を終えて外に出る。レッドはこう見えてエンジニア。里の建造物や家具の修理、他の店の手伝い…俗に言う何でも屋をしていた。
レッド「霊夢が家賃は要らないって言ってたけど、流石にタダで住ませてもらうのは嫌だからなぁ…」
宇宙船で何年もタスクをこなしてきたレッドは、一週間前から、里の人達からの依頼を全て容易く終わらせた。
その仕事の速さを気に入られたのか、何人かの妖怪達とも仲良くなっていた。
文「あ、レッドさん!こんな朝早くから散歩ですか?」
レッド「おはようございます。射命丸さん。」
レッドは、文の作る-文々。新聞-の配達を任されている。五日前、里で新聞を配る手伝いをした時の効率の良さから、文にスカウトされたのだ。他にも、豆腐屋、貸本屋、団子屋など多くの店からスカウトされ、毎日、宇宙船で暮らしていた時のように、仕事をして暮らしていた。
早速、文に新聞配達を頼まれて、里の至る所に新聞を配る。最後の配達先は鈴奈庵だ。
ノックをした所、本居小鈴が出て来た。小鈴は六日前、幻想郷に来て、レッドが二日目に会った人だった。
その日、小鈴の頼みで手伝ったせいか、すぐに仲良くなっていた。どうやら、あらゆる文字を読めるらしい。
小鈴「おはよう!新聞ありがとね。」
レッド「気にすんな。出来る事をやっただけさ。」
小鈴「阿求さんも喜んでたよ!あの本を読んでくれたってね!」
レッド「幻想郷縁起の事か…物凄く興味深い本だったぞ。昔はMIRA.HQの本部で古代の歴史やら文学を学んだもんだ。」
小鈴「みらえいちきゅー?」
レッド「あー、なんでも無い。とりあえずあの本は最高だったよ。」
エンジニアを職業としていたレッドもさまざまなタスクをやってきた。MIRA.HQでは化石の修復をしていた事が頭によぎる。
レッドは小鈴と軽く会話した後、別の所へ向かった。既に数人の人達が外に出てそれぞれの作業を始めていた。人間の里の朝が始まったのであった。
-寺小屋-
レッドは寺小屋に歩いて来た。生命維持装置-バックパック-から時計を取り出して確認する。午前7時だ。
レッドは扉を開けて、寺小屋の中に入った。誰かの人影が近寄ってくる。
慧音「レッド、今日も来てくれたのか。」
レッド「あぁ、今日は暇だし、また手伝うかと…」
慧音「ありがとう。2時限目の授業で生徒に教えてみないか?」
レッド「良いんですか!?」
慧音「もちろんだ!」
これまた五日前、レッドが夕方に会った人妖だ。レッドは、幻想郷縁起を六日前に借りてすぐに読み耽っていたので、ほとんどの妖怪を知っていた。慧音の依頼をこなす内に随分と親しくなったのだ。
そして時間が過ぎて、午前10時。既に生徒は寺小屋に来て授業を受けていた。二時限目となったので、レッドが代わりに授業を行った。
レッド「え?それで良いんですか?」
慧音「あぁ、私も君の学んで来た事に興味がある。」
レッドは、自分の働いてきた事についての授業をしろと聞かされた。慧音は別の作業で外に出ていた。
レッド「えー、それではみなさん。静かにしてくだ…」
レッドが話そうとした瞬間、生徒達が騒ぎ始めた。
レッド「えっと…みなさん?」
教師の経験も無いレッドは困惑する。
レッド(なるほど…慧音さんも困るわけだ。)
慧音と親しくなったとしても、所詮、レッドは外から来た外来人と同じような者だ。生徒達も、いつもは慧音に怒られるが、レッドが教師だと知った途端、騒ぎ始めたのだ。
レッド「みなさん…もうちょっと静かに…」
注意しようとしたが、どこからか飛んできた紙飛行機が頭に当たり、黙り込んでしまう。
レッド「ほら!授業は始まってるぞ〜」
少し大きめの声で言ってみたが、反応は無い。レッドはイライラし始める。
レッド(畜生…人間の子供ってこんなに聞き分けが悪いのか?慧音さんはいつもどうやってるんだ!?)
レッドは疑問に思いながらも、心の中でイライラが溜まる。そして、数分経って、堪忍袋が爆発した。
レッドはバックパックから赤と白の模様がついた-メガホン-を取り出す。本来は、宇宙船で死体を発見した時のためのアイテムだが、今のレッドはブチギレて判断もろくに出来なかった。メガホンをかざして叫ぶ。
レッド『黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!』
インポスター顔負けの怒号が響いた。生徒達は静まり返り、席に着く。
レッド「よし、やっと静かになった…」
さっきまでの殺伐とした表情はもう無い。生徒達も、さっきまでの雰囲気が消えた事で困惑した。
レッド「慧音さんから授業を頼まれました。地球からはるか遠い惑星からやって来たレッドです。質問があったら遠慮せず、挙手してくれよな。」
簡単な自己紹介をする。フランクな口調のせいか、生徒達もレッドに興味深々そうだ。そんな中、一人の男子が手を挙げた。
レッド「はい、そこの君。」
男子生徒A「ぼ…僕は天体とかに興味があるんです!レッド先生のいた星ってどのくらいの距離ですか?」
レッド「距離か…ざっと10億光年ぐらい離れた所だ。」
男子生徒A「じゅ…10億光年!?」
他の生徒もざわつき始めた。
男子生徒B「そこで何をしてたんですかー?」
レッド「エンジニアだ。」
男子生徒B「えんじにあ?」
レッド「まぁ、物を修理したり…色々な。」
そこからは、生徒達からの疑問にひたすらレッドが応えるような授業だった。その後、慧音が戻ってくる事は無く、結局最後まで授業を教えた。
レッド「はい、授業は終わりだ。」
全ての授業が終わった。もう夕日が落ち始めている。生徒達は下校する。誰もいなくなった教室にレッドが椅子に座っていると、慧音が向かって来た。
慧音「悪いな…君の授業がどんな物かついつい見たくて…」
レッド「見てたんですか!?」
慧音「あぁ、最初の怒号は驚いたが、生徒達はもう君に懐いているようだな。」
レッド「ただただあっちの質問に答えただけですよ。」
慧音「そうでも無いぞ?実に興味深い内容だったしな。お疲れ様。」
レッド「ありがとうございます。俺はこれで…」
レッドは寺小屋の授業を終えて、家に帰宅した。
レッド「明日も寺小屋に行ってみるか…」
そう呟きながら、レッドは眠った。
続く…
- Re: 乗組員の幻想記録伝 4話 インポスターの真実 ( No.4 )
- 日時: 2023/05/19 18:29
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
クルーのレッド、インポスターのブラックが幻想入りしてから一週間が経った。二人共、充実した暮らしを満喫していた。
-アリス邸-
俺はブラック…まぁわかるだろ。一週間ぐらい前から魔法使いのアリスって奴の家に泊まっている。幻想郷にはあり得ない能力を持つ奴らがたくさんいるようだ。アリスもその一人だ。主に魔法を扱う程度の能力 ・人形を操る程度の能力を持っているらしい。だから人形が動いているんだ。
ブラックはボーッとしながら二つのカップに紅茶を入れていた。キッチンを出てリビングのテーブルに向かう。そこには人形を編んでいるアリスがいた。
アリス「あら、ありがとう。大人しくなったじゃない。」
ブラック「そりゃどーも…」
一週間、アリス邸で幻想郷の話を聞いて暮らしていたブラックは、次第に性格が丸くなっていた。
ブラック「宇宙船にいた時は、こんなにゆっくりと暮らせなかったんだよ。」
アリスに紅茶を渡して、お互いが向き合うような位置にブラックが座った。
ブラックが紅茶を一気に飲み干して話し始めた。
ブラック「俺達インポスターは、寄生された-元乗組員-だ。」
アリス「え?元々はただの乗組員だったの?」
ブラック「その通りだ。」
ブラックがため息混じりに語った。
ブラック「事の発端は惑星POLUSの探査だ。」
活発な火山活動が今も続く、雪で覆われた惑星POLUS。MIRA.HQの研究員達は基地を作ってスケルド号の乗組員に探索を行わせていたという。
ブラック「惑星POLUSの探査の後、乗組員達がMIRA.HQに持ち帰ってきた物は、小さな寄生生物だった。そこまでは良かったんだが、実験中にその寄生生物達が脱走しちまったんだ。」
脱走した寄生生物はクルー達に一匹残らず寄生したらしい。
ブラック「寄生されたクルー達はショックで気が狂ってた。そして、寄生されていないクルー達を襲い始めた。」
寄生され、怪物となったクルー達は、研究員やクルーを見境なく殺した。
ブラック「俺も気が狂って暴走した奴らの一人だった。正気に戻った時は、MIRAの本部の至る所が崩壊していた。」
アリス「生き残ったクルーはいたの?」
ブラック「ああ、スケルド号とかエアシップに乗って大半は避難していた。幸い、MIRA本部で犠牲になった奴らも少なかった。正気に戻った俺は小型船に乗って惑星POLUSに逃げた。」
ブラックは情報を集めながら、乗組員としてひっそり暮らしていた。
ブラック「MIRA.HQが復興して少しした後、クルー達は寄生されて凶暴化したクルーを-インポスター-と呼ぶようになった。俺は本能を抑えてスケルド号で暮らしていたんだが、ある日、殺しが乗組員に見られた。それでインポスターだってバレた俺は宇宙空間に追放...そしてここにたどり着いたって訳だ。」
アリス「色々と大変だったのね...」
ブラック「まぁ、殺した奴はインポスターだったけどな。」
アリス「インポスター同士で殺し合うの?」
ブラック「違う。俺は賞金稼ぎだ。だからそいつを殺ったんだ。慌てた乗組員が誤解で俺を凶暴なインポスターだと思ったんだろう。」
アリス「賞金稼ぎ?」
ブラック「実は、MIRAに.HQの奴らは理性を保っている俺みたいなインポスターに乗組員に化けた凶暴なインポスターの駆除依頼を頼んでいるんだ。」
ブラックは拳銃を弄びながら語った。
ブラック「MIRA本部から逃げたインポスターは俺だけじゃない。凶暴なやつだって、良いやつだってみんな散り散りにいろんな惑星とか宇宙船に逃げてたんだ。乗組員として普通に生活してる奴は良いんだが、たまに凶暴なインポスターが乗組員を襲う事件があるんだ。」
ブラックが拳銃を立てて、アリスに向きなおる。
ブラック「凶暴なインポスターを理性あるインポスターに依頼して駆逐するMIRA.HQの計画。その名も...[PROJECT・AMONG US]だ。」
- Re: 乗組員の幻想記録伝 5話 旧友との再会 ( No.5 )
- 日時: 2023/05/19 21:49
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
アリス「プロジェクト・アモングアス...」
ブラック「そうだ。PROJECT・AMONG USで賞金稼ぎになった俺はMIRA.HQの研究員達に賞金稼ぎの中で一番多く凶暴なインポスターを駆除したとして、-マーダーインポスター-なんて異名で呼ばれてたんだ。でも...」
ブラックが唸り声を上げて拳を握る。
ブラック「相手が凶暴なインポスターでも自分の手で殺すなんて、良心が痛むんだよ!」
ブラックの胴体と言える部分から大きな口が開いた。
ブラック「あいつらも元は乗組員だったんだ!あんな化け物になって暴れたいわけじゃねえのに!理性のあるインポスターを平然と追放する乗組員だっている!」
ブラックのヘッドセットに一筋の紅い光が灯る。光には怒りと憎しみがこもっていた。
アリス「...あなたが苦しい想いをしてるのは分かるけど...ここでそんな事言ったって何も変わらないわよ。」
ブラック「なんだと...!」
アリス「ここはそういう辛い過去を持った者もたくさんいる...」
昔、ある者は嫌われたくないがために心を閉ざした。
昔、ある者は悪魔と蔑まれ、封印されていた。
昔、ある者は争いを恐れ、逃げて来た。
妖怪達は、存在と力を維持するために...
アリス「-幻想郷-は妖怪とか神様が力を維持するために作られた物でもあるわ。そして、あなたみたいな存在を保護するためにもある。」
ブラックが顔を上げる。その紅い光に怒りと憎しみはもう無かった。
ブラック「...取り乱してすまなかったな。」
アリス「別に良いのよ。あなたが来たからこうやって暇も潰せるからね。」
ブラック「...そうか。」
二人が話終わったその時、外から羽の音が聞こえた。
アリス「...あの天狗が来たわね。」
ブラック「テング?」
アリス「新聞記者よ。」
玄関に向かうアリスにブラックがついていく。
玄関の扉を開けると、そこには射命丸文が新聞を抱えて立っていた。
文「こんにちは、アリスさん。清く正しい射命丸です!」
アリス「ありがとう。」
アリスが新聞を一枚貰い、何ページか捲っている。
アリス「いつもより内容がしっかりしてるわね。」
文「最近できた助手の方が手伝ってくれて、効率も上がったんですよ!」
アリス「助手?」
文「はい!そこにいる人みたいで...って、ここにもいるんですか!?」
アリス「ブラックの事?...ちょっと待って、-ここにも-ってどういう事!?」
ブラック「まさか、おれ以外にインポスターがいるのか!?」
文「...いや、彼は自分の事をレッドとかエンジニアって言ってましたよ?」
ブラック「......あいつか。」
ブラックの脳裏に追放された日の事が思い浮かぶ。
-------------
-スケルド号・原子炉-
ブラックは原子炉の真ん中で血だらけで立っていた。目の前には、自分が殺した凶暴なインポスターの亡骸があった。
ブラック「...これで128体目だな。最近、船内の乗組員が消えていたのはこいつのせいか。」
ブラックがその場から逃げようとしたその時、出口に赤い宇宙服を着た乗組員がいた。
ブラック「...レッド!?」
レッド「お前が...お前がインポスターだったのかよ!」
レッドには、ブラックが乗組員を殺した風にしか見えていなかった。
ブラック「待ってくれ!この死んだ奴はインポスターだったんだ!」
ブラックが説得する前にレッドは通報(report)してしまった。
-カフェテリア-
レッドの通報によって、会議が開かれた。
レッド「俺はブラックが死体の前に立っているのを見たんだ!」
レッドが必死に他の乗組員に訴えかけた。
グリーン「ブラックはなんでそこにいたんだ?」
ブラック「いや...タスクを終わらせて振り返ったら死体があったんだ。」
レッド「待てよ!ブラック!お前は出口の方に...」
ブルー「そういえば、レッドが通気口に入ってるのを見たぞ。」
ピンク「本当!?」
レッド「俺はエンジニアだ!信じてくれよ!」
追放する乗組員を決める投票が始まった。
グリーン「...ブラックが嘘を言うような奴じゃないって俺は知ってるんだ。」
ブルー「そうだそうだ!通気口を使えるレッドが言い訳したようにしか見えないぜ!ブラックもそうだろ?」
ブラック「ああ、本当に分からなかったんだ。」
レッド「だから信じてくれよ!」
投票の結果、レッドが追放されたが、嘘がバレたブラックもまた追放された。
-------------
ブラック「あいつには悪い事したな...」
ブラックがタスクを手伝っていることは真実だったが、証拠も曖昧のまま追放されたレッドにブラックは罪悪感を抱いていた。それと同時にレッドも自分と同じく幻想郷に来たことに安心した。
ブラック「なあ...射命丸とか言ったな。レッドは俺の仲間だ。連れて行ってくれないか?」
文「別に良いですよ。」
ブラック「ありがとう。アリス、すぐ戻ってくるから待っててくれ。」
アリス「はいはい...気長に待ってるわ。」
文に背負われながら、ブラックは人間の里に向かった。
-人間の里-
レッドは自分の家で寝転んでいた。
レッド「今日は寺小屋もやってないしな〜。日記でも書こうかな?」
その時、玄関からコンコンとノックが聞こえた。
文「レッドさん!あなたに会いたいって言う人が来てますよ!」
レッド「射命丸さんか。誰かな?」
レッドが扉を開いた瞬間、目線は文の隣にいるブラックに写った。
ブラック「...よう、レッド...十年振りだな。」
ブラックに返って来たのは返事では無く、拳だった。
続く...
- Re: 乗組員の幻想記録伝 6話 平穏 ( No.6 )
- 日時: 2023/07/20 23:22
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
ブラックレッドに話しかけた直後、顔面に拳が叩き込まれた。
ブラック「グワァァァァァァッ!!」
ブラックは後ろに2m程、吹っ飛ばされた。
レッド「...裏切り者がっ!」
レッドはバックパックからレンチを取り出して、ブラックに近づく。
ブラック「待て待て待て!あれは誤解なん...」
レッドは問答無用でブラックの頭をレンチで叩く。隣にいた文が突然の攻撃に驚きながら、レッドをなだめる。
文「あやや...レッドさん!ブラックさんはあなたとただ話がしたいだけなんですよ!」
レッドとブラックの間に文が割って入って、ようやくレッドの攻撃が止まった。
レッド「そうか...」
レッドはペンチを仕舞い込み、ブラックに近づいた。
レッド「ごめんな...ついついカッとなって...」
ブラック「いやいいんだ...あの時は本当に悪かった。射命丸...もう大丈夫だ。レッドと二人で話したいんだが、良いか?」
文「なら良いですけど...」
文はその場から飛び立ち、山の方へと向かっていった。レッドはブラックを家の中に招き入れ、これまでの体験を語った。ブラックは賞金稼ぎである事をレッドに明かした。
レッド「え?あの時の死体はインポスターだったのか!?」
ブラック「そうだ。」
レッドは顔を青ざめて、バツが悪そうに俯いた。
ブラック「タイミングが悪かったんだ。疑うのもしょうがない。」
ブラックはバックパックを探り、中からトランシーバーのような機械を取り出した。機械にはいくつかのボタンがついていた。
レッド「なんだそれ?」
ブラック「妨害工作に使う遠隔操作機器だ。これでハッキングしたスケルド号やPOLUSの基地の設備を操作できる。」
レッド「でも、今は使えないんじゃないか?」
ブラック「いや、アリス邸にいくつかもう仕掛けた。」
レッド「仕掛けただと!?」
ブラック「俺は、殺害を好まないが...まだアリスを完全に信用している訳じゃない。人形には小型爆弾、照明はいつでも停電に、扉の固定装置を取り付けておいた。万が一、裏切られた場合は、その仕掛けを使って始末する。」
ブラックは不服そうに目を細めた。
レッド「まぁ、俺達はそういう疑心暗鬼に陥る空間で生きてきたもんな。」
ブラック「そうだな。」
ブラックは苦笑して、バックパックからもう一つの機械を取り出した。先程のトランシーバーのような形と違い、小型の液晶パネルがついたタブレット端末のような物だった。
レッド「それは何だ?」
ブラック「俺が賞金稼ぎになった時にMIRAの研究員から支給されたのさ。この機械はとんだ代物だ。」
レッド「確か...PROJECT・AMONG US で賞金稼ぎになったんだよな。」
ブラック「本当だ。こいつはかなり強い賞金稼ぎのみが獲得する役職...-シェイプシフター-の変装機械だ。」
レッド「シェイプシフター?それに変装って...」
ブラック「俺は好んでインポスターと名乗っているだけだ。まだ妨害工作も変装も他の奴らは知らない。」
レッド「そうか...変装って事は、他の乗組員に変装できるって事か!?」
ブラック「もちろんだ。」
ブラックがパネルに表示された乗組員の写真をタップした。それと同時にブラックの真下に生えた黒い枝がブラック覆い、その上を緑色のカプセルが包み込んだ。数秒して、緑色のカプセルが破裂すると、中から出てきたのは、青色の乗組員の格好をしたブラックだった。
レッド「ほ...本当だ!偽物って見分けがつかない!」
ブラック「当然だ。MIRA.HQはこんな物を乗組員に黙って開発していたなんて少し驚いたけどな。」
レッド「なぁ...それって、乗組員以外にも変装できるのか?」
ブラック「やってみるか。俺が一度見た人物なら誰でも変装できるからな。」
ブラックが再度変装する。破裂して出てきたのは、霊夢そっくりのブラックだった。
レッド「おお!すげぇーっ!」
ブラック「そうだろう?」
ブラックは変装を解いて、元の姿に戻った。
ブラック「まぁ、これは使う事は無いだろう。」
ブラックは機械をバックパックに戻し、立ち上がった。
ブラック「もう日が暮れてきたな...アリス邸に俺は帰る。」
レッド「分かった。元気でな!」
ブラック「何、また会えるさ。」
ブラックは扉を開けて、家を出た。レッドはブラックの後ろ姿を見届けて、扉を閉める。
-魔法の森・アリス邸-
ブラックは木々に差し込む夕日を浴びながら、ブラックは静かな森の中を歩いていた。しばらくしてアリス邸に到着した。
アリス「あら、お帰り。」
アリスは玄関の前で立っていた。
ブラック「ただいま。」
二人は一言二言話して、家に入っていった。
今日も、レッドとブラックは平和な一日を終えた。
迫ってくる危機にも気づかず、二人は一日を終えた。
続く...
- Re: 乗組員の幻想記録伝 7話 襲来 ( No.7 )
- 日時: 2023/10/08 09:22
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
レッドとブラックが再会した翌日、二人は全速力で博麗神社に向かっていた。なんと紫がまたもや追放された乗組員を見つけたらしい。
-博麗神社-
霊夢「あら、二人共来たのね。」
レッド「また再会出来る仲間が増えるからな。」
ブラック「だが...問題はそいつが本当の乗組員かだ。」
霊夢「え?」
ブラック「事実、シェイプシフターの俺もここに来たんだ。追放されたインポスターがいてもおかしくない。」
レッド「...確かに、ある程度の知能をあいつらも持ってるな...」
レッドはレンチを握りながら身構えた。そして、三人の前に出現したスキマから紫と共に新たな乗組員が来た。
レッド「お前は...ブルー!?」
ブルー「レッド!何故ここに...」
ブラック「よく来たな。」
三人で少しの間、感傷に浸っているとブラックがブルーに質問を始めた。
ブラック「...で、お前は何故追放されたんだ?」
ブルー「それが...ブラックがインポスターだって分かった後、レッドの冤罪を皆が知って、お前を庇った俺が疑われちまったんだ。」
ブラック「それはすまなかった...」
ブルー「別に良いぜ。二人にまた会えたしな。」
レッド「俺を追放した事は何とも思ってないのかよ...」
霊夢「あれ?また勝手にいなくなって...」
既に紫の姿は無かった。
霊夢「まぁ良いわ...ほら、三人共!」
話を遮って霊夢が区切りをつける。
霊夢「感動の再会の邪魔しちゃって悪いけど、そろそろ立ち去ってもらうわよ。」
レッド「はいはい、分かったよ。」
レッドは百円玉を指で弾いて賽銭箱に入れると、階段の方に歩いて行った。
レッド「じゃあな。里のタスクが残ってるんだ。」
ブラック「またな。ブルーは俺と一緒に来い。野宿は嫌だろ?」
ブルー「お...おう。」
-魔法の森・アリス邸-
ブラックとブルーの二人はアリス邸へと森の中を歩きながら帰っていた。
ブルー「それにしても驚いたぜ。お前がそのPROJECT・AMONG USの賞金稼ぎだなんて。」
ブラック「ここに来た以上、隠す意味は無いからな。」
しばらくして、アリス邸に着いた。ブラックが玄関の扉を開けると、アリスが立っていた。
アリス「お帰りなさい...って、もう一人増えてる!?」
ブルー「どうも...お邪魔します」
アリス「家は宿屋じゃないのよ?」
ブラック「あの船に乗ってたヤツなんだ。今日だけでも泊まらせてくれないか?」
アリス「...しょうがないわね」
ブラックの願いを聞いて、渋々とブルーを家の中に招き入れた。
寝室で布団の上に寝そべったまま、ブルーとブラックは談笑していた。ブルーは幻想郷の事についてブラックから教えてもらっていた。
ブルー「いやぁ〜本当に助かったよ。ブラック」
ブラック「別に良いさ。俺のせいで追放されたようなモンだろ?」
ブルー「そうだけどよぉ...」
ブラック「明日になったら森の中を探索しよう。アリスに聞いたんだが、この森には人間の魔法使いがいるらしい。」
ブルー「人間の魔法使い?」
ブラック「ああ、この幻想郷では、人間が妖怪とか言う化物になる事が禁じられているらしい。」
ブルー「もしも破ったらどうなるんだ?」
ブラック「博麗神社に赤白の巫女がいただろ?あいつの名は博麗霊夢。この幻想郷では、あいつが人間達の中で一番強いんだとさ。妖怪とか神にも渡り合えるとか。」
ブルー「それがどうしたんだよ。」
ブラック「その化物みたいに強い巫女が殺しに来る。」
ブルーがその言葉に身震いした。
ブラック「少し前に里で妖怪となった人間の一人が霊夢に頭からブッたぎられたらしい。」
ブルー「怖えな...」
ブラック「話を戻して、そんな霊夢と仲が良いってのが、その人間の魔法使い-霧雨魔理沙-って奴らしい。」
ブルー「そいつも強いのか?」
ブラック「霊夢と戦う事もあるってアリスから聞いた。相当な実力者に変わり無いだろう。」
ブラックはあくびをしながらブルーに背を向けた。
ブラック「今日はもう遅いし、そろそろ俺は寝る。」
ブルー「そうか...」
ブラックが寝静まると、ブルーは静かにアリス邸を出て歩き始めた。
ブルー「...良い事を聞いた」
ブルーのヘッドセットに紅い光が灯った。ブラックから奪った変装機械と妨害工作の機器を片手に、正真正銘のインポスター-ブルー-は、森の闇へと消えていった。
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