社会問題小説・評論板
- Re: 私は反旗を翻す【若干実話 第二十七話更新】 ( No.144 )
- 日時: 2011/01/21 17:11
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
閑話休題「在りし日の佐久間斎」
雪上真白、澄森椿、峰原燐、桜瀬由梨、咲乃上葉月。
この五人と彼女らの担任である小島由香里のやや鋭い雰囲気を持った口論を聞いたとある一人の生徒は少々不思議な反応を見せていた。
「ふぅー……」
まるで面白い物を見た後の笑いの余興に浸っているような溜息を着いたのは彼女らのクラスメートである、佐久間斎。
彼はどちらに激しく共感するわけでもなく、やや傍観者のような気配を漂わせていた。
……尤も、彼の腹の底は彼以外の誰も知れないが。
しかし当の本人はそんな事など全く気にせず、周りの生徒と同じ風に美術室へと向かう。
そして教室から出たと同時に、丁度先ほど小島と口論していた五人が目に入った。
斎は興味が湧いたのか、その五人の後ろを歩き始める。
「はぁー雪上っち流石黒いねぇ〜♪」
「だから一番黒いの君でしょ、桜瀬」
「ははは、峰原それ正論だね」
桜瀬が真白の肩を叩きながらさもおかしそうにそう言い、すかさず(と言って良い風に見えた)燐が桜瀬にツッコミを入れた。
そして真白はそんな二人を見ながら微笑んでいた。先ほど、小島と対峙していた時とは大違いの明るい笑顔を見せている。
……随分裏表を使い分けてる、面白いなぁ……。
斎は真白を見ながらやや興味深そうに微笑んだ。すると、今度は葉月が真白に話しかけた。
「にしてもアンタ以外に黒いよね〜」
「えっ? いいいいいいいいや黒くないよ〜?」
「あはは、雪上っち棒読みだ———」
斎は傍から見ればやや漫才のようなやりとりを見ながらふと足を止めていた。
現在の場所は三階にある上へと行く階段。そのまま直行すれば三階の美術室へと行ける。
しかし、今の斎が見ていたのは——————三階の階段のてすりから見える、二階だった。
(ん? ……あれは小島先生と…………黒山?)
普段そんな話す内容など(あくまで斎の推測だが)無さそうな、珍しい二人が居たので斎はバレないように二人を見ていた。
黒山はやや深刻そうな表情をしているのに対し、小島はやや愉悦に浸った奇妙な笑みを浮かべている。
……話の内容があまり良いものでは無い事を物語っている様子だった。
「闇。闇も私もこれは良い事なんだよ? 分かるでしょ?」
「嫌です。………………僕は貴女の金なんか欲しくないし、雪上さんを傷つけるような事を言いたくは無いです」
「そんな事は聞いてない。家計を助けたいんでしょ〜? それとも、この事バラして欲しいの?」
「………………」
(金? 雪上? ……ふーん)
斎は二人が話したワードを並べながら何を考えているのか分からない微笑みを見せて二人の会話を聞いていた。
そして闇はやや罪悪感に塗れたような、普通の人が見ていればやや心の痛みそうな表情を見せてから、静かに頷く。
小島は満足そうな笑みを見せてから、言った。
「じゃあ、明日から金を渡すから……虐めの阻止、宜しくね♪」
(………………うわぁ。これ、脅迫か……)
今しがた確認した事実に斎はやや「これは無いだろ」と呆れたような表情を見せた。
そしてぶるぶると震えながら得体の知れない感情に耐えている様子の闇を見ながら、美術室へと足を進めた……。
(少々正義のヒーローになっていただきましょうかねぇ……)