二次創作小説(紙ほか)

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偽りの僕ら、でも互いに支え合えればいい。
日時: 2025/06/10 03:28
名前: Gk (ID: dc7bvS1.)

~1~
 僕は、今あたらしい学校人生を始めようとしている。この空気が柔らかいような春の日の中、僕達令和10年度入学生は、高校の入学式を迎えようとしていた。新しい学校人生の幕開けだ。そう思いながら上を向きながらNovelbrightさんの「Walking with you」を口ずさんでいたら、突然前方から衝撃が走った。びっくりして前を見ると、立ち止まっている人が見えた。制服を見るに今回、自分と同じ学校に入学する入学生のようだ。その人、「彼女」は、すみません、と言ってその場を離れようと歩き始めていた。違和感があったが、気にせず追い越して玄関口までダッシュした。一応自分は50m走6.5秒台なので走れば10分程度で着けた。そして教室に入り、入学式に参加する準備をしていると、後ろから物音がした。振り返るとさっきの人だった。
(うわ、同じクラスか,,,。気まずいな。)と思っていたが、また違和感が走り、今度はよく観察してみた。観察してみると大人がついている。それに僕に気づいていない感じだ。
(まさか,,,。聴覚障害者かな。)ようやく気づいた。彼は聴覚がなく、ぶつかったときも自分に「音がない」から聞こえなかったんだ。でも、彼はすみません、と口にしたぞ?でも、読唇術って聞いたことがある。それかな?と考えているうちにいつの間にか気づかれていたみたいだ。こっちを見て驚いている。その時、彼女はメモ帳を取り出し筆談をしてきた。
(朝はすみません。)すぐさま返す。(いえいえ、大丈夫ですよ。)などと話していると、どんどん生徒が入ってくる。急いで席について本を開いた。自分の中学時代の友だちもこの高校に来ていて、そいつは、僕が女子と関わるとすぐにお似合いだの色々言ってくるせいでろくに話せない。そんなやつに入学初日にグチグチ言われるのは流石にゴメンだ。幸いにも彼はまだ来ておらず、助かった気がした。そして、クラスの皆が異変に気が付き始める。大人のついている唯一1人だけの児童。「彼女」は、そうだ「遠藤すみれ」は、1人だけ浮いているような感じになってしまっていた。そんなこんなで、なんだか遠藤すみれのことが気になってずっと気にかけていた。入学式の時も、一番最初のHRの時も、ずっと観察していて気づいたことがあった。彼女は全くと行っていいほど笑わない。もしかしたら、何かあったのかな?とても強いストレスによって耳に負担が行き、聞こえなくなる人もいる。だから、今の時代普通に有り得そうで怖い。そんなこんなで初日が終わった。そして、浮いてしまっているような感じの彼女のために1つの計画を立てて実行してみることにした。楽しみだ。
~2~
 入学して1ヶ月がたった。皆は新しい環境に慣れ始めて、新しい友達も、勉強も、全員進んでいるな、と思っていた。彼女を抜いて,,,。彼女がずっと1人で本を読んでいるか、ボーッとしていた。時々クラスのワースト最上位くらいの優しさが目立つ渡野しずくが筆談したりして、話しかけている。筆談で話しているときはなんとなくだけれども、楽しそうな感じがする。それと同時、なんだか、申し訳なさそうに感じた。そんなことないはずなのに。
 そして、入学式の日に立てた計画を実行する日が来た。その計画とは「彼女に手話で話しかけてみる。」だった。彼女はなんとなく会話がスムーズにできず、苛立っているように感じることが何度かあった。なので、手話通訳者がいたら、楽かな。と思い、朝早くに登校して、珍しくいつも自分より早く来る人を待つ形になった。毎回、彼女が一番最初に来て、その5分後ぐらいにほかの人が集まりだす。そんな感じだった。だから、その5分間の間で話しかけてみようと思っていた。
そうして、待つこと30分。早く来すぎた。ようやく彼女が来て、驚いた顔しながらも自分の席で荷物を整理していた。そこへ、自分が近づいて手話で(おはよう、今日もいい天気だね。)と、話しかけてみた。すると彼女の顔が更に驚いた顔になり、硬直してしまった。しまった、流石になんか気持ち悪いかな?と思い、ごめん。と謝ろうとすると、いきなり笑い声が聞こえた。窓の外か、廊下の方から聞こえた気がしたが、その声の発生源は彼女だった。いつまでも、いつまでも笑って笑い終わったのが1分後ぐらいだった。腹を抱えながら、「ありがとうね。」と話しかけてきた。
(?)(!?)(!!?)と、頭の中ではてなの数が増加していく。彼女が教えてくれた話を要約すると、まず、話は中学生時代までに遡る。中3の頃受験シーズンで事件が起きた。家に強盗が入ってきて、金目のものを盗みに来たのだ。その時家には彼女しかおらず、臨戦態勢に入ったが、流石に中学生女子対成人男性は負けてしまう。その後、痛めつけられたりさんざん最悪なことをされた挙げ句、殺されかけた。そんな出来事があったからこそ聞こえないふりをしたらしい。そのときは、物音がして下に降りた際、大きな物音がして、その方向に向かったら犯人がいて、そうなったらしい。いきなり襲われたらしく、耳が聞こえないふりをしていればそんなことにはならなかった。と考えたのだそう。犯人は捕まったが、心の傷は癒えることがなかった。でも、僕が手話で話しかけた優しさがなんだか面白く、楽しい雰囲気になれたらしい。そんな話を聞いている間に他の生徒が登校してきており、話さないで、と口止めされてから話は途切れた。まさかすぎてびっくりしていた。その日は授業に身が入らなかった。
~3~
 そんなこんなで、たまに世間話をするようになり、意外と楽しい生活を送っていたが、夏休みに入った。自分は野球部に入っていて、夏休み中に大会があった。県大会決勝戦が今日あり、それに行ってくる。今朝は早く置きすぎたせいでランニングしてきたぐらいだ。準備万端。行こうか、と自転車を漕ぎ会場につくと、皆もうベンチに入っていた。早くないか、と思いながらもベンチに入った。相手は県で1位、2位を一緒に闘い合っているライバル校。またこの組み合わせになり、もう何度目なんだろう、と呑気に思っていたら、試合が始まっていた。自分は、3番Pで入っていて、初回の表。相手も最初からエースを投入して全力疾走する感じらしかった。でも、これを勝てば夢の甲子園出場。そうなると力が湧いてきて、釣り球としてきた、高めのストレートが失速していたのを見逃さず、ライトスタンドへ突き刺した。その後の4番打者が見逃し三振に抑えられ、自分がピッチャーのマウンドへ向かう。マウンドってなんか、ピッチャーの家みたい。子供の頃そう思っていた。ピッチャーの守る位置だし、何より、一番特別な場所だから。そんな家から投げる自分のボールは、うねりながら打者の膝下へ決まった。三者見逃し三振に抑え、流れを作れた。そのまんまの勢いで、2回に12点を取り、そのまま4回コールドで、勝利した。相手エースピッチャーが崩れたから良かったが、彼のボールは本当に怖い。そんなこんなで、その後甲子園に行き、ベスト3に入って、2位のフィニッシュだった。正直抑えられそうだったが、疲労が出てボールがとことん抜けてしまった。でも、トロフィーを手に入れられたのでOK!と先生に言われた。凄い疲れた中だったからほとんど無気力で聞いていたけれども。そんな、野球部の大会でほぼ潰れた夏休みでしたとさ。
~4~
 そして、また、学校生活に戻ってきた。地獄の夏休みを過ごしたと思ったら今度は文化祭・体育祭,,,。鬼畜すぎるなと思いながらも頑張った。たくさん活躍した。本番も残った気力すべて振り絞って出した体力で全力の演劇をした。疲れた。馬鹿馬鹿しいけど面白かった。また、来年まで待つの~?嫌だー。
 そうやって、文化祭・体育祭の後、皆浮かれてしまっているのか最近五月蝿い。雑音がすごすぎて趣味のことに集中できない。と、非常に困っていた。そんな中事件が起こった。ちょうど文化祭等の2週間後、浮かれすぎていた男子の1名が、すみれの耳にあったダミーの補聴器を取ってしまった。返してと、必死になっていると伝えても聞く耳を持たない。それどころか、エスカレートしていくばかりだ。僕は、人の感情をなんとなくだけど可視化できる感じがする。周りにオーラが見えるような気がするのだ。その時のすみれのオーラは見たことのないほど強大な怒りをあらわにしていた。本当にやめてほしい、と、読唇術で覚えた設定の日本語で精一杯伝えていた。でも、その男子は「そんな取られるのが嫌ならば、障害者になんて生まれてこなければよかったんだよ。産んだお前の両親を憎むんだな。」と、流石に僕でもやばいと感じる言葉。あの真っ赤なオーラ。それにこの怒りが組み合わさると...。「おい、ゴラッ!!」という、エグい声が聞こえた。案の定。すみれが流石にぶちギレして掴みかかっていた。彼女のあんな般若のような顔、初めて見た。それどころか、あんなにキレたオーラ出す人を初めてみた。
「誰が、障害者で生まれてこなければよかっただって?」
クラスの空気が凍りついている。それに、空気の感じからして、隣のクラスの人達も凍りついているようだ。おかしいことに気づき始めている人も居た。
「誰が、障害者に産んだ両親を憎めだって?」
流石に僕もブチギレ寸前だったから、一緒に言葉を付け足してあげた。
「今の言葉、取り消せよ。」
「いや、ポー◯ガス・◯・エ◯スかよ!」
と、つっこんできた幼馴染を睨んで黙らせて、さっきよりもっと低いまるで重低音のような声で続けた。
「浮かれ過ぎなんだよ。いつも、いつも見ればほとんど馬鹿してて、周りに迷惑かけて。更に、障害者へ向けての罵詈雑言だぁ?ふざけてんじゃねぇか?なぁ?俺の姉ちゃんは知的持ってるからわかる。10歳年が離れているから、皆知らないけど。でも、姉ちゃんだってとても苦労してようやく手に入れた平和だった。その前にもたくさんあった。いじめ、誹謗中傷、カツアゲ、痛めつけとか色々されて、怪我だらけで帰ってきて本気で死にかけていたこともあった。そんな、人のことを聞いてまだそんな大口たたけんのか?あぁ?流石にプッチン来たわ。まじないわ。2度と言うなよ。わかったな?」硬直しているそいつに向かってもう一度「わかったな!?」と声を荒げるとすぐに白旗を挙げた。ただ、すみれはただじゃすまなかった。辛い障害者の嘘の肩書を着けて生活をしてきていた。だからこそわかった辛さを、たった1人に理解してもらえなくて、でも理解してもらいたくて、様々な感情が入り混じって、いつの間にか彼女は、手を上げてしまっていた。それでも、収まらなくて、もう一発、もう一発、もう一発と殴っていくうちに馬鹿の意識が飛んでいることに気がついた。彼女は小学生から中学にかけてボクシングをしていたため、そうなってもおかしくはない。って、そう解釈する前に止めなければ...。すぐに近寄り、彼女に話しかけた。彼女は、すぐに世界に戻ってきて眼の前の惨状に言葉が出ていなかった。血まみれで気絶している馬鹿。床に飛び散っている大量の血。そして、周りからの視線...。彼女は耐えきれなかった。教室から逃げていってしまった。追いかけたかったが、馬鹿の呼吸がおかしくなっていることに気づき、近づくと窒息だということがわかった。元々、ガムを噛んでいたからだと思う。すぐにハイムリック法を開始したが、遅かった...。彼はその日の夜、23時39分死亡が確認された。あの後、彼女が行方不明だ。家族が探しているらしいが見つかっていないらしく、もしかしたら、責任を取ったのかもしれない、と言った。そんな、出来事があったせいで、この学年は崩れてしまった。崩れてくずれてクズレテ、形も残らないようなものになってしまった。これからどうすればよいのか...。そんな事を考えながら、自分は淋しい思いを誤魔化していた......。
~5~
 あれから8年後。あの事件の後、その事件は被害者の遺族が、こちらにも責任があるとして訴訟は起こさなかったが、彼女はまだ帰ってこないままだ。いつ帰ってくるのか。そんなあるはずがないようなことを考えながら今までを過ごしてきた。今ではあの高校も評判がまた上がってきて、今かなりいい感じらしい。でもそんなことは気にせず、ずっと、帰ってきてほしいと待っていた。しかし、会社の都合で東京まで行くことになり、待つことはできなくなってしまった。一応、次に住む住人に事情は伝えておいたがおそらく無理だろう。そして、今月上京してきた。そこで、アルバイトも始め、兼業しながら生活していた。そんな、アルバイトのレジ係をしていたら、対応していた客の注文物を渡し、「ありがとうございました。」といったところで、メモを渡された。そこには【仕事が終わったらこの住所の家に来てください】というものだった。どういうことかわからなかったが、とりあえず行ってみた。すると、本当にその客が住んでいて上げてくれた。その客は雰囲気がどこか懐かしい感じがする。そこで客...「彼女」は、口を開いた。
「Do you remember?」いきなりの英語にびっくりした。でも、わからなくて「Sorry. I don't know you.」と答えた。彼女は寂しそうな顔になっていたが、本当にわからなかった。そこで、何かを取り出した。キーホルダー。2つあって、合わせるとくっつくものだ。まさか...「Are you Sumire?」と聞いた。まさかそんな事あるわけがない。8年前に失踪したすみれなわけない。でも、まさか...。返答を待つ。
「Yes, I am.」
やはりだった。自分はただただ嬉しい。やっと見つけた。俺の「初恋」の人...。すみれは、久しぶりということを、忘れたかのようによく話してくれた。ただ、ここで、伝えたかった。思いを伝える。それだけなのに、口が開かない。接着剤でも着けているのか。でも、深呼吸をすると、幾分かましになった。8年待った。ようやく伝えられる。
            「好きです。」

~finish~
 「こんな感じなんだよ。」
「なんだかロマンあるね〜。」
「そりゃそうだろ。お父さんはロマンの塊じゃんか。」
「そうかな?」「コラッ」
そんな楽しい会話が続く。つい、あの頃の回想を息子と娘に聞かせてしまう。でも、楽しそうに聞いてくれる。でも、それを重く考えてくれないところがまたいい。全く、軽聴がうまいのは誰に似たんだか。あの日は、2人の今の家庭のスタート地点だった。そのスタート地点から、今までこれた。お母さんは、今は買い物に行っている。だから、この話をしていた。とても、なつかしいようで、懐かしくない嫌な思い出でもある。でも、だからってそれを忘れていいのかな?
 僕達は、今も一歩一歩人生を歩んでいる。そして、その人生を尊重している。でも、その一回しかない人生を尊重せずに亡くなってしまう方もいる。それは、精神的だったり、いきなりだったり、たくさんの方法がある。だからこそ、私達はそんな事を考えさせない、とても大切なものを手に入れ、人生のスタート地点を踏み出すんだ。僕達のような思いはさせない。絶対に。
 歩(あゆむ)と歩(あゆみ)。僕ら二人で考えた息子と娘の名前。同じ漢字でもよみかたは違う。その微妙な違いこそ、人間に何かを気づかせるものなのではないのでしょうか?
 皆さんは人生についての事を考えてみてください。そして、辛くなったら、相談する。よく言われるでしょう?「報連相(報告、連絡、相談)」って。報連相はとても大事なんだよ。だから、こういうことによって、「お互いを知り合うこと」が大事なんだと思う。だから家族で知り合ってみてはどうかな?自分が知らない家族の一面だったり、逆に知らなかった自分の気持がわかったりもするよ。だからこそ、人生っていうのは学びの連続なんだよね。さぁ、もうこの本も終わりの時間だ。そして、この本と一緒に行こう。一緒に行けば怖くない。ねぇ、そうは思わないかな?


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