社会問題小説・評論板
- Re: 私は反旗を翻す【若干実話】 ( No.7 )
- 日時: 2010/12/13 17:02
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第五話「ようやく出た涙」
「先生」
「んー……どうしたの?」
相変わらず扇風機に当たっている先生は、顔だけちらりとこちらを見ていた。
その態度に私は思わず先生を殴りたい気分にでもなったがそれは流石に出来ないので唇を噛んでおく。
そして淡々と用件だけを伝えておいた。
「作品を作るのに時間が無いので……少しの時間でも良いんですけど美術室を開けていただけませんか?」
そう言い終えてから何故か先生を見たくなくなったので扇風機を見てみる事にした。
涼しいではなく寒い風を猛烈に流してきている扇風機は規則正しく刃を回している。
先生は腕を組みながら体を少しこちらに向けて右手で頭を抱えてから黙り込んだ。
……時間の事で悩んでいるのか。
私はそんな事を考えていると先生は話を始めた。
「作品は出来てないの?」
「イメージは掴めてるんですけど色彩と技法が少し決まってないです」
そう言い終えると、先生は再度頭を抱えるとふぅ、と溜息を着いた。
それ、少し酷い態度じゃない?
心の中でそう言いたい私の本音がぽつりと表れる。
自分で言うのも何だがやる気のある生徒に対しての扱いはもう少し良くたって良い筈だ。
気分が悪くなる。
イライラする。
怒りたい。
負の感情が自分でも分かるほど渦巻いている。しかしそのせいである当の本人はそれに気付いていない。
自分が正しいと思ってるのか、どうでも良いのか。けれど次の発言でそれは全てどうでも良くなった。
「じゃあ良いでしょ。こっちも色々あって時間無いんだから」
…………はい?
思わず目が見開かれ、手が震えてきた。
意味が分からない。理不尽すぎる。色々あって時間が無い? じゃあ何で顧問なんかやってるんですか?
一気に憎しみに溢れた言葉が脳内に発生して怒りを抑えられなくなる気がする。
怒りのあまり手だけだった震えは全身に達している気がした。
けれど、それでも怒る事は許されない。
あまりの理不尽さに怒りをまたも通り越して涙が出てきそうになる。
「と言うかそんな事言ってる暇あったら早く描きなさいよ。ホントそう言う所が駄目なんだよねー」
心が折れるような気分がした。目頭に涙が溜まっている感覚もした。
けれど、泣けない。否、泣く事も許されない。
暇があったら?
——————無いから今言いに来たんじゃないんですか!?
どうしてそう言う事を平気で言えるんですか?
——————人の事何だと思ってるんですか?
そう言う所が駄目?
——————当の貴方はどうなんですか?
どうして?
——————どうしてそんな事を言われないといけないんですか?
そして、頷いて美術室を出る事しか出来ない自分にまたふがいなさを感じて
「っ……」
——————今度こそ涙が出て来た。