社会問題小説・評論板

Re: 私は反旗を翻す ( No.10 )
日時: 2010/12/13 17:04
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第六話「枯れ始める花」

それから五日後。大会まで今日を抜いて後七日となった。
涙を流してから悔しいけれど何とかやろうと思った末の私の決断でもある。
朝一番に来て、絵画を描き始める。そしてギリギリの時間まで描き続けた。
そんなお陰か段々早く作業が進んできて「花」の絵も完成してきている。
そんな事情を何処で知ったのか、友人は皆「凄いね!」と口々に褒めてくれた。
先生の横暴さは相変わらずだったけれど、先輩方も色々アドバイスをしてくださったりして楽しかった。

……そう、楽し“かった”。
大会を八日後に控えている今日“までは”。

「雪上、またちょっと良いー?」

お昼の時間。
先生が今思うとのうのうとした声で私を呼び止めた。
私は当然無視する訳には行かないので行きたくないと叫ぶ心を無視して先生の元へと向かう。
先生は何故かむすっとしたやや機嫌の悪そうな表情でこちらを見つめていた。

……何かしたっけ、と言うか何で不機嫌なの? 

先生に対してイライラする心を抑えるのに必死になる。
しかし先生は当然私の心情を汲み取る事など無く話を始めた。

「絵画コンクールの期限25日になりました。作品、何とか仕上げて下さい」

はぁ!? いい加減声を荒げたくなるけれど爪を立てて拳を握り、それを静止する。
けれど大会への出展は後三日しかない。
とてもじゃないが三日では仕上げきれる訳がなかった。しかも何とか仕上げて? 

……何とかってどうすれば良いんだよ!!

そう叫びたくなるのを押さえて、やや震えつつも反論する。

「先生。流石に三日は無理です……美術室を開けて下さらないと」
「……開けないと無理なの?」
「………………はい」
「無理か無理じゃないのかを聞いてるの」

はぁ? だから“はい”って言ってるでしょ? 無理か無理じゃないかと答えないと分からないの?

先生を殴りたい。
無茶だと怒鳴りたい。
出来ないと叫んでやりたい。
けど、全部出来ない。

僅かな反論ですらない反論しか出来なかった。

「無理……です」
「はぁ〜……しょうがないなぁ。もう仕方ないから、家でやって来なさい」
「…………分かりました」

こんなやりとりばかり。もう嫌だ。辛い。苦しい。……部活を休みたい。
初めて心にそう思い、思わず涙を零しそうになった。せっかく幸せだったのに。
少しの幸せだけどとても楽しかった。
頑張ろうって思えてきた。

それなのに。

先生のせいでそれが今全部壊れた。





嫌だ。



先生なんて消えてしまえば良いのに…………!!!





初めて心から、そう思った。