社会問題小説・評論板

Re: どうもこんにちは『 』です。 ( No.29 )
日時: 2011/12/15 20:41
名前: 揶揄菟唖 (ID: 1v/lWFT.)
プロフ: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?517203


第十声「どうもこんにちは『声』です。」


「彪」

どうしてお前がここにいる。

そういいたかった。

どうして彌魅がたおれているんだ。

「とーくん」

彪が僕の名前を呼ぶ。

吐き気が、するんだ。

その名前で呼ばれると。

「とーくん」

心のどこかが揺れるんだ。

その名前で呼ばれると。

 + + + + 

昔から彪とは仲良しだった。

昔からっていつからだったか。

昔から彪 とは 仲良しだった。

 とは ?

どうして。
ほかの子とは僕は仲がよくなかったんだっけか。

ちがうんだ。

確かに仲が良かった子がいた。

幼稚園の時に一人。
小学校の時に一人。

そのことはどうして仲がよくなくなっちゃったんだっけ。

 + + + +

「彪、彌魅は」

彌魅が心配だった。
嫌な予感がするんだ。

コレまでの経験からすると。

コレまでっていつまで?
いつから、いつまで?

「とーくん」

彪が一歩踏み出して僕に近づいてくる。

それでも僕は動かなかった。

心のどこかが揺れる。

でもそれはそのままにしてはいけないものなんだ。
ずっと触れないでいたそこに、僕はもうそろそろ触れなくちゃいけない。
これは最初から分かっていたこと。
いつかさわらなくちゃいけないことも知ってた。
それがきっといまだ。

「どうして他の子を心配するの?どうして?あたししかいないんだよ、ここには。あたしをみて、あたしを、」

「彪」

彪の髪は乱れている。

前は直してやったけど、もうしない。
自分でやってくれ。

「彪、おしえて、なにがあったの」

僕の心の奥にあるその記憶。

ずっとしまってきたそれを僕は今、動かそうとしている。

それを怖いとは思わない。

だって今だって、ずっと耳の奥で響いている『彼女』の声が目を閉じればすぐそばに聞こえてくるんだ。

『とーくん、たすけて』


〜end〜

十話目ですね。
最近何処で区切って良いか分からなくて短めになってしまいます。
ごめんなさい。
あと少しで終わりますから、それまでもう少しお付き合いいただけたら光栄に思います。