社会問題小説・評論板
- Re: 私は反旗を翻す【若干実話 十三話up】 ( No.36 )
- 日時: 2010/12/15 18:03
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第十六話「外れた迷いの枷」
「真白!!」
「真白ちゃん!!」
「「雪上っち!!」」
気付くと、椿達が膝を抱え込んで泣いている私を心配そうに見ていた。
私はふとそんな声に驚きながら顔を見上げ、涙を拭く。
……見られちゃったか……。
そんな事を思いながら私がゆっくり立ち上がると葉月が壁を蹴った。
「ちょっと本当にアイツ最低じゃない!!?」
「そうだよそうだよ! 雪上っちこんなに泣かしてもあんなへらへらしてさ!!」
葉月と桜瀬が私の方を見ながらやや大きな声で言った。
声が教室まで響いていない事を祈りながら私も頷く。もう、頷けない動機は無い。
椿は黙ってこそいたけれど何処か私を悼むような表情で見ていた。
ふと私は迷いの枷が取れたかのように、異様な程に、冷静に皆に話を始めた。
「…………ねぇ、あのさ……」
四人が、真剣な表情で私を見ている。
私には既に、迷いなど無かったのかもしれない。
あっさりと言う事が出来た。
「私、先生に復讐しようと思う」
四人とも驚いた表情になってから、何故か深く頷いてきた。
意味の分からない行動に私がキョトンとしていると、葉月が説明風に話してくれる。
「実はうちらも今日の朝みたいな事で散々自己中とか言われてて……いい加減嫌になっててさ」
桜瀬と燐を見る。二人とも同意と言う風にこくりと頷いていた。
椿は頷いてこそいないけれど目が肯定、と言っている、気がする。
……私だけが、不満を抱いていたわけじゃない。
ふとそんな事に気付いて私は何故か微笑む事が出来た。
そう、私一人じゃ無かった。
同じ事を思っている友人が居た。
同じように不快感を持っている人が居たんだ。
「……ありがとう」
私は気付けば皆にそう言っていた。
心配そうだった皆の表情が何処か綻ぶ。
「皆もアイツに復讐するつもりなの?」
「「「勿論!!」」」
「一応ね。自己中自己中言われるといい加減不快だし」
椿が理論的に、他の皆は大声で肯定してくれた。
……復讐する動機が、ようやく分かった。
「私達がどれだけ傷つけられたか、どれだけ嫌だったか、思い知らせてやろう」
私がそう言うと、皆は真剣な表情で深く、深く頷いた。
ふと目を擦ってみると、涙は出て来ない。外面も内面も泣き止んだような気がする。
そんなこんなで私は復讐の始まり宣言を終えた。
「あ、じゃあうち部活の人にも色々言っておくね」
すると葉月はそう言って親指をぐっと上向きに突きたてた。
きっとクラスの事だから、皆先生に自分らの思いを伝えてやれと言えばイエスと言うだろう。
椿と燐も部活へと行き、私は桜瀬と帰る事になった。
そしてさっさと門から出て、帰路へと着く。
「雪上っち、明日から頑張ろうね」
桜瀬がそう言ってニヤッと笑ってきたので私も笑って頷く。
……そう言えば桜瀬、黒いんだよな……。
私はそんな事を考えながら思わず吹き出してしまった。
不思議そうな桜瀬に曖昧な返事をして、色々作戦を練る。
——————私達がどれだけ傷つけられたか、どれだけ嫌だったか、思い知らせてやろう。
自分の言った言葉のくせに妙に心に響いた。
けれど、これはもう絶対に変えない意思。
そうして、明日から
復讐が
始まる。