社会問題小説・評論板

Re: ピアニストへの復讐〜キャラ募集始めます!〜  ( No.15 )
日時: 2011/02/25 16:20
名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: 87ywO7pe)

【月光】
奏歌がスヤスヤと寝息をたてていた頃、魅月は奏歌の気も知らずピアノを弾いていた。

「今日も楽しかったな〜」
思った事がそのまま声になった。
魅月の指は鍵盤の上で軽やかに踊る。
魅月が奏でている曲はベートーヴェン作曲のピアノソナタ第8番ハ短調作品13「大ソナタ悲愴」。
ベートーヴェンが作曲した10番目の番号付きピアノソナタで、初期を代表する傑作として知られている。
ベートーヴェンの三大ピアノソナタにも含まれる人気曲である。
悲愴—————・・・。
今の魅月には全くと言ってもいいほど関わりの無い言葉だろう。
家にある白いグランドピアノは魅月が小学校1年生の夏、父親に無理を言って買ってもらった。
魅月は今でもそのピアノを大切にしている。
傷も汚れさえも付いていない上等なピアノ。
魅月は悲愴を弾き続ける。
突然ドアをノックされ魅月は悲愴を中断した。
「魅月〜。美音ちゃん来たわよ〜」
美音?
美音ちゃんが?
久しぶりだなぁ、私が高校に入ってからはあまり会わなくなっちゃったしな〜。
うきうきしながら魅月は玄関に向かった。
「わ〜!美音ちゃん〜!!」
魅月は嬉しさのあまり何の躊躇いもなく美音に抱きついた。
美音は顔を真っ赤にしながら、「魅月ちゃん、苦しい」ともがいた。
魅月は慌てて手を離した。
美音は赤くなった顔で
「おじゃまします」
と白い花の付いた可愛らしいパンプスを脱いだ。
「魅月ちゃん、悲愴弾いてたでしょう?聞こえた」
階段を上る途中美音は言った。
「本当?照れるな〜」
魅月は冗談半分で返す。
「やっぱ魅月ちゃん上手だね」
美音は照れる事も無くそう言った。
魅月は赤くなった。
開いたままの窓が6月の心地よい風を運ぶ。
美音はピアノの前に座って深呼吸をした。
「いつ見ても上等なピアノだねぇ」
そう呟いた後、ピアノソナタ14番嬰ハ短調作品27の2「幻想曲風に」———・・・。
「月光」を弾き始めた。
魅月は子供のように目を輝かせて聴いた。
窓から入る月光が、美音の手元を照らす。
美音は黙って弾き続ける。
やっと弾き終えた頃は真っ暗だった。
「うはーっ、楽しぃ〜!」
美音は床に寝っ転がった。


この日常がいつまでも続けばいいな。
私の願いはそれだけです。