社会問題小説・評論板
- Re: どうもこんにちは『 』です。 ( No.25 )
- 日時: 2011/10/10 15:36
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: yZ7ICI8F)
第七声「どうもこんにちは『廊下』です。」
・・・さてと。
今は体育の授業中だ。
さっき制服から体操着に着替えて体育館にいったはいいものの、途中でずっこけた。
ずっこけた。
わーだせー。
しかもみんなの前だったし。
とりあえず、体育館の床ですりむいてひりひりする足を気に掛けながら、保健室に向かう途中なのだが。
ばったりとあってしまった。
「・・・あ」
彼女は驚いてもとから丸い眼を更に丸くしながら僕を見た。
「彌魅」
名前を呼ぶと彌魅は頭を下げる。
いやぁ、そんなことをしてほしいわけじゃないんだけど。
「・・・なにしてるの?」
彌魅が自分の来た方向を振り返る。
やわらかそうな髪が揺れる。
「えっと・・・」
口ごもる彌魅。
今は男子と同じで、女子も体育のはずだ。
なのに、彌魅は制服のまま、ここにいる。
+ + + +
まいった。
ここで、あうとは。
あきらかに不審がられてるぞ、私。
どうしようか。
体育の時間私はいつもサボっている。
体育の評価くらい下がったって、他ができているから大丈夫だと思う。
なんてったって、体操着に着替えたくない。
それだけの理由だけど、これは重要なんだ。私にとって。
一時間暇な私は図書室にいって少しボーっとするのが日課なのだが。
ちょっとトイレに行こうと思って、階段を上っていれば、これだ。
失敗したなー。
何か理由を探そうと思って後ろを振り返ってもそこには生憎階段しかない。
困った私の脳内は、自然と助けを求めていた。
助けて、魔夫ちゃん。
昔みたいに、守って。
昔みたいに、笑って。
昔みたいに、側にいて。
ここにはいないその名前が私の脳内を侵していく。
魔夫ちゃん。
魔夫ちゃん。
「・・・彌魅?」
頭が元に戻った。
まるで、魔夫ちゃんが頭を撫でてくれたときみたいに。
おかしいよ。
だって、いつも私を助けてくれたのは魔夫ちゃんだけだったのに。
この人は、魔夫ちゃんじゃないのに。
「大丈夫か?」
心配そうに彼は私の腕をみつめている。
私も目線を向けると、興奮したからなのか『傷』開いているようだ。
血が制服のワイシャツに浸透している。
「ぁ・・・大丈夫」
私は急いで傷を抑え、その場を去った。
階段を振り返る事なく、廊下を走る。
どうしよう。
どうしよう。
魔夫ちゃんみたいだった。
魔夫ちゃんじゃない人が。
「・・・魔夫ちゃんっ・・・」
激しい息切れの中、私はその名前を呼ばずにはいられなかった。
+ + + +
参ったなー。
なにが参ったのかといえば、これだ、これ。
体操着。
さっき、五時間目は体育だー、なんてかんがえて体操着を探せばわたしのロッカーになかった。
鞄の中にもなかった。
しょうがないのでくすくすと笑うクラスメートの目線の方向へ行けば、流しにわたしの体操着が無造作に放置されていた。
しかも、絵の具塗れ。
あーこれはおちないな。
なんて思いながらも、落ちてもらわなければ困るので頑張って水でごしごししている。
冬じゃなくて良かった。
春も終わりの兆しを見せているし、そろそろ季節は夏だろう!
いい加減に手も疲れてきた。
もっと腕の力をつけるべきか。
腕相撲部とかにおもいきって入部するか。
そんな部ないけど。
そういえば、入学早々にわたしの入部届けの紙は愉快なクラスメートの手によって紙ふぶきにされたんだった。
あきらめよう。
あぁ、つかれた。
久しぶりにため息を漏らした頃、後ろで誰かが走って通り過ぎるのが聞こえた。
「おーい、廊下は走るなよー」
だんだんと遠くなる背中に珍しく声を張り上げるが、届いていないようだ。
上履きの色からいって、二年か。
先輩のいうこと聴けない子は校舎裏にお呼び出しだぞー。
めんどうだからそんなことはしないけどね。
「・・・ん?」
さっきの後姿、なんかみたことあるような気がするんだよな。
・・・しばらく考え込んで、
あぁ、思い出した。
城吾魔夫とよくいっしょにいた子か。
〜end〜
七話目です。
今回は三人の視点で書きました。
物語的にはすすんでいませんが、ひとつのことを判明させました。
それは、葵苛が魔夫と彌魅を知っているということです。
・・・そんだけです。
追伸。
シリアス・ダークで書いていた、
僕と戸口さんともうひとつ
が、ついに完結いたしました。
最初から最後まで、ぐだぐだでしたが、みなさんのおかげで最終話を迎える頃ができましたので、本当に感謝しております。
まだよんでいない方は、どうぞ足を運んでいただいたら幸いです。
これからは、このスレに集中したいと思っています。
声援を、いただけたら、大変嬉しく思います。
ありがとうございました。
私はまだ、生きております。