社会問題小説・評論板

Re: 生きる希望を下さい 【36話 更新】 ( No.134 )
日時: 2013/04/22 18:44
名前: 華世 (ID: gIDLNLr/)

♯37 捕われた絶対女王



 鳴り響いたチャイムの余韻はいつもより長く感じた。
 皆の視線は私に向いたまま。静寂の中で、彼女が口を開いた。
「嫌だなぁー神崎さん。貴方だって、宮坂さんに酷い事されたでしょう?」
 彼女の言葉に、私は何も言い返せずに俯いた。
 確かに、酷い事はされた。でも、さすがに由麻だけの責任にするのは許せない。
「うちらはね、宮坂さんに逆らえなかったの。あの人は“絶対女王“だからね。言う事を聞かないとライターで脅すのよ! ……だから、うちらはあの人が早く捕まればいいと思ってる。それは貴方も同じじゃないの?」
 違うと言えば、嘘になる。一方で、由麻が漆黒の闇に墜ちてしまう前に助けたい気持ちもあった。

「私は……!」

 やっとの思いで私が言葉を発しようとした時だった。
 皆の視線が、私から前の扉へと移った。
「何やっているんだ、早く席に着きなさい」
 担任がいつもより険しい表情で教室に入ってきた。 その表情に気圧され、皆は自分の席へと戻っていく。
 全員が席に着いたのを確認した担任は、固く閉じていた口をゆっくりと開き、こう言った。

「悪い知らせだ。宮坂が……警察に捕まった」

 重い空気が流れ込み、教室は凍りついた。しかし、皆の表情は解放と安堵が混ざったようにも見える。
 “絶対女王”は光を掴む事なく捕われていった。
 心の中では、どこか安心していた自分がいた。