社会問題小説・評論板

Re: 私は反旗を翻す【若干実話 七話up】 ( No.14 )
日時: 2010/12/13 17:09
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第八話「枯れていく涙」

三日後。
私は寝る時間も惜しんで作品を描き、部活でもとにかく描き、帰っても描く。そんな日々を繰り返した。
そしてようやく「花」の絵画が完成した。赤、橙色、黄緑、黄色、ピンクを使った様々な花を描いてみた。
疲れたし何より身体中がとにかく痛い。
とりあえず、先生に出す事にした。
朝一番に部活へとやって来ていつも通り偉そうなポーズをしている先生の元へと行く。

「先生、出来ました」

私も疲れていたのでその一言しか言えなかったが、とりあえず絵は渡しておく。
すると先生はそれを片手で受け取り特に褒め言葉は無くそれをまじまじと見ていた。
私は私で何も言う事は無くただ何を言われるか待っている。
すると先生は、何と溜息をついて、腕を組んだ。

「はぁ……まぁ、良っか。これで」
「……ありがとうございます」

いつもの事だと分かっていてもやっぱり色々耐えられない。
いい加減慣れれば良いのだが、こればかりは仕方無い。
そしてそれが気にならないくらい疲れていて私は息を吐くように頷く事しか出来なかった。

「まぁ、良い経験になったでしょ?」
「え…………?」

突然先生が腕を組みながらこっちを見て笑顔になったかと思えばそんな事を言ってきた。

良い経験? 何処が一体どう言う風に?

思わず隈の出来た目を見開いてしまう。
しかし先生はてっきり喜ばれると思っていたのか不思議そうな表情をしていた。

「コンクールに自分の思い通りの作品を出展出来るなんて……良い経験だと思わないの?」




              ・・・・・・・・
—————————思い通りの作品?

              ・・・・・・・・
—————————良い経験?


意味が分からない。どうしてそうなるの?

単に自分の自己満足を人に押し付けてるだけ。
私の思い通りの作品なんて、消えてしまった。
皮肉を言われなかったと思えば、今度は自己満足。

虐めの手段を変えられたような気分。
けれど泣く事も怒る事も出来ない。
許されていても、今の自分には出来なかった。

(……もう、どうやって言えば良いの?)

何も分かってくれない相手になんか、何も言えない。
襲われる無力感よりも果てしない哀しみがやって来る気がした。
作品を描いて、小島を見返してやろうと言う意欲すら消えてしまう。

ねぇ、私の楽しかった美術部の日々を返して。
作品を作る意欲を返して。
私の感情を返して。
私の涙を返して。

……三日前までの私は「どうして?」と思える意欲があった。
心から苦しいと、辛いと思って涙が出せた。
けど、もう涙が出て来ない。泣き過ぎて、枯れてしまったかのように。

「……はい、そうですね」

もしかしたらこの時、私は決めていたのかもしれない。
もう傷つきたくない。もう苦しみたくない。


だから、部活を辞めようって…………。