社会問題小説・評論板
- Re: 私は反旗を翻す【若干実話 八話up】 ( No.19 )
- 日時: 2010/12/13 17:12
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第九話「水の泡」
いつの間にか、夏休みも残り僅かとなって来ていた。
例の絵画コンクール以来、部活の雰囲気は最悪のままで先生も先生で相変わらず。
色々な意味で被害者の私も部活へと行く意欲が消えているのが自覚出来る程分かっていた。
何故、辞めたいと思っているのかも十分に知っている。
言ってしまえば本当にキリが無いくらいあった。
そして今日は応募した日から2日経った、八月二十七日。
実は絵画コンクールの作品の賞が届く日でもある。
やっぱり事情はともあれ、先生を驚かせる為良い賞、金賞を取りたいと思っている。
朝、今日は皆早く集合していて結果が伝えられるのを待っていた。
そして、先生がやって来る。
「はい。今日は絵画コンクールの賞を発表します」
先輩の事を配慮していない言葉。しかしいい加減慣れるのと賞の不安があって黙っていた。
そして先生は賞の入っているらしい封筒を開け、描かれている賞を読み上げてゆく。
私以外にも出ている先輩方も居て銅賞、銀賞……そして金賞を取っている先輩も居た。
「雪上ー」
語尾を面倒くさそうに伸ばしながら先生が私の名前を呼ぶ。
遂に、この時が来た。
と私の心臓はドキドキと鳴り始める。
この日まで頑張ってきた。
先輩の為に、金賞を!
金賞、金賞……。
金賞……。
ドクンッ、ドクンッと心臓が鳴る。
そして先生は口を開いた。
「——————金賞」
……やった!!
嬉しさに思わず唖然とする私に先輩や友人が笑いながら私に抱きついていた。
嬉泣きをして下さる先輩まで居る。
「真白ちゃん! ありがとう!」
「真白凄い!」
「さっすが雪上♪」
先輩も、友人も皆嬉しそうだった。
私はあの事情を特に話していなかったけど皆知っていてくれたらしい。
やっぱり、良かった。頑張っていて良かった。
先生のせいで出られなかった先輩達を喜ばせる為に必死で頑張ってて良かった。
良かった、良かった…………!!
「あーはいはい。この大会じゃ金賞くらい取れないとね。さ、練習練習」
場の空気を一気に壊す、先生の声。
金賞くらい……? 怒りのあまり、身体が震えてくる。
友人も先輩もそうらしく、笑顔だった表情を凍りつかせ先生を睨んでいた。
先生はまた呑気に扇風機に当たり始め、他の先輩の作品にケチを付け始めている。
他の人も先生を睨み、舌打ちをしてそれぞれの席へと戻る。私も席へと戻ったが途端に激情が襲ってきた。
当たり前……? 当然……?
私の今までの努力は、当然だったの?
あんなに泣いた事も、無駄だったの?
違う。絶対違う!!
けど、先生は当然と言う。
ねぇ、どうして? どうしていつも楽しいと思える時間を壊すの?
ねぇ、ねぇ、何で……?
今までの努力、返して……!!
「真白!!」
友人がそう言うのを聞きながら、私は倒れた。