社会問題小説・評論板
- Re: 悪の華 咲き誇る ( No.2 )
- 日時: 2011/10/15 16:51
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: 6QQsLeeZ)
僕は大きな欠伸をして、学校へと歩いて行く。
横断歩道で立ち止まる。
僕は「ちぇっ」と舌打ちをした。
信号が赤だ。早く学校に行きたいのに。
学校は楽しい。
授業で、新しいことを学べる。
人と話せる。
そして、僕の好む感情を持った人がいっぱいいる。
『悪』の魅力にあらがえずに、身を落とす生徒たちがいる。
信号が青になる。
僕は、誰もいない横断歩道を速足で通り、学校へとまた歩いて行く。
「あ、リーラっ! 相変わらず、お早いご到着で」
元気のいい、男子の声が聞こえる。
僕は「リーラ」という呼び名に顔をしかめる。
僕の名前は、篠原 璃來斗。
名前の読みは「リライト」
母がつけてくれた名前だ。
そして、僕を「リーラ」なんて呼ぶやつは、この学校に一人しかいない。
「貴方も相変わらず。あと、その呼び方やめてって、いつも言ってますよね? 俊栄先輩」
僕がため息交じりでそう言うと、三年生が使う靴箱の陰から、背の高い男子生徒がひょっこりと顔を出す。
飯島 俊栄。三年生の先輩であり、この学校で唯一、僕を「リーラ」と呼ぶ人物。
この人は僕の好む感情は持ち合わせていない。
ただ、無垢なままなのだ。
動物のように感情的で、周りのことは見えない。
仲間が傷つくと許せない。
ただ自分だけに従って生きている人。
先輩の理解者は少ないのだが、理解者なんて一人いればそれでいい。
僕は先輩を理解し、慕う。
そして先輩は、ただ、僕をそばに置く。
それだけでいいじゃないか。
先輩は苦笑しながら、頭をかいた。
「だって、リーラは美人だしー? そっちのが可愛くていいんじゃない?」
「……男に、可愛い……ですか」
なんだか、凄く空しい気分になってしまう。
先輩から言わせてもらうと、僕は「美少年」らしい。
黒い髪に、長いまつげの奥に光る黒い瞳。
桜色の唇に、やわらかく桜色に染まった頬。
白い肌に、華奢な体。
先輩が、その様に僕の事を語ると、僕はいつも思う。
「それはまるっきり女の子じゃないか」と……。
先輩曰く「美少年」の僕。
そんな僕は人一倍醜い心を持っているだろう。
さて、今日も見ていよう。
悪の華が、一番美しく咲く瞬間を——。
