二次創作小説(紙ほか)

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日時: 2024/04/19 22:09
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

私は弱い。

努力している姿は見せない。

霊夢と早苗は才能があって羨ましい。

咲夜だって人間なのに時を止められる。

それでも私は、一生懸命努力して作った魔法だけしかない。

対して努力もしない霊夢に負けて、どんな窮地でも奇跡的に逆転する早苗にも負けた。さっきなんて、紅魔館に忍び込んだ事がバレて咲夜に殺されそうになった。

周りは人外と化け物じみた人間。いくら強くなっても、アリスは私に手加減する。

まだ足りない。まだ弱い。もっと強くなりたい。もっと認められたい。

私は今日も八卦炉を片手に家を飛び出した。今日こそ霊夢に勝つんだ。運でも無い...手加減もされない。確実に打ち負かしてやりたい。

博麗神社には誰もいなかった。いつも以上に張り切っていたのに、少しがっかりした。里で警備でもやっているのだろうか。おまけに萃香やあうんの気配さえ感じられない。今は昼過ぎ。いつもなら二人で縁側に座っているのだが。そういえば紫も見かけない。霊夢がいない時は必ず出てくる筈。

やるせないったらありゃしない。踵を返して私は鳥居の外に出た。



その瞬間、上空から爆音が轟いた。



何事かと空を見上げると、結界が大きく崩れていた。幻想郷を外の世界と遮断する博麗大結界が壊れたのだ。その様子を見て唖然としていると、なんと、結界の外から黄金の何かが現れた。魚と表すのが適切か...全身を金属で包み込んだそいつは、この世の全てを恨む様なその顔だった。黄金魚と一緒に小さな何かも飛んでくる。幻想郷じゃ絶対見ないであろう-戦闘機-の様な物。

異変だと、頭で考えるより先に私は箒に乗っていた。

結界から出た黄金魚は輝針城に突進したかと思うと、急旋回して、城壁を尾ビレでいとも容易く破壊した。かなり距離が離れている筈だが、こっちにまで風圧がかかってきた。だが、今の動きで確信した。あの黄金魚は妖怪とかの類では無い。いつの日か、図書館で見た人間達の戦争についての本。空中に浮く黄金魚の姿は一種の巨大戦艦の様にも見える。ならば操縦者がいる筈。私は迷わず黄金魚に突っ込んだ。黄金魚もこちらに気づいたのか、凶悪な顔面をこちらに向けた。

何か嫌な予感がする。

その考えは見事に的中した。私が右に旋回したのと同時に、私が元いた場所に黄金魚の口から赤紫の極太レーザーが通っていった。避けていなければ確実に死んでいただろう。しかし、私は既に黄金魚の目の前にいる。八卦炉を口に向かって構えた。

魔理沙「喰らえ。マスタースパーク。」

そいつのビームと同等の極太レーザーを打ち返してやった。マスタースパークは黄金魚の装甲を内部からズタズタにしていった。ダメージに耐えきれなかったのか、黄金魚は切り身みたいにバラバラになって四散したと同時に巨大な爆発を起こした。

ああいうデカい奴は弱点も分かりやすくて助かるぜ。

それにしても、霊夢の奴...紫と一緒に結界の修復にでも行っているのだろうか。それなら黄金魚の近くに居る筈だが。考えてる暇は無い。霊夢達が生き残っている事を信じよう。

私が魔法の森に戻る最中、結界の外から現れたであろう戦闘機達は絶え間無く私に攻撃してきた。幸い、敵の攻撃は私を直線上に狙うものばかりで避けるのは簡単だった。ちょっとした魔法弾を与えるだけでも墜落するし。

アリスの家が見えてきた。生きているかだけは確認したい。もう異変に気付いてどこかに行っているかもしれないけど。私は地面に近づき、箒から降りようとした。



しかし、休めるのはまだ先になりそうだった。アリスの家の後ろからさっきの黄金魚が出た時と同じ轟音が鳴り響いた。私の本能がこの場から離れろと危険信号を出している。私は急上昇をした途端、自分の勘通り、その場は一秒もかからず危険地帯と化した。土煙を上げて、地面から巨大な何かが出てきた。まるで最初から、古代からそこに埋まっていて、私を待っていたかのように、そいつは姿を現した。一見、外の世界に存在する戦車の様に見える。しかし、その大きさは尋常では無かった。おまけに脚まで付いてやがる。

巨大戦車がアリスの家を押しつぶすと、私の事を認識しているかの様に、木々をなぎ倒しながら私を追跡し始めた。近くに来れば、巨大なミサイルを。遠くに行ったかと思えば、青色の丸っこい弾幕を撃ち込んでくる。だが、私は宙に浮いている。お前は下。安全圏から攻撃させてもらうぜ。

魔理沙「星符・ドラゴンメテオ」

戦車のど真ん中に上から高威力のビームを撃ち込んでやった。壁面についている大砲と背面のハッチは焼き切れ、キャタピラの一部が砕け散った。これでもう走れないだろう。

しかし、勝ち誇ったのも束の間だった。その戦車が宙に浮き始めた。どんな原理だよ畜生。背中の装甲をぶち破って出てきたのは、緑色に光る不気味な眼だった。こいつも生き物がモチーフか?どこかの図鑑で見たことがあるカブトガニそっくりのフォルムだ。考えてる余裕は無い。こいつ...明らかに機動力が上がってやがる。私の移動速度に余裕でついてきているんだ。本気で殺すつもりだろう。さっきよりもミサイルの量は増えてるし、レーザーみたいなのも撃ってきた。

魔理沙「汚え弾幕だぜ...」

戦車の攻撃は-殺す事にだけ特化-しているのか...私に何としてでも攻撃を当てる。そんな執念が弾幕から見られた。私は八卦炉を取り出すと、そいつの目ん玉目掛けてマスタースパークを放ってやった。そこが弱点だったらしい。眼にはヒビが入り、そのすぐ下にくっついてる脚がボロボロと崩れ落ちていった。体の至る所から閃光を放ちながら、戦車は大爆発を起こして消えた。

美しい弾幕をこよなく愛する私に、お前の弾幕が通用するかと思ったか?

アリスは見つからなかった。森に住んでいる他の妖怪達の気配さえしない。皆どこに行ったんだろう。

私は幻想郷のあらゆる場所を探してみたが、結局誰一人見つからなかった。シーラカンス...シャコ、イソギンチャクにピラニア。海とは無縁の幻想郷では見られない生き物ばかりがそこらかしこにいた。勿論、戦艦としてだけど。どれだけ戦い続けたのだろうか。そいつの攻撃パターンを読みながら、次々と迫る戦艦をなぎ倒す。そろそろ限界が近かった。魔力が尽きかけながらも、私は箒に乗って、幻想郷を飛び回った。そして、決戦は人間の里で始まった。私が里の上空を飛んでいると、私より数メートル大きな何かが浮遊している。攻撃すると分裂を繰り返す。マスタースパークでまとめて焼き払って、一息つこうとした瞬間、里の地面を、民家を吹っ飛ばし、巨大戦艦が現れた。これまで見たどんな戦艦よりも凶悪な見た目と殺意剥き出しの大量の武装。体が震える。私は直感で理解した。こいつが元凶だ。こいつが親玉だと。

荒廃した里から抜け出し、-デカブツ-と私は幻想郷の上空を高速移動しながら戦った。攻撃は今まで戦った奴らよりも段違いで激しかった。
複数の砲台の一斉攻撃は死を覚悟した。そうだ。この戦いはただの弾幕ごっこじゃない。幻想郷の命運をかけた殺し合いだと理解した。地面さえ切断するレーザーを避け、掃射する様に絶え間無く発射される青いレーザーの隙間を縫う様に回避し、接近する。
しかし、開いた口からイルカの様な艦載機が出てきた。艦載機の撃つレーザーが私の右腕を掠めていく。それだけで大量の血が飛び散った。
下部につけた砲台で地面を撃ち込み、その爆風で岩石や土煙...大地さえ、その戦艦の武器の様に見える。尻尾の方に回り込んでも、出てきたのは、どれだけ避けても、エネルギーが切れるまで追尾してくる黄色いレーザー。正に死角無し。最強の戦艦だ。そんな化け物相手に、私は生身で挑んでいる。
殺し合いだと頭では理解しているが、それ以上に興奮が抑えられない。普通の弾幕ごっこでは体験できない...相手を圧倒する弾幕。私は一発でも直撃すれば即死の攻撃を回避する事にとてつもない幸福感を感じた。
妹紅と輝夜もこんな気持ちで戦っているのだろうか。私と戦艦は死に物狂いで攻撃をぶつけ合った。どれだけ弱くたって弾幕は弾幕。ダメージは戦艦の装甲に蓄積していった。数時間の激闘の末、遂に戦艦の装甲が爆発し、煙が出始めた。
それと同時に、戦艦は最後の意地なのか、中央のハッチを開けて、青い閃光を飛び散らせながら、大量の小型ミサイルを射出しながら私に突進してくる。そっちが全力なら、私だってぶつけてやる。

魔理沙「これで終わりだ...魔砲」

ファイナルスパーク。

全ての魔力を使い切り、私の全身全霊の攻撃が戦艦に直撃した。戦艦は爆発を立て続けに起こし、煙と火花...閃光を撒き散らしながら沈んでいく。雄叫びと共に大爆発を起こした。

数時間の死闘は、私にとって、最高の時間であった。今までは努力しても霊夢達に勝てないと絶望していた。しかし、この戦艦は私の底力を曝け出してくれた。戦った戦艦に同情している理由では無い。最後に戦った巨大戦艦...私は敬意を持って、-GREAT THING-と呼ぶ事にした。

魔理沙「こんな事してる場合じゃないか...」

草木は枯れ落ち、辺り一面は火の海。幻想郷で生き残っているのは私だけの様だ。博麗神社に戻り、箒から降りた瞬間、これまでの疲労が一気に私を飲み込んでいった。

眠い...体が動かない。瞼が閉じそうだ。

腕は上がらない。どれだけ抗おうと、意識は朦朧としたままだ。

火の海に包まれた楽園を見ながら、私の意識は消えていった。










____ま___魔理沙...
_____________起きて...
___起きなさいよ...

「いい加減起きて!」
魔理沙「うわぁぁぁぁ!?」

誰かの怒号で意識が蘇った。あれ、周りに植物が生えている。いつも通りの幻想郷が見えた。

魔理沙「あれ、霊夢?どこに行ってたんだ?」
霊夢「寝ぼけてんの?アンタ、弾幕ごっこの途中でいきなり倒れたんじゃない。」
魔理沙「あ......」

思い出した。近距離の格闘戦になって、八卦炉を構えようとしたら、霊夢にお祓い棒で叩かれてそのまま...

魔理沙「ははは...夢か」
霊夢「夢って...何見てたのよ?」
魔理沙「幻想郷が侵略される夢だよ。」
霊夢「ふーん...不気味ね。まぁ良いわ。弾幕ごっこは続けるの?」
魔理沙「勿論だぜ!」

____数時間後。

霊夢「はぁはぁ...中々やるじゃない...」
魔理沙「そっちもな。隙あり!」
霊夢「あ...」

霊夢の弾幕を掻い潜り、八卦炉を腹部に押し付けて、渾身の一撃をお見舞いしてやった。

霊夢「がっ...つ、強い...」

霊夢は膝をついて、呟いた。

霊夢「私の負けよ。」
魔理沙「ほ、本当か!?」
霊夢「手加減はしなかった...アンタ、強くなった?」
魔理沙「よっしゃぁ!遂に...遂に霊夢に勝った!」

正真正銘。私は霊夢との本気の戦いに勝利する事が出来た。

霊夢「もう日が暮れるわね...泊まっていく?」
魔理沙「あぁ、今日の夕飯は霊夢の担当な。」
霊夢「このままじゃ、本当に修行しないと魔理沙に勝てないわ。」

霊夢はとぼとぼと、台所へ向かっていった。魔理沙は縁側に座り、夕日を眺める。

魔理沙「...努力が実ったんだなぁ...痛っ!」

そう呟いていると、右腕に激痛が走った。

魔理沙「....は?」

腕には、GREAT THINGの艦載機のレーザーに当たった時の掠り傷があった。

魔理沙「...本当に夢だったのか?」

その答えは誰にも分からない。戦艦達が本当に幻想郷を侵攻したのか。それとも、単なる幻か。

幻想郷は変わりなく、一日を終えた。


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