社会問題小説・評論板
- 第1話 【日常風景】Ⅱ ( No.2 )
- 日時: 2010/10/30 21:24
- 名前: 血吹 (ID: /8RPd6Ii)
それぞれが談笑していると、副部長である如月琴乃がやってきた。
「あの、麗奈ちゃん。
先生が、私たちに用があるみたいなの。
今すぐに来てほしいって」
「え、わかったわ。すぐに行きましょう」
突然のことに多少驚いたそぶりを見せながらも、
麗奈はすぐに琴乃に返答を返した。
その様子を見て、亜美が不満げな声を上げる。
「えーっ……それじゃあ麗奈、
一緒に絵を描くってのは……」
「無理そうだわ、ごめんなさい」
むぅ、と小さな子供のようにむくれる亜美に、
鈴香が歩み寄って、すかさずフォローを入れる。
そしてすぐに、亜美は笑顔に戻った。
琴乃もそれを見て、なんとなく安心したようだ。
琴乃はどちらかというと控えめな性格で、気が弱い。
それゆえに、自分が麗奈を連れ出すことで、
亜美が気分を害したのではないかと不安を感じていたのだ。
だが、鈴香のおかげで、その心配はなさそうだった。
「気にすることないわよ。亜美は、ふざけてるだけだから」
「……え?う、うん。」
自分の気持ちを見透かされて、若干戸惑いながらも、
心が通じ合っているということに喜びを感じたのか、
琴乃は可愛らしく微笑む。
こころなしか、麗奈も嬉しそうだった。
「みなさん、今日は外で花の色鉛筆画を描くそうです」
「画用紙を配りますね〜♪」
麗奈たちと入れ違いでやってきたのは、1年生の仲良し2人組だ。
今日の活動について知らせたロングヘアーの少女が、朝名真理子。
画用紙を配っているショートヘアーの少女が、河野愛梨だ。
2人の前髪に光るおそろいのヘアピンから、仲の良さが見て取れる。
ちなみに、両名とも1年4組の生徒だ。
「鈴香先輩、また、ご指導おねがいしますね♪」
「うん、でも……私でいいの?」
「何言ってるんですか!先輩“が”いいんですよ☆」
画用紙を配り終えた愛梨は、鈴香のもとで笑っている。
この2人は、学年の差をほとんど感じさせないほどに仲が良く、
親友同士といっても過言ではない。
「あ、鈴香先輩。わたしもお願いできますか?」
「もちろんいいよ、よろしくね」
「真里子には負けないよ〜」
真里子も輪に加わって、鈴香は後輩2人の面倒をみる形となった。
人気者は大変だな、と言って亜美が笑う。
沙由里や美紀、優もそれに同意した。
「さて、そろそろ行こうぜ」
「そうですね」
「何の花を描こうかなぁ……」
5月のさわやかな風が、少女たちの頬をなでていった。
今日も、平和で楽しげな美術部の活動が始まる——。