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社会問題小説・評論板
- Re: 死に方を知らない君へ。 ( No.43 )
- 日時: 2014/02/06 21:04
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
リビングでは昨日と変わらず、お母さんがお菓子を食べながらテレビを見ていた。昨日と違うのは、食べているお菓子の種類くらいなものか。
無駄な考え事をしながら、私は少し遅れて挨拶をする。
「ただいま……」
ただいまと言っても、笑顔で"おかえり"なんて言ってくれない事は分かっていた。
現に今も、お母さんからの返事は無い。お母さんはこっちを見ようともしない。
返事をしてくれただけ、昨日の方がマシだったのだろう。
分かりきっていた事のはずなのに、何故か胸の奧がちくりと痛む。
悲しくなる気持ちをこらえて、私はお母さんに向かってこう言った。
「あの、今日はプリントありませんからっ」
私はそう言い終えると、お母さんの邪魔をしないようにして自分の部屋に向かった。
お母さんからの返事は、多分無かったと思う。
私が部屋に入ってから最初にした事は、自傷行為だった。
今にも溢れそうな涙を無理矢理枯らす様に、私は手首を傷つける。
とは言っても——こんな私にリストカットなんて出来るはずがない。
手首に残されているのは爪痕と、散々引っ掻いた事によるミミズ腫れ。
私が手首を傷つけるのに、カッターナイフは必要無かった。
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