社会問題小説・評論板

Re: 私は反旗を翻す【若干実話】 ( No.4 )
日時: 2010/12/25 10:27
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第二話「自己中」

その後も先輩方の雰囲気はは相変わらずで、私を含め一年生達は黙って作品作りをしていた。
先輩方は優しいので八つ当たりなどはしないけれど、この状況の先輩はやはり怖くないと言えば嘘になる。
まるでさっきの雰囲気が嘘みたいに冷たくなっていた。

(何であんなに人の作品批判するかなぁ……)

私は先生をちらりと横目で見つつ、溜息を着いた。ハッキリと言ってしまえば小島先生が少し苦手だった。
一年生の最初の頃は明るい先生かと思って期待していたけれど段々こう言う面が見えてきて失望している。

……いや、別に其処まで期待はしていなかったか。

さっき批判されていた例の二年男子の先輩はがっくりと肩を落としながら小島先生に色を弄られたらしい作品の続きを描いていた。
慰めていた三年の先輩は私の背筋が凍るほど鋭い瞳で小島先生を睨みつけていた。
しかし当の小島先生はそんな様子の先輩方に気付かないで他の人の作品を見ている。
他の先輩方も小島先生を睨んだり舌打ちすらしていた。
すると、そんな冷たい雰囲気の先輩方(と私達)を嗜めるかのように突然先生が手を叩いて話し始める。

「ねー皆、もうちょっと明るくしない? 黙ってやってるだけじゃつまんないじゃん!!」

……いや、その雰囲気作った元凶貴方です。

私はそう思いつつ適当に頷いて苦笑しておいた。こう返事をしておかないと怒られるのだ。
すると遂にキレたらしい三年女子の先輩が色彩筆を机に置いて立ち上がった。
その表情は怒りに満ちていた。

「先生。真面目に作品作りをするのは別に悪くないと思いますけど」

それに先生のせいじゃないですか。と言う言葉は敢えて言わずに先輩は口を閉じた。
皆目が輝いていて頷きも否定もしなかったけれど心の中では賛成している事が良く分かる。

やっぱり……流石、先輩。

私はそんな事を思っていると小島先生は至ってけろりとした口調で言った。

「へ? 別に悪いなんて言ってないじゃん。ただ皆楽しく無さそうだなーって」

……はい? と思わず聞き返したくなる。

確かに悪いとは言ってないけど楽しくなさそうって何で決めるの?

思わずキレてしまいそうになったが、別の三年の先輩が椅子から立ち上がってやや声を大きくして言った。
陶芸をしていて粘土で汚れている手をきつく握り、付け根が白くなっている。

「私、楽しいですよ。先生が勘違いしてるんじゃないんですか?」

その通りですね、と私はまた先輩の意見に賛辞を送っていた。
しかし小島先生は悪びれもせず、しかも少し怒った風に腕を組んで話し始める。

「何でそう言う事言うのかなー……これだから女子は自己中なんだよね〜……ホント」

その言葉に、先輩はもう怒りのあまり何も言えなくなって椅子に乱暴に座り込んだ。
私も皆も何も言えない。強いて言えば自己中と言う言葉を小島先生に教えたくなるほどだった。
意味が分からない。

どうして私達のせいになるんだろう……。






部室の雰囲気がみるみる内に悪くなっていくのが分かった。