社会問題小説・評論板
- Re: 私は反旗を翻す【若干実話】 ( No.5 )
- 日時: 2010/12/25 10:30
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第三話「突然のピンチヒッター」
それからお昼の時間となり、皆さっさと雰囲気の悪い美術室から出ようと急いでいる状態だった。
特に先輩方は出て行く前に小島先生に向かって小さく舌打ちしたり睨んだりと色々やっている。
けれど今の私の気持ちはそんな事をしている先輩方に寄れる。
あんな事を言われた後なのだから誰だって怒るに決まっている。
そう、思ったからだった。
「あ、雪上……ちょっと良い?」
すると、色々な意味で不運にも小島先生に呼び止められた。
先輩の可哀想と言う感じの同情っぽい視線にアイコンタクトして頷く私は先生の元へと行く。
小島先生は左手に何かのパンフレットを持ちながらこちらを見ていた。
「あのね、突然だけど三年生達の実力があまりにも無さ過ぎるから、代わりに雪上に絵画コンクールを応募してもらいます」
「え…………?」
あまりに突然すぎて、言葉が出てこなかった。そして次の瞬間出てきたのは——————怒りだった。
先輩達の実力が無さ過ぎるなんて事は絶対に無い。
先輩達の絵は色彩がとても綺麗だし、見ていて心が揺り動かされるような絵ばかりだ。
小島先生の好みで決めたんじゃないのか、私は瞬時にそんな思いが過ぎり、ますます怒りが沸いてくる。
「今日は28日だからー……あと二週間で何とか完成させなさい。良いね?」
しかも返事の有無は聞かれない。あまりの怒りに何故か怒りを通り越して何も言えなかった。
指の付け根が白くなるほど拳を強く握り、奥歯で歯肉を齧りながら、それでも
「はい……」
としか答えられない。そんな自分のふがいなさを感じながら美術室を逃げるようにして出て行った。
友達が「大丈夫だった?」と心配そうに聞いてくれるのにも、曖昧に返事をする。
……しかも期限は後二週間。良い作品を描くにはあまりに時間が無さ過ぎるものだ。
(どうしよう……間に合うかな……)
怒るのと同時にそう言う心配も芽生えてくる。三年の先輩がとにかく不憫でしょうがない。
だから賞を取って小島先生を驚かせてやろうとも思えてきた。けれど期間が短すぎる。
これからの事を考えるとやや胃が痛む思いがした。
そしてはぁ、と溜息を着いて弁当を食べ始める。