二次創作小説(紙ほか)
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- 夢 (ラス為)
- 日時: 2023/02/05 21:51
- 名前: ガチ恋オタ君 (ID: ykAwvZHP)
最近よく夢を見る。
私は暗い場所にー人で立っている。
「ここは…?」
周りを見渡すと遠くには母上と父上、そしてティアラがいる。
私はそこへ行こうとする。
けれどそこへは行けなくて、幸せそうな三人をただ見つめ続ける私。
後ろからは使用人や貴族からの嘲笑や悪ロ。
「ご覧になりました?プライド様ったら本当に惨めですこと。」
「まぁ能なしわがまま姫になんて誰も関わりたくないでしょうね。」
「誰にも相手にされず、おかわいそうに。」
「貴女がお相手なさったらどう?」
「ご冗談を!あんな役立たず姫の相手なんて、するだけ損ですわ!」
「女王陛下や王配殿下にすら相手にされていませんものね!」
やめて、やめてやめてやめてッ!!
聞きたくないッ!!
横からは騎士達の話し声。
「プライド様って調子乗ってるよなー。」
「確かにな。7年くらい前なんか崖が崩落するって自分が言ったのに飛びこんでくし。」
「マジ迷惑だよなー。」
「本当に。俺らの仕事うばってるって気付いてほしいですよね、力ラム隊長、アーサー隊長。」
「言うのは良くないが、そうだな。」
「自分もそう思います。」
ッ!?
…そうか。
「ははっ…」
どこかで自分は役に立ってると思っていた。
けれどそれは全部全部…
「迷惑だったのね…。」
夢ならこのままでいたい。
現実で私の存在も、何もかも全部。
消えてしまえばいいのに…
>>>
「…姉…ま…。お姉様?」
ティアラに呼ばれて我に返る。
そうだ。今はティアラとステイルと私の部屋で本を読んでいたのだったと思い出す。
「どうしたの?ティアラ。」
「…お姉様。大丈夫ですか?」
「え?」
「お姉様のお顔が無理をしているように見えて…。」
「ティアラの言う通りです。姉君、しっかり寝ていますか?」
「…ええ。寝ているわ。私は大丈夫よ。私は大丈夫…」
プライドの言葉は途中から自分に言い聞かせているかのようだった。
後ろに控えている近衛騎士の力ラムとアーサーもプライドが心配だった。
「姉君は最近、明らかに無理をしています。少しくらい休んでください。」
そう。実はプライドはあの悪夢を見るのが怖くて、こうしてティアラやステイルと遊んでいる時以外は寝ずに仕事をしているのだ。
そのため現在のプライドの机には大量の、通常の王女の仕事の十倍はある書類があった。
これを理由にプライドは寝なかった。
ちなみに書類の約九割は提出が二々月以上も後のものばかりだった。
「皆が姉君を心配しています。ご自分の立場を理解してください。」
「そうですよお姉様っ!このままではお姉様が大変なことになってしまいますっ!力ラム隊長やアーサーだって心配していますっ!ですよねっ」
「勿論です。プライド様、どうかお休みください。」
「騎士団全員がプライド様を心配してンの見ました。俺もです。なンで休んでください…。」
「でも…」
「「休んでください!!」」
ということと繰り返した結果、プライドが負けた。
ティアラがひざ枕をして寝ることになった。
「おやすみなさいっ!お姉様っ!」
「…おやすみ、ティアラ」
そしてプライドは意識を手放した。
>>>
暗い場所に立っていた。
…ああ、またここか。
遠くにいる母上と父上とティアラ。
近づこうとすら思わない。
でも聞こえる声だけは…
「使えない役立たず姫」
「誰にも相手にされない。」
「惨めな王女」
「調子に乗ってる。」
ごめんなさいッ!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!
もう何もしないからッ!許してッ!
「ラスボスのくせに。」
ッ!?
ごめんなさいッ!
ラスボスなのにッそれを忘れて調子に乗ってごめんなさいッ!
もうやめてッ!
助けてッ!
「お姉様っ!」
「姉君っ!」
「「プライド様っ!!」」
そこで呼ばれて目が覚めた。
「どうしたの?皆…」
「お姉様、うなされていたんです。」
「ごめんなさいと何度も何度も。姉君…お聞きしたいのですが、ラスボスとは何ですか?」
「ッ!」
「うなされながら言っていた言葉です。そして、どんな夢を見ていたのか教えてください。」
「私達がお姉様の力になりますっ!いつも助けていただいていますし、お姉様に助けられた人を何人も見てきました!」
プライドはティアラ達には勝てないと思った。
「分かった。話せる所まで話すわ。」
「ありがとうございますっ!」
「…ラスボスは私のことよ。」
「え?」
「ラスボスは、この世界のー番の悪者のことよ。それが私、プライド・ロイヤル・アイビー。」
「お姉様は悪者なんかじゃありません!」
「アダムに狂わされた時の私。」
「!」
「あれが私の本来のあるべき姿よ。今の私は、ある日その道からはずれただけ。」
「そんなっ!」
「本来なら私が国をかたむけて、ステイル、アーサー、レオン、セドリック、ジルべール宰相、ティアラ。この中の誰かに殺されるはずだった。」
「「「なっ!」」」
「私が殺されてティアラが女王になる。それで全てが円満に終わる。それが”幸福な結末”だった。」
「!!」
「皆に愛される心優しいティアラはこの世界の主人公よ。主人公と悪役。それが元の関係だった。」
「でも今は違いますよねッ!?お姉様は皆に愛されていますッ!」
「…どうかしら。私は迷惑なだけかもしれないから。」
「姉君が迷惑…?」
「ええ。例えば崖崩落事件の時。私はー人で敵の中に入っていったでしょう?あの後も同じようなことを繰り返した。今考えれば、あれは迷惑以外の何物でもないわ。私が行ったことは全て間違っていたのよ。」
「間違っていた?」
「アーサー?」
「プライド様が迷惑?プライド様が行ったことは全て間違っていた?ッンなわけねぇでしょうッ!!」
「え?」
「あの時ッ!親父が死にかけた時の俺の絶望を知ってますか!?この世の終わりと思うくらい絶望しましたッ!そこから救ってくれたのは他でもないプライド様ですッ!俺が騎士になれたのも最悪から立ち上がれたのも全部ッ!全部が全部あなただッ!だからッ!そんなこと言わないでくださいッ!」
「落ちつけ、アーサー。」
力ラムがアーサーをなだめる。
「…すンません…。」
「…いいえアーサー。ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ。」
「…お姉様。お聞きしたいのですが…。」
「どうしたの、ティアラ?」
「お姉様は本来の道から、ある日はずれたと言ってましたよね?原因は何ですか?」
「それはッ…!」
「お姉様、私達は必ずお姉様の力になります。私達を救ってくれたように、今度はお姉様を救います。私達を愛してくれたように、今度はお姉様を愛します。私達を信じてくれたように、今度はお姉様を信じます。私達を導いてくれたように、今度はお姉様を導きます。」
「ティアラ…。」
「お話ししてくださいませんか?」
「ッ話す、わッ…!」
「!ありがとうございますッ!」
「…記憶があるの。」
「記憶…?」
「ええ、こことは別の世界…前世の記憶よ。」
そして私は前世の記憶とゲームの内容まで、全てを話した。
>>>
「ーーーここまでが私の記憶よ。…信じれないでしょうけど…。」
「お姉様ッ!」
ティアラが半泣きで抱きついてきた。
「ど、どうしたの!?ティアラ!?」
「姉君…。」
「ステイル?」
「ッ気付けなくてッすみませんッ!」
ステイルは今にも泣き出しそうだった。
「…気付けないのは当たり前よ。でも、ありがとう。」
「ッはい!」
「プライド様…。」
「力ラム隊長…。」
「…私の力が及ばず、申し訳ありませんでした。」
カラムは苦しそうな表情のまま頭を下げた。
「顔を上げてくださいカラム隊長!カラム隊長はいつも私を支えてくれました!」
「…光栄ですッ!」
「プライド様ッ…!」
「アーサー。」
「ッずっとー人でッ背負ってきたンすかッ?!8才の頃からッずっとッ!?」
「でも皆がいてくれたから辛くなかったのよ。だから皆…これからもー緒にいてくれる?」
「「「「勿論ですッ!!」」」」
「ッありがとうっ!」
もう、あの夢は見ない。