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社会問題小説・評論板
- Re: 死に方を知らない君へ。 ( No.111 )
- 日時: 2014/02/05 22:24
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
冬独特の冷ややかな風が吹き抜けて、私は急き立てられるように階段を下りていく。
長い階段を一段、また一段と下りる度、懐かしい風景が少しずつ眼下に広がってくる。
揺れる視界の中で見た風景は、確かに数年前とぴったり重なるものだった。
穏やかに流れる川の水と、雪に埋もれた黒い岩の数々。それが人工的に作られたものかどうかは分からないが、岩を辿っていけば自然と向こう岸へ辿り着くようになっていた。
そして相変わらず、ここは目立たない場所にある。どんなに新しいマンションやコンビニができて街並みが変わっても、この場所だけは昔と何一つ変わっていなかった。
——本当に、何も変わっていない。
瞼の裏で、幼い頃の思い出がゆっくりと蘇る。幼い頃の私は、よくここで友達と遊んでいたものだ。
初めは上手に岩を渡れなくて、泣きながら友達に手を引いてもらっていた事を思い出す。
……もっとも、その友達とは何の付き合いも無くなってしまったのだが。
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