社会問題小説・評論板

Re: 死に方を知らない君へ。  ( No.38 )
日時: 2014/02/06 20:52
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)

 今は放課後。居残りで行っていた図書委員の仕事が終わり、他の委員の人達は皆帰ってしまった。
 だから今この教室には、私しか居ない。廊下にも誰も居ない。
 学校に残る用事など何も無い私は、本当はもう帰らなければならなかった。
 そんな事くらい分かっている。
 それでも私は、家になんて帰りたくなかった。

 現実逃避をする様に、窓辺で外の景色を眺める。
 窓の外に広がるのは、真っ白な雪に包まれた世界。その景色は見慣れているはずなのにとても綺麗で、自分だけが汚いもののように感じられた。
 あながち、間違ってはいないと思う。
……だって私は、役立たずだから。いらない子、だから。
 自分は何の為に存在しているのか。
 自分は誰かに必要とされているのか。
 考えれば考える程訳が分からなくなって、私は景色から目をそらした。
 窓辺から離れて時計を見ると、その針は5時半になる10分前を指していた。さすがにもう、帰らなきゃいけない時間だった。これ以上遅くなると、お母さんに怒られてしまうかもしれない。
 そう思って私が帰る準備をしようとした瞬間、それを心の声が制止する。
——帰りたくない。帰りたくない。帰りたくない。かえリタクナイ。キエタイ。
 そんな心の叫びをかき消すように、私は私にしか聞こえない様な声で呟く。
「帰らなきゃ」