社会問題小説・評論板
- Re: どうもこんにちは『 』です。 ( No.17 )
- 日時: 2011/08/27 13:53
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: Su8t9C5g)
- プロフ: http://www.nicovideo.jp/watch/sm15166812
第五声「どうもこんにちは『罪』です。」
12年前、ある事件が起きた。
わずか5歳の女の子が同じ幼稚園に通っていた女の子を包丁で刺し殺してしまったという事件だ。
その事件は日本中の人達に衝撃を与えた。
加害者も被害者もAちゃんBちゃんと紹介され、動機やそのあと加害者の子がどうなったのかも報道されなかった。
だけど、その事件は今でも人々の胸に焼き付いている。
+ + + +
大学はどこに行こうかなーなんて呑気に思う。
やりたいことなんてないし、ましてややらなきゃいけないことなんてない。
そんなわたしにとって進学というものはすごく悩む。
ま、いま悩んでもあとで悩んでもどっちでもいいか。
自分の中で結論を出し、最近塗り替えられた下駄箱から上履きを引っ張り出す。
その拍子に、下駄箱に詰まっていた虫の死骸がぼろぼろと足元に落下した。
掃除する人、大変そうだなぁ。
上履きを履けば足の裏に鋭い痛みを感じた。
画鋲でも入っていたんだろう。
もうとっくに一時間目の授業は始まっている。
静かな廊下をすすんで自分の教室へと向かう。
わたしがなんでいつも遅刻するのか担任は知っている。
朝クラスメイトと同じ時間に行けば面倒事が増えるからだ。
たとえば、ペンキをかけられたりすれば床に飛び散ったそれをふくのはもちろんわたしだし、机を校庭に出されればそこまでとりに行かなくちゃいけない。
そんなことされたって別になんとも思わないけれど、ただ後片付けが面倒。
だから、遅く行く。
それだけのこと。
のんびり、わざと遠回りをして二年生の前の廊下をすすんでいるといつもは目の入らないものが廊下の端に立っていた。
きっちりと、今の高校生には珍しく制服を着込んだその子。
顔色は悪く、なんだか病気のようだ。
きっと教師に言われて廊下に立っているのだろう。
でも優等生っぽいけどなー・・・。
「・・・どうしたの?」
気になって声を掛けてしまった。
彼女は驚いた様子もなく、その薄い唇を動かした。
「まっているの、彼を」
倒置法を使ってまで強調された、彼。
彼女はわたしの質問に答えると、わたしの顔を見つめて微笑んだ。
「《あの子》に似ているね」
そういわれて背筋に悪寒が走る。
わたしは気付かないうちに彼女から逃げ出していた。
階段を走って上り、教室に駆け込む。
荒い息を整えながら、席についた。
そして大きく落書きされた文字を小声で呟いた。
「《人殺し》」
+ + + +
頭の中は昨日の事でいっぱいだった。
思い出したくないことなのに、思い出してしまう。
ぐるぐると回るアイツの名前の回転をとめたのは不覚にも教師だった。
「おい、煤木、今のところ読め」
聞いていたわけがないじゃないか。
だったら僕じゃなくて僕の前の席で爆睡している中村をさせよ。
どうせ不良だからってビビッてさせないんだろ。
・・・あれ、中村だっけ?こいつの名前。
「・・・聞いてませんでした」
左隣で心配そうに見る彌魅と右隣で不機嫌そうに見つめる彪。
そんな二人をおいて、僕は教師が言うように、廊下へと向かう。
それがそもそも間違いだとは知らずに。
〜end〜
五話目です。
今回でようやく、この小説をイジメ形に置いた理由の子が出てきました。
これでやっと登場人物のところに書いた人が全員出てきました。
一安心も束の間。
まだ二桁にもいっていない話数なのでこれからもがんばります。