社会問題小説・評論板
- Re: アタシ-ネット=0【ネット中毒者】 ( No.107 )
- 日時: 2009/05/26 20:01
- 名前: ☆゜。√想空 ◆1i48NEoKCE (ID: oU3Iblta)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.php?mode=view&no=11393
*23*薔薇園の姫
「ったく、なんだよ」
アタシは不機嫌だった。何でって、あのマネージャーのあんぽんたんが、
仕事の日にち間違えやがった。
今日仕事だと思って気合入れちまったじゃねーか、アホ。
アタシは仕方なく、徒歩でそこらをフラフラしていた。
まぁごみだらけの田舎と変わらん道だけどな。
ったく。
捨てられていたアルミカンを蹴っ飛ばして、その場に鎖で繋がれていた犬にあててやった。
ワンワン吠えやがって。うるせぇな。
どこへ行くのも自分の意志では行けない負け犬が。
ここらってホントチンケっていうかなんていうか。
…あれ。
「何ここ…」
そこは、まるで御伽噺に出てくるような、ディズニーランドのシンデレラ城みたいな。
そんな少し古びた宮殿。
なんでこんなとこに。
門はほぼ錆びていて、ツルが巻きついている。
ツルには紅やら桃色やら黄色やらの綺麗な薔薇が咲いている。
アタシは本能的に、その中に入りたくなった。
だってこんな素敵なところ、入らずに素通りできるかよ。
門を開けようと、がちゃがちゃと音を立ててみるが、鎖と錠がかけられていて、とてもじゃないけど開けられない。
インターフォンやらなんやらは何一つなく、中にいるかどうかもわからない。
というか、こんなところに人が住んでいるのだろうか??
でも薔薇は整えられているし。庭も手入れが利いている。
「あら、どちらさまで」
「あ、…」
ソイツは貴族のマンガに出てきそうな執事らしき老爺。
何もかも、いつしか想像したものと激似。
なんだか絵本に入り込んだみたいだ。
「折角来て下さったのだから、お茶ぐらい出しますよ。お入りなさい」
「あ、は、ええ。じゃぁご遠慮なく…」
そうだ、アタシは令嬢じゃないか。
振舞いちゃんとしなきゃ。
その執事に連れられてアタシは庭の奥へ入り込んだ。
庭のそこらじゅうに色とりどりな薔薇。
蒼や黒なんてのもある。作るの難しいらしいのに。
本当に貴族のお城みたい。
庭の中央に来ると、お嬢らしき女性が、ベットに横たわっている。
周りには大輪の薔薇。
その嬢様は焦茶のストレート。
目はぱっちりしていて、肌は綺麗。ニキビ一つない。
「あら…爺や、お客様??」
「お友達ですよ、樹莉亜お嬢様。お忘れになられたのですか??」
「あぁ、そうだったわね…ごめんなさい、ご失礼ですがお名前は??」
ちょっとまて、いつの間に友達になったんだよ。
もしかしてボケてんのか??
「え、エリサだけれど。樹莉亜…忘れたの??何故」
あくまで友人のなりすまし。
その方が溶け込みやすい。
「あら、言わなかったのかしら…私、記憶喪失症なんです。不定期に物などを忘れてしまうんです。すいません」
いかにもお嬢な感じ。
素敵っていうか、ロマンチックというか。なんだか、少女漫画とかみたい。
ドラマチック。
「そうなんですか。アタシも忘れやすいんだ、何樹莉亜だったかしら??」
「鈴野樹莉亜。」
鈴野、ね。
こいつならいいかもしれない。
だって、すぐ忘れてしまうんだろう?
「あのね、ジュリア」
こいつにだけ、言ってやるよ