社会問題小説・評論板

Re: 私は反旗を翻す【若干実話 第二十七話更新】 ( No.143 )
日時: 2011/01/21 16:42
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第二十八話「違和感」


「退部したから何なんだよ。退部したのはお前が弱いせいじゃないのか?」


と、言って私を鋭く睨んだのは美術の時に私と席が隣の黒山闇。
普段からあまり喋らず独りでいる事の多いけれど、何が怒りの琴線に触れたのか、そう言ってきた。
……まぁ、美術室に着いて席に座った瞬間そんな事を言われたので呆然としたけど。
けれど、クラスの反応はそんなものではなく、怒りのような激しい言葉の集中豪雨が飛び交い始めた。

そして気付けば黒山と私の周りを囲むかのようにクラスメート達の縁が完成していた。


「黒山さんに真白さんの何が分かるのでありますかっ!」
「そうだよ! いくら事情を知らないからって弱いせいって何なの!?」


まずそう言ってきたのは春ちゃんと桜瀬。その表情は“最低”と物語っているような鋭い怒りと軽蔑に満ちていた。
しかし黒山はそれに臆す事無く、二人を睨み返して話を続けた。


「はぁ? 雪上の話に何で風月と桜瀬がガタガタ言って来るんだよ。馴れ合いすんな」
「馴れ合い? ……真白の気持ちを十分に分かってるんだから、理解者だと思うけど?」


怒りのあまり顔が少し赤くなっている二人を軽く押すようにして私とそこそこ仲の良いクラスメート、九条アリスが反論した。
いつも笑顔で明るいアリスが、今日この時ばかりは冷静な怒りに震え上がっているような、やや恐ろしい表情を見せている。
そして春ちゃん、桜瀬、燐、葉月、アリス。そして黒山の口論が続いている中、私と椿はふと顔を合わせた。


そしてお互いの思っている事を確認してから、頷きあう。


(やっぱ…………そう、か……)


この時、私の頭の中にはある一つの推測が浮かんでいた。尤も正解なら恐ろしいことにはなるけれど。
そして、その考えを遮るかのように、



「ちょっとちょっとー! 何で黒山を皆して虐めてるの〜!!?」


小島がやって来ていた。
そして黒山と口論になっていた皆をひと睨みしてから黒山を庇うようにして立ち上がる。
……その反応だけでも、何かが分かった。

・・・・・・・・
いつもの小島がこの口論に割って入るのなら、真ん中にずいっと入り込んで何があったのかをくどくど聞いている。
実際、夏休み前に女子と男子がクラスで口論していた時もそうだった。
……けれど、今日は違う。

・・・・・・・・・・・・
何かを隠すようにして、黒山を庇って他の人の意見は一切聞かない。いや、聞く耳を持っていない。
何かを隠している。いや、黒山と何かをしようとしている。


ふとそんな事を考え、私はやや小島を軽蔑するように睨んでいた。