社会問題小説・評論板

第4話 『拭えぬ不安』 ( No.4 )
日時: 2010/07/19 22:43
名前: 霞夜 ◆MQOpFj.OVc (ID: 0ymtCtKT)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode

「……ん……」

翌朝。
携帯電話の着信音が、月歌を起こした。
重い瞼をこすりながら、
愛用している目覚まし時計に視線を移す。
お洒落な装飾が施された針は、
午前6時ちょうどを指していた。


(誰だろう、こんな時間に……)

怪訝に思いながら、携帯電話を手に取る。
ディスプレイに表示されているのは、
『新着メール1件』という文字だった。

しんとした部屋に、カチカチという
ボタン操作音だけが響く。


メールの送信者は……美鈴だった。
月歌の心臓が、どくんと大きな音を立てる。
昨日の凛の言葉を思い出したためだ。
また、美鈴の知らないところで、
悪い噂話をしてしまった罪悪感もあったのかもしれない。

浮かない気持ちで、月歌はメールを表示した。



******************************************

From:美鈴
sub. no title

本文:おはょッ★
   朝早くからゴメンね(>人<)
   今日、みんなに大事な話があるンだ↑↑
  
   7:30に学校に集まッてくださぃ♪
  
一斉送信してぁるカラ、
   回さなくて大丈夫だゅ(*´ω`*)
   ぢゃあね!!待ってるょぉw


******************************************



……なんてことはない、普通のメールだった。
月歌はほっと息をつく。



(でも、大事な話って……なんだろう?)

小さな疑問がわいてきて、
月歌はふたたび不安になった。
けれども、なぜ不安なのかがわからない。
月歌はぶんぶんと首を横に振ると、
逃避をするかのように身支度を始めた。



………………………………………………………………


「行ってきまーす」

身支度を終え、朝食を食べて、
時間はあっという間に過ぎてしまった。
携帯電話のディスプレイで、時計を確認する。
——7時ちょうど……
のんびり歩いても、十分間に合う時間だった。

にもかかわらず、月歌は走っていた。
一刻も早く、美鈴の話を聞きたかったのである。

そして、心を巣食う妙な不安を消し去りたかったのだ。


——それは、叶わない。
そんなことを知る由もなく、月歌は息を切らして走り続けていた。