社会問題小説・評論板

Re: 私は反旗を翻す【若干実話】 ( No.3 )
日時: 2010/12/13 16:46
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第一話「美術部の顧問」

「こんにちはー」

時は7月のある日。私、雪上真白は美術部前で先輩に挨拶をしていた。
先輩方はとても優しくて笑顔で手を振って「こんにちは」と返してくれる。
煩い蝉の鳴き声も、うだるような暑さも先輩が手を振ってくれた嬉しさで吹き飛んでいく気がした。

(って何で恋愛漫画みたいな事になってるんだろ……)

自分で自分にツッコミを入れてから頭を右手でコツッ、と軽く叩いてから美術室へと入る。
中は案の定暑いけれどこれから作品を作れると考えればどうでも良いくらいだった。
今私がやっているのは水彩画。モチーフは“心”で色々な手が一つのハートを持っている絵。
自分でもなかなか良いなーと思っている作品で、先輩方や友達も「凄いね」と言ってくれている。

期待に応えるためにも、完璧に仕上げよう! 

私は自分にそう言い聞かせて作品を描いていた。
ふと気付けば部活が始まって先輩方も真剣に作品に取り組んでいる。
実は私の学校は美術部がそこそこ盛んで、毎年絵画コンクールなどに応募しているくらいのレベルらしい。
何故“らしい”なのかと言うと、友達に聞いた噂なので良くは知らないから。

すると、真剣にやっている部員の間に入り込むかのようにとある声が部室内に響く。

「この学校ホント暑いねー……皆暑くないの?」

正体は小島由香里先生。今年来たばっかりの美術の先生で美術部の熱血顧問。
明るくハキハキしてるけれど、唯一難点を挙げると先輩方と良く衝突している事だろうか。
何でも去年居た先生はとても穏やかでどんな作品でも褒めてくれる先生だったらしい。
そして何故、小島先生に不満があるかと言うと……

「ちょっとちょっと! こんなんじゃ汚いだけじゃん!! もっと綺麗な色にしなさいよ」

小島先生は生徒の作品を平気で、しかも叱るかのように批判するのだ。
先輩方はそれがあって小島先生が大嫌いらしく、しょっちゅう愚痴を零している。
案の定、作品を批判された二年の先輩に三年の先輩が先生が居なくなった時に近づき、慰めている。

……確かに作品をどうこう言われる権利は誰にだって無いと思う。

「はぁ……」

先生が来たせいで一気に研ぎ澄まされ鋭くなる先輩の気配に、私は誰にも聞こえないように溜息を着いた。
そして私はパレットに水色と青。今の絵に沢山使う寒色系の絵の具を出して鋭い気配から逃げようとする風に絵を夢中で描いていた。