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社会問題小説・評論板
- Re: 生きる希望を下さい 【34−35話 更新】 ( No.133 )
- 日時: 2013/04/19 20:38
- 名前: 華世 (ID: gIDLNLr/)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode
♯36 変わらない教室
母と仲直りができた嬉しさからか、階段を上る足はいつもより軽く感じた。
けれど、私は忘れていた。
私の周りが完全に変わった訳ではない事を。
教室に入ると、昨日と同じく女子たちが集まって話をしている。
言うまでもなく、由麻の事だった。
「ホント、あのままじゃヤバイよね……」
「警察に捕まっちゃえばいいのにねー、きゃははは!」
あんなに由麻に怯えてたと思ったら、ついに手のひらを返した。
男子たちも陰でその話を聞いていた。
私は、人はやっぱり裏があるな、と改めて思った。
「もうさぁーいっその事、消えれば良いと思わない?」
一人の女子の言葉に、教室は静寂に包まれた。
近くで聞いていた男子が苦笑しながら返す。
「そこまで言う事はないんじゃねーの?」
その言葉に彼女は反論した。
「どうして? 皆だって嫌じゃなかったの!? 今まで神崎さんや森川さんを無視するようにしていたのも全部宮坂さんのせいなのよ!」
私は耳を疑った。
由麻が私たちを無視するように言った事ではなく、彼女が由麻に全責任を押し付けた事にだ。
彼女だけではない。皆だって由麻の言う事を守っていなければ、もっと良いクラスだったかもしれない。
だが、あまりにも遅すぎた。もうすぐ2年生も終わりに近づいている。
私は耐え切れなくなり、立ち上がって皆に向かって叫んだ。
「こんなの勝手すぎるよ! 最後には由麻だけのせいにして……!」
皆の驚愕した視線が一気に集まる。
由麻をかばう訳ではない。皆の理不尽さがあまりにも不快に感じたからだ。
物音一つ許さない教室の中で、朝の始まりを告げるチャイムがどこか遠くに聞こえた。
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