社会問題小説・評論板

Re: 死に方を知らない君へ。  ( No.90 )
日時: 2014/02/06 22:26
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)

 お母さんが言った事は、正解じゃないけれど……私にとってはすごく重たいもので。カッターナイフの刃みたいに、私を思い切り痛めつけてくる。
 私には、それを回避する方法も傷跡を癒す力もない。だから……こうして同じ言葉を繰り返し、頭を下げ続けるしかないんだ。
 これ以上、傷を増やさないように。お母さんに、許してもらう為に。
「ごめんなさい………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 涙で霞む視界と、次第に震えていく声。
 "もう、こんなの嫌だ"って思っても——それで何かが変わるわけじゃない。
 諦めるしかないんだ。……だって、悪いのは私だから。

 私を殴る事に飽きたのか、お母さんは突然立ち上がると部屋の方に行ってしまった。
 そしてその数秒後——苛立ちをぶつけるように、ドアが勢いよく音を立てて閉まる。
 その音を聞くだけで、私の身体はびくりと跳ねた。
 心臓の鼓動が、自分でも分かる程に速くなっている。