社会問題小説・評論板

Re: 生きる希望を下さい ( No.28 )
日時: 2013/07/26 17:54
名前: 華世 (ID: gIDLNLr/)

♯8 夜に映える白い花



 茜色の空に少し青みがかっているが、帰る気は全く無い。
 帰ると私を束縛する道化師がいるからだ。

 今日何度目だか分からない溜息を吐いて、公園のベンチに腰掛ける。
 先ほど貰った赤いカーネーションを見つめる。
「これ、どうしようかな」
 カーネーションを左右に揺らしながら呟いた。
 私には関係の無いもの、要らないものだ。
「捨てちゃおうっと……」
 立ち上がってゴミ箱に向かう。
 きっと、誰もいないだろう。
 持っているカーネーションを捨てようとした瞬間だった。

「花は生きているのよ」

 透き通った声がした。
 声のした方を見ると、自分と同じくらいの少女が立っていた。
 雪のように白くて、可憐な少女。妖精のようだった。
「貴女は誰……?」
 しかし、少女は私の質問に答えようとはしない。
「花を大切にしてね」
 白く細い手を振り、まだ茜色が残る闇に消えていった。
 私はその少女が見えなくなるまで後姿を見送っていた。