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社会問題小説・評論板
- Re: 死に方を知らない君へ。 ( No.21 )
- 日時: 2014/03/31 16:17
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
「私……どうしてこんなに役立たずなんだろう」
小さく呟き、いつもと変わらない道を歩いていく。
お母さんは、たった1人で私の為に頑張ってくれているというのに。
少しでもお母さんに喜んでもらいたいと思い、家のお手伝いをしたり、勉強を頑張ったりしても、お母さんの期待に届く事はほとんどない。
このままお母さんに迷惑をかけ続けるなら、いっその事死んでしまおうか。……そう考えた事は、何度もあった。
でも、私は死ぬ事すら怖くてできない。生きる事に未練があって、それを断ち切る事ができないままなのだ。
……いっその事、誰か私を殺してくれないだろうか。心の中で私はそう呟き、辺りを見回す。
もしかしたら運良く、死ぬ事が出来るかもしれないと。だけど現実は、そんなに甘くはない。
景色は、いつもと変わらないままだ。ぶつかってくる車も、不審な人物も、落ちてくる物もない。
それが当たり前だと分かっていても、私はこう思う事しかできなかった。
もしここで死ねたならどれだけ楽だったろうか、と。
そのまま歩き続けること、数分。気付けば家まで後少しの目印が、すぐ横にあった。
その目印とは、昔仲が良かった友達の家だ。壁は白で、屋根は灰色の大きな一軒家。庭は広く、花壇や、木で作られた小さなブランコがある。
私は立ち止まることもなく、その家の前を通り過ぎた。
——私はその家を見ると、昔の友達の事を思い出す。
そして、いつも複雑な気持ちになった。懐かしいような、恨めしいような。
昔を思い出し、溜め息をついたその時。
突然、強い風が吹いて私の頬を撫でた。周りにある木の枝からは、枯れた木の葉が落ちてくる。木の葉が舞うのを目で追いかけていると、その先に2階建ての小さなアパートが見えた。
そこは、私の家。
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